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『この世界の片隅に』のん 単独インタビュー

2016年11月14日 更新

『この世界の片隅に』のん 単独インタビュー

『マイマイ新子と千年の魔法』の片渕須直監督が、こうの史代の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞コミックを映画化した『この世界の片隅に』。「声に惚れ込んだ」という監督のラブコールに応えて、第二次世界大戦下の広島県呉市に18歳で嫁ぐ、主人公のすずに挑んだのは、アニメーション映画初主演となる女優のん。けなげで前向きなヒロインを瑞々しく演じたのんが、声の演技の面白さや難しさ、そして自分を表現することについて語った。

■監督を質問攻めにして創り上げた声

■監督を質問攻めにして創り上げた声

Q すずさんに命を吹き込むにあたって、どのような役づくりをされましたか?

とにかく、すずさんという人を理解しようと努力しました。リハーサルが2回あったのですが、2回目のリハーサル後に「すみません、お話しさせてください」と監督を呼び止めて質問攻めにしたり、本番まではメールで監督に質問を箇条書きにして送り付けたり。監督もとことんわたしに付き合ってくださって、戦時下のエピソードを教えてくださるなど、すごく助けていただきました。

Q すずさんに共感する部分はありましたか?

ボーッとしているといわれる設定には共感しました(笑)。あと、絵を描くのが好きなところですね。わたしは感情が沸き立ったときに描くんですが、きっとすずさんも同じで、その瞬間は何も考えずにいられるんです。自分の感じることだけに集中して表現できる大事な時間です。

Q すずさんを理解するうえで、もっとも苦労したシーンはどこでしょう?

本番ギリギリまでいちばん悩んだのが、同級生の水原さんと二人きりになるシーンですね。すずさんの気持ちがよくわからなかったんですけど、現場で監督が「ここですずさんは、ふたりきりにさせた夫の周作さんにも怒っているけど、夫がいる身の自分に迫ってきた水原にも怒っている」と。その明快な説明のおかげで、スッキリした気分で収録に臨めました。

Q すずさんと水原さんの関係は、初恋同士といえるのでしょうか?

原作のこうの史代先生が考えた裏設定をお聞きしたら、水原さんは、すずさんが幼いときから遊んでいた幼なじみらしいです。子どものころはすずさんよりも背が低くて、弟みたいに扱っていたのに、どんどん自分の背を追い越し、すごく戸惑っているすずさんがいると。膝枕をするのはどういうことだろうと疑問でしたが、大切な家族みたいな存在なのかなと理解できました。寒いからって一緒に1枚の布団をかけるような、リラックスできる関係なんです。

■夫からのサプライズに完落ち?

■夫からのサプライズに完落ち?

Q 見初められて、良いも悪いも自分では決められないまま縁談がまとまる、すずさんの結婚についてはどう思いますか?

いまのわたしには考えられないですけど、当時としては普通のことだと聞きました。「口のなかにキャラメルの味が広がった」というすずさんのセリフがありますが、自分のなかに周作さんと出会った記憶が残っていなかったとしても、周作さんの持っていたキャラメルの匂いが、感覚的にすごく懐かしく思え、親しみがわいてくる。だからすずさんはあのときすでに、周作さんの北條家に嫁ぐことを無意識に受け入れていたのかもしれません。

Q すずさんが夫を愛していく過程が、とても自然で共感できました。

一緒に生活していくうちに、自分のことを心から好いてくれているというのを、だんだん肌で感じられて。周作さんの真面目さや、サプライズでデートに誘ってくれるやさしさなどに惹かれていったように思います。

Q すずさんと義姉の径子さんも、本当の姉妹のような関係になっていきますね。

実家に帰ることになってからお掃除をするシーンで、径子さんのお尻の下を掃くシーンが好きです。あとで掃いてもいいのに、ほうきを持ったまま無言で径子さんに催促して、お尻をどけてもらうんですね。「すずさん、怒られるよ」と心配になりますが、径子さんが意外と素直にどけてくれる。本当はすずさんは北條家に残りたい、径子さんもすずさんがいなくなるのをちょっと寂しく感じているんじゃないかなと思える、お気に入りのシーンです。

■研究しながら挑戦した“息芝居”

■研究しながら挑戦した“息芝居”

Q アフレコはお一人で収録されたのでしょうか?

遊郭で働くリンさんとのシーンだけ、岩井七世さんと一緒にやらせていただきましたが、それ以外はずっと一人です。岩井さんとの掛け合いに、すごくワクワクしました。わたしは、ほかの役の方々が声を入れ終わったあとの収録だったので、その声に向かってしゃべればよかったんです。でも周作さん役の細谷佳正さんは、共演者の声もなく画もあまりできあがっていない状態で声を入れたと聞いて、大変だったろうなと思いました。本当に尊敬します。わたしは皆さんの声を聴きながら勉強させていただける、すごくありがたい環境で声を入れることができました。

Q いちばん勉強になったのは、どんな点でしょうか?

驚いたときに「ハッ」と息をのんだり、安心感から「フゥ」と息を吐きだしたり、ものを運ぶときに「オイショ」と言ったり。キャラクターの呼吸を感じさせるために、台本にないアドリブの演技を声優さんがやると聞いて、頑張って挑戦しました。自分なりに研究しながら、水を運ぶシーンなどでけっこう入れましたね。

Q すずさんが周作さんとケンカをするシーンが、微笑ましくて大好きです。お一人で声をあてられたとは思えないほど、呼吸がピッタリでしたね。

細谷さんのイジケた声がすばらしくて、このシーンの収録は、すごく楽しかったです。カチンときたり、感情がのせやすくてスムーズにいけました。自分でも、かなり好きなシーンです。

Q アフレコ現場で特に意識したこと、自分なりにこだわったことは?

すずさんは「ボーッとしている」といわれるだけに、トボけた感じも必要ですけど、同時にすごく気が強い部分もあると思います。すずさんの魅力でもある力強さ、しっかりした意志がちゃんと見えるようにと思いながら演じました。

■完成披露試写での恐怖体験!?

■完成披露試写での恐怖体験!?

Q 戦争や原爆の悲劇を背景としながらも、すずさんの成長や恋愛を見つめた普遍的な青春ドラマとして堪能しました。ご自身で作品をご覧になっていかがでしたか?

セリフを入れる前に思ったんですが、広島の柔らかい風景の中に音楽が流れていて、見入ってしまうほど素晴らしい映像だったので、声を入れるのは難しいんじゃないかと身構えていたんです。完成作を観たとき、自分の声がどうかというのはわからなかったですが、本当にいい作品だと感じました。実は完成した作品を観たとき、こうの先生が隣の席に座っていたので、すごく緊張しました。視界の端のこうの先生が軽く動かれるたびに、「動いた! どう思っているんだろう?」とちょっとした恐怖のような環境の中で観たので(苦笑)、冷静じゃなかったかもしれないです。もう1回観たいと思いました。

Q こうの先生からは何か言葉をかけられましたか?

「すごくよかったです」と言っていただきました。「原作のすずさんより、明るいイメージの声になっていた気がする」とおっしゃっていただきました。

Q 実写にはないアニメーションの魅力はなんだと思いますか?

“ファンタジー”の要素が加わって、観る人それぞれの想像力をかきたてやすいのかな、と思います。それぞれのイメージや世界観が広がり、心をグッとつかまれていく。映像を浴びているような不思議な感覚は、アニメーションならではの気がします。
声優の仕事に不慣れだったとは信じがたいほど、等身大のすずさんを「生きた」のん。カラフルに息づいたすずさんの世界で、おろしたてのスポンジの如くベテラン声優陣から演技のコツを吸収しながら、自然な演技と見事な掛け合いを披露している。監督や原作者はもちろん、映画を観賞した誰もが彼女以外の配役は想像できないはずだ。柔らかくも凛とした声で、笑顔と涙、共感を誘うのんとすずさんの「幸せな出会い」を、心から喜びたい。
(C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

取材・文:柴田メグミ 写真:尾藤能暢

映画『この世界の片隅に』は全国公開中

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