ここから本文です

『坂道のアポロン』小松菜奈 単独インタビュー

2018年3月5日 更新

『坂道のアポロン』小松菜奈 単独インタビュー

人気コミック「坂道のアポロン」がついに映画化。三木孝浩監督とは2度目のタッグになる小松菜奈は、転校生・薫(知念侑李)と彼の親友になっていく千太郎(中川大志)を引き合わせる学級委員・律子にふんした。ピアノとドラムでのジャズセッションを通じて友情を深めていく男子2人と、それを温かく見守る女子1人の繊細な三角関係。1か月半に渡る佐世保ロケはまさに青春だったという小松が、充実していた撮影の日々を振り返る。

■役をつくるというより、律子として存在したい

■役をつくるというより、律子として存在したい

Q 律子は田舎の素朴な女の子で、普段のモードな小松さんとはまるで別人で驚きました。

実際に制服を着てあの髪型にしてもらうと、自分じゃなくてもう律っちゃんですから、そこはすごく助けられました。ただ、ちいちゃん(知念)と(中川)大志くんが漫画から飛び出してきたようにそっくりだったので、「ああ、どうしよう」という不安はありました。原作がコミックの場合、どうしても画があるので、それに対して自分を近づけようとしてしまう。漫画はこうだから自分もこういう表情をしなきゃとプレッシャーに思うこともあります。でも、薫と千太郎を見ている律子として、自然な感情でいたいと思っていたので、役をつくるというより律子として存在したい、そこにいたいという気持ちの方が強かったです。

Q そのためにはどんな準備をしたのでしょうか。

三木監督の作品は『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』に続いて2作目なのですが、監督の理想って、すごくかわいらしい“女の子”っていう女性像。自分とも自分のイメージとも真逆なんです。前回とは設定も役柄も違いましたが、今回もすごく悩んだ役ではありました。とにかく、舞台である佐世保に行くことがすごく意味があるなと思ったんです。そこで育ったことやその場で感じる感情を大事にしたい。感じることが大事な役だと思いました。

Q 実際、佐世保に行ってみて役柄を掴めましたか?

1か月半、みんな一緒に過ごしたのですが、佐世保のおいしいものを食べて、いろんな話をして、笑い合って。撮影がない時は、花火したり、UNOしたり、魚釣りに行ったり。本当に佐世保で生まれたんじゃないかっていうくらい私たちの青春でした。もちろん大変なこともありましたが、みんなで団結して、1つのものを作り上げていく一体感がありました。1人1人が作品にかける思いが本当に熱くて、例えばセッションのシーン1つでも、どうやったらかっこよく見せられるか、監督からスタッフからみんなが探りに探って、案を練るんです。もともと良いものをさらに魅力的に見せたい。しかも、それをみんな楽しんでやっている。本当に仲の良いチームで、誰一人として、話したことのない人はいませんでした。その空気感が作品にも出ていると思います。

■嫉妬するほど仲が良かった男の子2人

■嫉妬するほど仲が良かった男の子2人

Q 同級生役の小松さん、知念さん、中川さん。実は3人は微妙に年齢差がありますね。実際にはどんな関係でしたか?

大志くんは年下なんですけど、場を明るくしてくれたり、リードしてくれたり、「本当に年下なの?」と疑いたくなるくらいしっかりしているんです。ちいちゃんは私の想像とは全然違って、スタッフさんにも気軽に話しかけて、自分から場を楽しもうとしている姿が印象的でした。シリアスな時は年長者として、引っ張っていってくれるところもありました。2人とも普通でフラットで、一緒にいてすごく楽でした。楽しむ時は楽しんで、本番の時はちゃんとその世界に入る。切り替えができていたのですごくやりやすくて、現場でも良いムードが流れていました。

Q 最初からすぐ仲良くなれたんですか?

いやいや(苦笑)。ちいちゃんと大志くんは共演経験があったので、最初から仲が良かったんです。あまりに仲良くて、私は2人とは初めてだったので、間に入るのもけっこう難しくて、どうしていいのかわかりませんでした。良い意味で嫉妬して、愛おしく2人を見ていました(笑)。仲良くなれたきっかけは、海のシーン。3人で楽しく遊ぶシチュエーションだったので、そこで変に距離を感じさせたら嫌だなと思い、自分も男の子になった気持ちで2人の間に思い切って飛び込んでいったら、2人とも優しく受け入れてくれたんです。「そんなに気を遣わなくてよかったんだ」と思って、それからは自然と仲良くなっていった感じです。

Q まさに、2人の友情を見守る律子のようなシチュエーションですね。

そうですね。2人のいる時間、空気を壊したくない。だから見守っていたい、ずっと見ていたいと思いました。

■好きな相手には駆け引きなし!素直に伝えたい

■好きな相手には駆け引きなし!素直に伝えたい

Q 千太郎、薫、律子の三角関係は「男女の友情は成立するか」という永遠の命題を考えさせられるバランスでもあります。小松さんは男女の友情はあると思いますか?

私もこれまではないと思っていました。でも、この撮影を通じて、あるかなと思えるようになりました。友だちだから、いろいろ包み隠さず話せるし、変に気を遣わずにいられる。そこから恋愛に発展する人もいると思います。私自身、高校時代からずっと友だちで、いまも変わらない友情でつながっている男の子もいます。ただ、人それぞれですけど、これに関しては男の子、女の子でまた意見の分かれるところでもあると思いますね。

Q 律子のように関係性を壊さないよう恋心を抑えるタイプですか?

私は自分の気持ちを素直に伝えたいので、好きならちゃんと言います。逆に、相手に告白してほしいとか、駆け引きみたいなことは考えないですね。片思いの時って、お互いに「相手が自分のことを好きかも」とドキドキ思い合っている感じがすごく楽しい。この作品の場合は誰かのことが好きなんだけど、その相手は違う方向を向いているというまたちょっと違う切なさがあります。でも、音楽でつながっている友情があり、そこで生まれる感情もまたすてきなんです。こういう学生生活すごく良いなと思いました。私も「こんな子が周りにいたらな。こんな学生生活送ってみたかったな」と思ったりしました。

■“感情を動かせる女の子”の役割

■“感情を動かせる女の子”の役割

Q 知念さん、中川さんはそれぞれ楽器を猛特訓したようですね。そばで見ていた印象は?

2人ともすごく大変だったと思うのですが、だからこそわかり合える空気があって、「私も何かやりたい!」と言い出したくなりました。ジャズってその場でアドリブのようにセッションしていくので、お互いに見つめ合っている眼差しとか、見ていてすごく楽しそうでうらやましかったです。律子はそこを優しく見守る立場でもあったので、ちょっと寂しい気持ちにもなりました。監督にも訴えたのですが、「律子はお客さんと同じ目線で感動して、感情を動かせる女の子でいてほしい」と言われまして(笑)。でも、その気持ちが皆さんに伝わっていたらうれしいです。

Q 三木監督は『ぼく明日』の時に“小松菜奈史上一番かわいい”作品を目指していたそうですが、今回はどうでしたか?

全然違う映り方でも、監督はどんなシーンもとても美しくきれいに撮ってくれます。表情一つ見逃せません。今回も皆さんきれいで、男の子もすっごくキラキラしています。全員を魅力的に撮ってくださるんです。すごく愛がある監督です。
『ぼく明日』のふんわり優しい“女の子”も、今作の素朴なおっとりした“女の子”もすっと自分のものにしてしまう小松菜奈。実際は日本人離れした抜群のスタイルの持ち主で、まるで別人だ。それでいて、クールなルックスのなかに隠し持った感情は甘く柔らかで、やっぱり“女の子”らしい。『渇き。』をはじめ、作品ごとに驚かせてくれる彼女。ミステリアスなベールの向こうには、一体どれだけの“女の子”が潜在しているのだろう。

取材・文:高山亜紀 写真:永遠

映画『坂道のアポロン』は3月10日より全国公開

本文はここまでです このページの先頭へ