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多くの映画ファンが熱愛してやまないこの大作は、フランス映画史上に燦然と輝く、まごうかたなき傑作。奇跡のように力強く、絢爛にして芳醇な人間絵巻だ。
19世紀半ば、犯罪通りと呼ばれるパリの歓楽街。女芸人ガランス(アルレッティ)は、芝居小屋でパントマイムを見せる繊細な青年、バチスト(ジャン・ルイ・バロー)と出会い、恋に落ちる。ガランスは、悪党詩人のラスネール(マルセル・エラン)、饒舌な俳優のルメートル(ピエール・ブラッスール)にも愛されていた。複雑に絡み合う恋愛模様に、人生模様……。「好いた同士にパリは狭いわ」など、J・プレヴェールの心憎いまでに粋なせりふ。名匠M・カルネ監督の腕の冴え。そして名優たちの芸が、それぞれの愛と欲望、生きざまを浮き彫りにする。純粋さゆえに苦悩するバチスト。やるせないまなざし思いをたたえるバローのパントマイムは、まさに至芸。流れるようなセリフ回しに奔放さと情熱を見せるルメートル。悪党に身を持ち崩して自分を皮肉り、それでも詩人の誇りを忘れないラスネール。そしてガランスのやわらかな強さ、毅然としたまなざし。2幕ものの芝居のように2部からなる映画は3時間を超える長尺ながら、長さを感じさせずに陶酔へと引き込んでいく。芝居小屋という空間の熱気、演劇的な効果を生かした構成も見事!
さらに忘れてならない事実は、これが第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで製作されたものだということ。心ならずも伯爵の「囲いもの」にされてしまうガランスに、製作者たちは「自由と博愛のフランス」をシンボライズしていた。ガランスという名は祖国の旧名・ゴーロワとフランスを合わせたネーミングなのだ。弾圧に屈せず、これほどまでの作品を作ってみせたフランス映画人の気概を思えば、ただただ感嘆するしかないのである。(若林ゆり)
[ 2005年2月8日更新 ]
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