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『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』平井堅 単独インタビュー

2017年2月27日 更新

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』平井堅 単独インタビュー

1980年から続くドラえもんの劇場版37作目『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』。南極大陸を舞台に、氷の下に眠る古代都市をめぐってのび太たちが繰り広げる冒険が描かれる本作で、主題歌を担当することになった平井堅。数々のヒット曲で知られ、これまでも映画・ドラマなどの主題歌を歌ってきたが、アニメ主題歌を手掛けるのは初めてという。今回、自ら書き下ろしたミディアムバラード「僕の心をつくってよ」が誕生した経緯、歌に込めた平井のドラえもんへの思いを語った。

■「僕でいいの?」

■「僕でいいの?」

Q ドラえもんの主題歌のオファーを受けて、とても驚かれたそうですね。

アニメーションの主題歌というのは、僕にとっては初めてだったんです。もちろん、ドラえもんには子供の頃から触れてきましたが、ドラえもんは国民的アイコンで朗らかな明るいイメージ。平井堅というと、湿ったイメージがあると思うので親和性が低いというか……(笑)。自分でもなんかあんまり結びつかなくって、僕でいいのかなとは思いました。

Q 場合によっては断るという選択もあったのですか?

いえいえ、それはない。でも、僕に何を求めているのかなと思ったんです。もちろん、何でもトライはしたいけど、自分と合わないものだったらどうしようかなと。でも、求められたものが、はじけた明るいものというよりは静かに訴えるようなバラードと言われて。それなら大丈夫かなと思いました。

Q 主題歌を作るにあたって、何か参考にされたものは?

まだ映像は仕上がっていない段階だったので、脚本を頼りにしました。映画のスペクタクル感や、ドラえもんの映画に共通してある仲間との絆や人を信じることなど、どこにフォーカスを合わせようかなと考えて。で、やっぱりドラえもんとのび太の関係性を言葉にしたいなと。2人の揺るぎない信頼関係や、互いがかけがえのない存在であることが、何より大切な人というラブソングにも通じると思ったんです。

Q 出来上がった主題歌について、「一周回って、自分らしい曲になりました」と言ってらっしゃいますが、それはどういう意味なんでしょう。

去年、僕はバラードを1曲(「魔法って言っていいかな?」)出していたので、オファーがきたときに、またバラードが続くのはどうかなと思ったんです。発注は「静かな曲を」というものでしたが、アニメの主題歌とのタイアップは僕には普段ないことだから、アップテンポな曲も作ってみたんです。切れ端みたいなものも含めて、全部で4、5曲。でも結局、最初に作った「僕の心をつくってよ」がいいなと思って、提出したんです。そういう意味で、一周して最初のものに落ち着いたということなんです。

■きれいごとだけの歌にしたくなかった

■きれいごとだけの歌にしたくなかった

Q 平井さんの場合、どんな状況で曲が生まれてくるんでしょう?

僕は、曲作りはあんまり得意じゃないんですよ。天才じゃないし、何か降りてくるワケでもない(笑)。今回はドラえもんのポケットとか、なにかテーマを考えて、アンテナを立てて作る感じでした。過去の作品はあまり観ませんでした。イメージを補うと逆にがんじがらめになるし、ドラえもんのイメージは子供のころから触れてきて、自分の血中にある。そのイメージで作りました。中でも僕が感情移入するのはドラえもんとのび太。みんな愛すべきキャラクターだけれど、どこに寄り添いたいかといったら、のび太の弱さだったり、ドラえもんの優しさになる。だから、着地は絶対に2人の関係だったけど、入口はどうしようかと考えて、何曲か書いてみた感じです。

Q 歌詞の中に、「君のずるさを晒してよ 僕のダメさを叱ってよ」とありますが、これは、誰が誰に語りかけているんでしょう?

僕自身もこの曲を聴いた人たちから、「のび太からドラえもんへの歌ですか? それともドラえもんからのび太ですか?」って尋ねられるんですけど。正直いうと曖昧なんです。ドラえもんを観なくても、この曲を聴く人もいるかもしれない。だから、これはのび太の目線とか、明確にしたくなくて。

Q 今回の歌詞で、ここは譲れないとこだわったところはありますか?

そんなに大げさなことではないんですが、きれいごとだけに終始した歌にはしたくないと思ったんです。たとえば、サビの部分の「君のずるさ」というところ。“ずるさ”という言葉を使うと、ひょっとしたらスタッフの皆さんに、イヤがられるかなと思いました。でも、それを“強さ”というような無難な言葉にすると、ひっかかりが薄くなって、曲としてはよくない。“ずるさ”には若干ネガティブな意味もあるけれど、そういう言葉をオブラートに包まずに書くべきだと思ったんです。

Q 確かに、映画を見終わってエンドロールに主題歌が流れて、“ずるさ”という言葉を耳にするとドキッとしますね。

映画では、のび太も普段のテレビアニメよりカッコよくなる。テレビでは弱虫なのに、映画ではすごく勇敢だし、何かステージが上がる感じなんですよね。でも、曲まであまりにもカッコよくなると、もともと持っているフラジャイルな(儚い)ドラえもんのテーマから遠ざかる気がするんです。なんかずるくて、すぐなまけちゃうのび太っていう、ダメな部分も描きたいなと思ったんです。

■ドラえもんは血中にいる

■ドラえもんは血中にいる

Q 出来上がった映画と一緒に、主題歌をお聴きになりましたか?

はい。観るまでは、演奏がピアノ一本なので盛り上がりに欠けるかなと思っていたんです。でも、映画の最後にちょっとジーンときて、エンディングに曲が流れたときはピアノ一本の静寂な感じが合っていると感じられて、ほっとしました。

Q 子供のころからお好きなドラえもんの主題歌を手掛けて、映像と共に流れるのを聴いたときの実感は?

やっぱりドラえもんはアイコニックすぎて、どうも自分の中でしっくりこないというか。キラキラしたドラえもんの世界に自分のジメっとした曲が流れたとき、日本全国のちびっこは大丈夫かなという気持ちはいまだにあります(笑)。

Q ところで、ドラえもんが血中にいるとおっしゃっていましたが、それほどドラえもんは身近なものだったんですね。

そうです。気が付くと、というか、意識的にコロコロコミックは買っていたし。映画も観ていました。実をいうと、僕はガンダム世代なんですけど、ガンダムは観ていないんですよ。だから同世代の人と話が合わない(笑)。そのせいか、アニメーションには仕事で関わることもなかった。そんな僕にとって、ドラえもんは本当に貴重で、がっつり触れたアニメーションの一つなんです。ドラえもんだけは他のキッズと同じく、きちんと通ったアニメーションだと胸張って言えます(笑)。

Q そんな平井さんにとってドラえもんの魅力は?

僕は映画の『ドラえもん のび太の恐竜』(1980)と『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(1981)がすごく印象に残っているんです。映画になったときののび太の成長ぶりというのが、当時の僕にもとてつもなく愛おしく感じられた。今回もそうですけど、のび太たちは時を超えてどこかに行って、そこでものすごい経験をする。だけど、最後には何もなかったかのように、また夕飯までに戻っていく。そこがすごくいいんです。どの映画も「結局、数時間のことだったんだ……」というのが、幼いころの夏休みっぽい。とてつもない冒険をしたようなしてないようなという。あのノスタルジックな感じが子供ながら好きだったんだろうなと思います。

Q 最後に平井さんにとってのドラえもんのような、信頼できるパートナーのような存在はいますか?

んー……その時々で、恋人だったり、親友や家族だったり、いろんな人が大切な存在になります。でもしいていうなら、マネージャーさんかな。だって、25年ほぼ毎日一緒にいるんです。その関係はある意味、恋人よりも深いかも(笑)。というと気味悪いですけど。でも、これだけ長い時間いれば、人生においてかけがえのない存在になっているというか。何かしらを形成していると思います。自分の血中に入っているというかね(笑)。
「子供の頃、親しんだアニメはドラえもん!」と話した平井。そんな彼が、ドラえもんとのび太のワクワクするような大冒険や、決して揺らぐことのない2人の絆に夢中になり、映画になると弱虫だったのび太が勇敢になる姿に胸を熱くさせた少年時代に思いを馳せて作り上げた新たな主題歌。映画と共にじっくりとその歌詞の意味をかみしめると、ドラえもんとのび太の変わることのない友情にきっと心が震えるはずだ。
(C) 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ動画・ADK 2017

取材・文:前田かおり 写真:高野広美

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』は3月4日より全国公開

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