
演技、音楽とさまざまなジャンルで活躍している土屋アンナ。1月27日から公開される『どろろ』で妖怪役に初挑戦した。実は出演シーンは10分足らず……ではあったが、作中ではインパクトが絶大。CG処理で、華麗で妖艶なチョウの妖怪となっていた土屋アンナだったが、実はその裏で壮絶(?)なメーキング秘話があったらしい。「マジで、やばかった!」と開口一番に叫んだ撮影の秘密をハイテンションに語ってもらった。
■大人になっても、子どもの心がまたよみがえる『どろろ』

Q
手塚治虫原作のオリジナルは読まれましたか?
- はい。手塚治虫さんの世界に引き込まれましたね。子どもも心を奪われてしまうファンタジックな世界だと思います。もっとすごいと思ったのは、大人になっても子どもの心をまた持てるところですね。手塚治虫さんの作品は、大人も子どもも楽しめるけど、「どろろ」はその中でも一番グっときましたね。
Q
初めての妖怪役はいかがでしたか?
- びっくりしました。話を聞いたときは、アニメちっくなキャラクターものかなと思っていたんですけど、全然違くて、生々しかったんです。人間の心の深いところを映した特別な妖怪、しかも妖怪の色が邦画っぽくないんですよ。だから、「うわっ、すっごいな~」と思いました。もう予想外でした!
Q
特殊効果がとても豪華でしたね。
- あのすごさは目で観て欲しいの! メーキングを観た方がいいよ! メーキングやばいよ(笑)。あれでも5分くらいしか出てないんじゃないかな? メーキングだと印象に残りますよ。映しちゃいけない映像満載! みたいな……。メーキングの主役でしたね、わたし(笑)。CG使ってるから、ぶっちゃけ妖怪のメークしてるのに首から下は黄緑の全身タイツを着てるんですよ(笑)。それって事務所的には普通出しちゃいけないんですけど、うちはオッケーしたみたいで(笑)。メーキングのはじめに、ちゃんとCG加工されたすっごいかっこいいシーンがあるんです。でも次の瞬間、全身タイツ姿に変わるんですよ。マジ最悪!(笑)。
Q
芸人さんばりですね!
- もうね、芸人さんよりも面白いかも! だって超怖い顔してんのに、黄緑の全身タイツ着てるんだよ (笑)。ヤバイって!
■全身タイツ姿で、普通にご飯を食べてました

Q
現場では、大丈夫だったんですか? 恥ずかしくなかったですか?
- そんな姿、自分でも見たことなかったけどテンションは上がりました(笑)。もう、超やる気満々。その姿でご飯を食べたりして、だんだん恥ずかしさはなくなりました。たまに鏡を見て、ヒイッていう感じでした(笑)。
Q
では、また妖怪役に挑戦したいですか!?
- いえ! 二度とやりたくない(笑)。見せたくもない。あのね、ある意味ほれますよ。全身タイツ姿でやったほうが妖怪っぽかったんじゃないのかな(笑)。でも、あのまんまやったら、映画を観た子どもは泣きますよ(笑)。
Q
土屋さんの“モジモジくん”妖怪ですね……
- いや、そういうかわいいレベルじゃないの。ほんとにダサい全身タイツなんですよ(笑)。映像では妖怪の色がすごくきれいになっているんだけど、CG処理されてない初めの映像は、土屋アンナが黄緑の全身タイツで、一生懸命ぶらさがってるんですよ(笑)。舞台あいさつも全身タイツで出たいぐらいですね(笑)。
Q
共演者の方には、何か言われましたか?
- えーっとね、その姿で妻夫木くんの後ろをうろちょろしていたら、「もうやめろやめろ! 怖い怖い!」と言われました(笑)。現場の雰囲気を和ませるために行ったんで! 癒しの妖怪ってことで……。癒しのバタフライです(笑)。
Q
最初からそうなることは、知っていらしたんですか?
- 知らない! 全然知らないよ(笑)。びっくりだよ。妖怪だから、特殊メークはするとしても、きれいな蛾(が)の妖怪でしょ? 美しいんだろなって想像できるじゃない。妖怪に変身する前もきれいな感じだったら、「やろやろ~」と思っていたんですよ。でも実際に渡されたのがタイツだよ。タイツー!? みたいな(笑)。やられましたよ(笑)。でももう何も怖くないね。今後、何でもできます。
■自分の子どもを育てるためなら、ぼろぼろになっても頑張る!

Q
ワイヤーアクションにも挑戦されてましたが、全身タイツでですよね?
- そう! あのね、痛いですよ、股間が!(笑)。カッコイイ殺陣師とかそういう人たちの前でそれをやったから、もう二度とみんなに会いたくない(笑)。
Q
CG処理されたあとの妖怪を見ていかがでしたか?
- 正直、もっとCGくさくなるのかなって思ったんですよ。でもCGがちゃんと映像に溶け込んでいて、全然CGが邪魔していなかったと思います。すごくきれいに変身できてたなって思います。
Q
土屋さんが演じられたのは、人間の姿をした妖怪でしたね。感情移入できるところはありましたか?
- 精神的な面でいうと、この子は別に悪っていう感じじゃなく、かわいそうな妖怪だった気がします。妖怪は妖怪でも子どもを成長させるために、その男を喰うっていうのは、人間にも置き換えられることだと思うんです。自分の子どもを育てるためだったら自分の身がボロボロになっても頑張るっていう。だんなに「愛してる」と言われたときに心が動いたし……。妖怪ってみんなが思っているよりすごく人間に近いものを持っていたりするんじゃないかなっていうのが分かる役だと思います。
Q
たしかに、夫役の杉本哲太さんが「愛してる」と言ったシーンにはグッとしました。
- くるでしょ! 全体的に子どもとか相手を思いやる、そういうことを伝えたい部分があったと思うんです。監督じゃないから分からないけど。でもそういうものを作りたいがために、原作の漫画とは全然違う作品にしたんじゃないかな。やっぱり、映画って今を生きている人たちに、感情や純粋な心を伝えるためにあるんだなって思いました。
■『どろろ』で、親子のコミュニケーションをはかって欲しい!

Q
お子さんは、2歳だそうですがもうちょっと大きくなったら一緒にご覧になりますか?
- メーキングを観て喜んでるんですよ、うちの子(笑)。「ママ、ママ~」って。それを観てママって分かって欲しくないのに!(笑)。真剣に答えると、原作を知らずに『どろろ』という映画を観る若い人たちは、漫画を読みたくなるんじゃないかな。きっと親子で観ても全然違う感じ方をするだろうし。子どもは子どもで「わぁ妖怪だっ!」て興味をもって観て、その世界に引き込まれると思うし、大人が観たら、それとは違う、心にズキっとくるものがあると思います。これを観て、親子でいろいろ話しをして欲しいですね。ちょっと真面目に答えちゃったけど、とりあえずメーキングは面白いですよ!(笑)。
文・取材:シネマトゥデイ 写真:田中紀子