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『夕凪の街 桜の国』田中麗奈 単独インタビュー

2007年7月26日 更新

『夕凪の街 桜の国』田中麗奈 単独インタビュー

原爆、そして被爆をテーマに、過去と現在に生きる2人のヒロインを通じ、戦争について改めて考えさせてくれる映画『夕凪の街 桜の国』。こうの史代原作の同名漫画を、『半落ち』『出口ない海』など、人物描写に定評のある佐々部清監督が実写で完全映画化。ヒロインの石川七波(ナナミ)を演じた田中麗奈に、作品に対する思いを語ってもらった。

■佐々部監督作品に出演して

■佐々部監督作品に出演して

Q 原作のどんなところに引かれましたか?

原爆、被爆という題材を扱っているのに、読んでいくうちに心が温かく穏やかな気持ちになれたところに引かれました。

Q 出演を決めたきっかけになったのは?

原作を読んで心が動かされ、人の心に響く作品だと思ったので、ぜひ自分も参加したいと思いました。それと佐々部監督の『陽はまた昇る』という作品がすごく好きだったので、佐々部監督ならきっといい作品に仕上げてもらえるんだろうと思ったのがきっかけです。

Q 佐々部監督はどんな方でしたか?

映画が大好きで、人が好きで、生きていることを、一つ一つ丁寧に表現してくれる方だと思います。笑ったり泣いたり、時には冗談も言う、とても豊かで熱い人だと思います。

Q 監督から何か特別な指導は受けられましたか?

最初に石川七波と田中麗奈をミックスした人物を撮りたいとおっしゃっていたので、あまり演技せずに自分と役の間を演じるようにしました。

■両親と一緒に広島を訪ねて

■両親と一緒に広島を訪ねて

Q 原爆、被爆をテーマにした作品ですが、役作りのためにリサーチしたことはありますか?

まずはいろんなことを肌で感じたいと思ったので、撮影前に両親を連れて広島に行きました。原爆ドームと記念資料館を回って、次の日は1人でこうのさんの原作漫画を持って相生橋を歩きました。

Q 七波を演じる上で自分なりに工夫したところはありますか?

七波が抱えている深い傷とか、宿命とか、生命の重さとかを伝えないと、と思いました。やんちゃで前向き、弟には口が悪いといったのびのびとした部分は、楽しんでやりたいなと思いました。

Q 皆実と七波を比較してどのように思われますか?

皆実が原爆によって受けた被害はとても大きくて、生きたいと切望しながらも命を失ってしまいます。七波は被爆二世という、生まれながらの宿命を背負っていますが、その状況に負けず、両親にたくさん愛をもらってのびのびと育った女性だと思います。七波は被害者ではなく、希望の人なんです。皆実がいたから七波がいるんです。『夕凪の街 桜の国』は過去と現在の対照的な話で、皆実と七波の2人も対照的だと思います。

■七波という役を演じて得たもの

■七波という役を演じて得たもの

Q 演じてみて難しかったところはありますか?

深く重い部分と七波の明るくて元気な部分が交差して、演じながら揺れ動いている自分がいました。重さと軽さ、この作品だからこその“痛み”がありました。

Q 撮影中の共演者とのエピソードはありますか?

父親役の堺正章さんが広島で野球観戦に連れて行ってくれました。中越典子ちゃんも一緒で楽しかったです。

Q この作品を演じる前と演じた後で、あなたの中に何か変化は起きましたか?

この作品を体験できたのは役者としても人としても、とても良かったし、確かに残っているものがあると思います。それは、監督に指導されたことや、このテーマに向きあったこと……。あとは、七波という役の持っている性格だとか、広島という場所の空気感だとか、すべてが自分に力を与えてくれました。パワーアップしたと思います。

■女優業の面白さと演技への情熱

Q 女優をやっていて良かったと思うのはどんなときですか?

芝居が面白いなあって感じたときとか、今までテレビやスクリーンでしか観られなかった人たちと一緒にお芝居をしているときですね。そこで生まれた空気を肌で感じられたときに、女優という仕事をしていて良かったなあと思います(笑)。

Q あなたを演技にかきたてる情熱の支えになっているものは何ですか?

夢とか、追求心とか、もっと、もっとという好奇心とか、友人、家族、スタッフです。小さいころから女優になりたかったので、その夢が自分を引っ張ってくれていると思っています。そのときにあこがれた気持ちとか、想像した未来とか……つらいときやうまく行かないときでも、そういったものが「こっちは楽しいよ!」って呼んでくれて、自分を支えてくれます(笑)。これからもいろんな国でお仕事をしたいし、たくさんの監督やいい作品に出会えるのが楽しみです。

Q 最後にこの作品を観る人へメッセージを願いします。

映画を観て自分は何を感じることができるだろうか、ということを楽しみに観てほしいと思います。メッセージは一つではなくて、観た後に自分の中にわいてくるものだと思うので、自分でメッセージを探してほしいと思います。
被爆二世という難しい役も自分なりに見つめ、素直に演じた田中麗奈。戦争に対する怒りや悲しみを真っ直ぐに受け止めて演じ、役者としてさらなる成長を遂げた。原爆という重いテーマの作品だが、光にあふれた感動作品に仕上がっている。この映画を観て、自分なりのメッセージを感じてほしい。

取材・文:福住佐知子 写真:秋山泰彦

『夕凪の街 桜の国』は7月28日より公開。

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