ここから本文です

『この道』AKIRA 単独インタビュー

2019年1月7日 更新

『この道』AKIRA 単独インタビュー

2018年に迎えた「童謡誕生100年」を記念し、その創始者とも言われる詩人・北原白秋と音楽家・山田耕筰の友情や半生を描いた『この道』。それぞれの分野において、近代日本を代表する偉人でもある彼らは、二人で「この道」や「からたちの花」など数々の名曲を生み出し、その後の日本の歌謡曲の原型を作ったとも言える。白秋役の大森南朋と共に耕筰役でダブル主演を務めたAKIRAが、表現者としての偉大な先人を演じたことへの熱い思いを明かした。

■初めて触れたバイオリン、ピアノ、指揮

■初めて触れたバイオリン、ピアノ、指揮

Q 西洋音楽を日本独自の音楽に発展・進化させた実在の作曲家で指揮者の耕筰さんを演じる上で、彼のどんなところに惹かれましたか。

誰もが知る名曲の創作者の映画を作ることにワクワクしました。天才かつ鬼才の耕筰さんを、映画では真面目で真っ直ぐな人物として描いていますが、実際には大森南朋さんが演じた白秋さんと同じくらいに破天荒だったそうで、魅力的な人物に感じました。また、劇中で演じるため、初めて本格的にバイオリン、ピアノ、指揮を練習させていただき、音楽というものに直接触れたことで、わずかながらでも耕筰さんの音楽の奥深さを知ることができたように思います。

Q その奥深さとは?

例えば「この道」や「からたちの花」といった曲は、実は符割りが斬新だし、複雑で難しい曲なんです。それに、日本の音楽を進化させた独自の世界観は、日本歌謡の先駆けとも言えるのではないでしょうか。

Q 佐々部清監督からは、リアルな演技を引き出すため、耕筰さんの実像に近づこうとするのではなく、自身の個性に寄せて欲しいと言われたそうですね。

白秋さんと耕筰さんを、バディというか親友、生涯を通すと夫婦のような関係にみせたいと監督がおっしゃっていました。ですので、破天荒な白秋さんと生真面目な耕筰さんというコントラストをつけて描かれています。ただ、日本の現代音楽の基盤を築き上げたような近代の方々でファンも多いだけに、自分たちがどこまで崩して演じてよいものか、悩んだ部分がありました。お二人の素敵な部分の、ある一面を膨らませたという感覚でしたね。

■60代に変身したAKIRAに監督、固まる

■60代に変身したAKIRAに監督、固まる

Q 30代から60代まで、3世代の耕筰さんを演じていますね。

50代から60代への移行時にスキンヘッドになるのは、耕筰さんの容姿を丸刈りにしていた時期の写真で認識している方も多いため、それに近い姿もあった方がいいだろうと。また、風貌の変化は、白秋さんが亡くなってからの空白が際立ち、切なさが増すのではないかとも思いました。ただ、あのメイクで撮影現場に入った瞬間は、僕のあまりの変わり様に、それを指示したはずの佐々部監督もちょっと固まっていました(笑)。自分が歳を取ったらこういう顔になるのかなというのも、貴重な経験でしたね(笑)。

Q 実在の人物を演じるのに必要なこととは?

もちろん実像も調べますが、まずはお墓参りをしてご挨拶をするところから入ります。耕筰さんの墓前で、「精一杯に感じたまま演じることしかできませんが、微力ながら自分なりの耕筰さんの思いや音楽というものを、広めていけたらと思っています」と心の中でお話しさせていただきました。ご本人へのリスペクトの気持ちを持つことで、役と共に音楽にも向き合うことができた気がします。

Q 同じ「表現者」であった耕筰さんへのリスペクトということでしょうか?

自分もアーティストや俳優というお仕事をやらせていただいていますから、モノ作りの大変さは理解しているつもりですし、メンバーもいますから、白秋さんのように生涯を共にする相棒と出会って名作を作っていく時に、お互いが切磋琢磨する中でものすごく消費したり、削り合う部分があることもわかります。互いに敬意があっても、いつかはそれぞれの目指す道に分かれてしまうこともある。それがわかるだけに、お二人の生涯にはものすごく興味が持てたので、役に入りやすかったのかもしれません。

■美しい夕焼けの秘密

■美しい夕焼けの秘密

Q 白秋さんを演じた大森南朋さんとの共演はいかがでしたか。

大森さんは独特の空気感で、最初からすごく愛嬌のあるキャラクターとして居てくださったので、僕も自然と役に入ることができました。大森さんと一緒に映画を作っているというよりは、白秋さんと友達や同志になれたような感覚が近いでしょうか。ですから、どう演じるかなどを二人で話し合う必要もありませんでした。

Q 佐々部組はいかがでしたか。

佐々部監督は撮りたい画(え)が明確なので、撮影がものすごく速いんです。段取りやテストなどのリハーサルを1~2回した後、基本的に本番は1回だけなので、すごく集中できました。ライヴ感のようなものもあり、僕としてはしっくりきましたね。佐々部組は隅々にまで気を配っていて、映画にかける思いが伝わってきましたし、役者は俳優部としての役割だけに専念できる感じもあったので、大人な現場で心地よかったです。

Q 美術などにも、こだわりが感じられました。

例えばラスト近くの夕焼けのシーンは、スタジオ内にセットを組み、CGではなく手作りでしっかりと手をかけていて、古き良き日本映画といいますか、歴史ある東映京都撮影所の皆さまならではのチームワークを感じました。

■「親しき中にも礼儀あり」のEXILE TRIBE

■「親しき中にも礼儀あり」のEXILE TRIBE

Q AKIRAさんにとって、本作で描かれたような夫婦とまで呼べる存在は、やはり EXILE TRIBE の皆さんなのでしょうか。

クラスメイトみたいな感覚でしょうか。毎日学校で会い、たまには下校中に寄り道して話し込むような感覚で、気軽に飲みに行くことも多いですから。具体的な人物というよりは、グループそのものや表現者としてのスタンスといったものが、僕にとっての夫婦のような関係にあたるのかもしれません。

Q 仕事仲間と友人が一体化したような感覚でしょうか。

交錯しているかもしれないですね。だからこそ、親しき中にも礼儀ありと言いますか、後輩でも先輩でも、皆に丁寧に接しています。馴れ合いではなく、リスペクトし合って、お互いがお互いをたてるので一緒に居ても楽ですし、同じ夢を追いかけているからこそ共有できることも多い。お互いに刺激し合う存在でもあるので、自分自身のお尻を叩いて、言葉ではなく姿勢や態度や結果で示していかないといけない。メンバーのライヴや芝居を観ると刺激をもらえますし、それぞれがすごくいい距離感とリスペクトを持っていると思います。

Q 所属事務所のLDHさんは、HIGH BLOW CINEMA、LDH PICTURES などのレーベルや、脚本家チームの TEAM HI-AX などを立ち上げて、近年は映画の企画・製作・配給にも進出していますね。俳優の道を切り拓いてきたAKIRAさんとしても、スタンスに変化は出てきましたか。

映画に携わりやすい環境ができたという意識より、自分の作りたい映画があれば、自ら企画を立てたり、そのための座組を作るようなことをやっていくべきなのではないか、といった刺激を受けています。なので、自主製作でショートムービーを撮ったりもしています。また、近年は自分の年齢や精神状態とマッチする映画に出演させていただける機会が増えてきたので、等身大の自分を役に重ねられることが楽しいですね。俳優の道を突っ走っている後輩たちの活躍を見て、自分を俯瞰的に見られることもあったので、今度は40代50代で必要とされるスターを目指していくべきだろうし、オリジナルな俳優の道を提示していけたらと。世界進出に挑戦できるようなところまで成長していきたいですし、自分たちらしいスタイルで映画業界に貢献できたら素敵だなと思っています。
「瀬戸内寂聴さんが観てくださって、反戦に対するメッセージが深く入っているとおっしゃってくださったのも嬉しかったですし、本作のように何かを訴えかける映画にも携わっていきたいです」とも語ったAKIRA。単なる偉人伝ではなく、戦争に翻弄された時代の先駆者たちの苦悩をも浮き彫りにしているのが特筆すべき点だ。最後に流れる EXILE ATSUSHI がカヴァーした「この道」の美しい歌声も、あらためて白秋と耕筰が生み出した名曲の魅力を再認識させ、深い余韻を残す。
(C) 2019映画「この道」製作委員会

取材・文:天本伸一郎 写真:尾鷲陽介

映画『この道』は1月11日より全国公開

本文はここまでです このページの先頭へ