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『空飛ぶタイヤ』深田恭子 単独インタビュー

2018年6月11日 更新

『空飛ぶタイヤ』深田恭子 単独インタビュー

トレーラーの脱輪事故で窮地に追い込まれた若き運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)。苦しみもがきながらも彼は愛する家族や社員を守るため、リコール隠しを目論む巨大企業に立ち向かっていく。「半沢直樹」「下町ロケット」などの原作者・池井戸潤の小説を初映画化した『空飛ぶタイヤ』。男たちの熱い闘いが繰り広げられる中、深田恭子演じる徳郎の妻・史絵の存在は、灼熱の砂漠に現れるオアシスのようだ。ここ最近、「母親願望」が不確かになってきたと語っていた深田が、本作を通して改めて思う“理想の家族像”とは?

■苦境の夫を前向きに励ます妻の強さに共感

■苦境の夫を前向きに励ます妻の強さに共感

Q 深田さんご自身は、池井戸作品のような熱血ドラマは以前からご興味ありましたか?

池井戸さん原作のドラマは大好きで、よく観ています。一生懸命、まじめに生きている人たちを素直に応援したくなりますし、観終わると、すごく気持ちがいいんですよね。

Q 深田さんの視点から観て、本作はどのような印象でしたか?

わたしが演じる史絵は、窮地に追い込まれている旦那さん(長瀬)を、明るく懸命に支える妻ですが、立場ごとにいろいろな思いが交錯するところがこの作品の面白さであり、見どころでもあると思います。それにしても、いつ、いかなるときも、仕事に向かわなければならない組織人の真摯な姿、本当に尊敬します。

Q 窮地に立たされた社長の妻であり、1児の母でもある史絵を演じてみて、共感するところはありましたか?

とにかく旦那さんが抱えているものがあまりにも大きいので、それを一緒になって悩むのではなく、妻ならではの視点で、明るく、前向きに励ますやり方を史絵はとります。(事故の風評で)子供が学校でいじめられたときも、夫に先に相談せずに解決してから報告するところが、「これ以上、旦那さんに重荷を背負わせない」という史絵の強さというか、愛情だと思うんですよね。普通は、行動を起こす前に「気持ちを共有したい」と思うものですが、そこをぐっとこらえて1人で解決してしまうところが素晴らしい奥さんだと思いました。

■悪に立ち向かう姿はかっこいい

■悪に立ち向かう姿はかっこいい

Q 長瀬さんとは久々の共演とお聞きしていますが、お互いに年を重ねての再会はいかがでしたか?

8年前に共演したドラマ「華麗なるスパイ」(日本テレビ系)以来だったので、時の流れの速さに驚きました。ああ、もうそんなになるんだと。10代の頃から何度か共演させていただいているので、撮影の合間には、昔の懐かしい思い出話とかさせていただきました。

Q 長瀬さん演じる夫役はいかがでしたか?

悪に立ち向かう姿は、男らしくもあり、その背中はかっこよかったです。女性というか、少なくともわたしには、あんな風に闘うことはできないと思います。この作品を観て改めて、男性だからこそできるアプローチというか、悪への立ち向かい方ってあるのかなって思いました。それは、長瀬さん演じる夫だけでなく、どの役にもグッとくるところがありましたね。

■戦闘モード突入の長瀬に惚れぼれ

■戦闘モード突入の長瀬に惚れぼれ

Q とくにグッときたシーンを挙げるとすると?

佐々木蔵之介さん演じる同業の相沢さんに会う前に、長瀬さんがおにぎりを食べるシーンがあるんですが、腹ごしらえをして、「よし、これから行くぞ!」と戦闘モードに入る感じがすごくカッコよくて。

Q やっぱり、サンドウィッチじゃなくて、ここはおにぎりですね(笑)。

何でもかっこいいとは思うんですけど(笑)。あのワンシーンをはさむことによって、あんなに印象が変わるものなんだと。そういった意味でも感心しました。

Q そのほか、濃いキャラクターがたくさんいますが、気になる人は?

この作品は、長瀬さんやディーン(・フジオカ)さん、高橋(一生)さんなど、組織で闘う男性陣が主軸ですが、そんな中で小池(栄子)さんが演じる女性記者の行動も印象的でした。みんなそれぞれに守るべきものがあるんだなと。会社でボツになった原稿は、絶対にリークしない。「わたしは記者であるけれど、会社員でもある」というようなセリフがあったと思いますが、男女問わず、組織に対して良くも悪くも誠実だなと。個人的には疑念はあるけれど、それを世の中に出すことができない……葛藤する小池さんの姿に胸が痛くなりました。

■夫婦として支え合う「絆」が基盤にあってこそ家族

■夫婦として支え合う「絆」が基盤にあってこそ家族

Q 以前、ドラマのイベントで「母親願望」が本当にあるのか定かではないと語っていましたが、くしくも今回も家族の絆を描いた作品です。現在はどんな心境なのでしょう。

今すぐ、というわけではないですが、「いつか結婚したい」という気持ちは以前と変わりありません。ただ、母親になることとか、理想の家族とか、今の段階では想像がつかないというか。今回の作品もそうですが、まず、旦那さんと奥さんの間に夫婦としての絆がないと何も始まらない。お互いを尊重し、支え合うという基盤があった上での子供であり、子育てであったりすると思うので。

Q 深田さんが甥っ子さんにミルクを飲ませるInstagramの写真を見たとき、「いいお母さんになりそう」と思いましたよ。

(満面の笑みを見せながら)ちょっと大きくなって、今は大変な時期なんです。ああやって、たまに抱っこしたり、お世話したりするのは、確かに楽しいですが、これが日々子育てをするとなると、全く話が違いますからね。子供を見ながら、お仕事をして、お料理も作って……働くお母さんってすごいなぁってつくづく思います。
心の中にあるいろいろな感情を整理するように、ゆっくりと自分のペースで思いを言葉に乗せる深田。その一語一語に嘘がなく、正直だからこそ、何気ない普通の言葉が胸に響く。「家族を想像する前に、まず、夫婦の絆」。改めて深田の口から言われると、「確かにそうだ」と腑に落ちる。そこがきちんと結ばれていなければ、子育ても、子供の教育も、ひいては家族の幸せなんて、なかなか築けるものではない。窮地に追い込まれた長瀬演じる赤松社長を支えたのが、まさにその夫婦の絆。ヒーローの陰には、それを上回るヒロインがいる。出演シーンこそ多くはないが、深田演じる史絵の存在が、この映画のエンジンになっている。

取材・文:坂田正樹 写真:日吉永遠

映画『空飛ぶタイヤ』は6月15日より全国公開

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