
谷原章介とドランクドラゴン・塚地武雄とのダブル主演で話題になった『ハンサム★スーツ』が、ついにDVDとなって登場。人気放送作家・鈴木おさむが脚本を務めた本作は、着るだけでハンサムになれるスーツを手に入れた主人公の琢郎(塚地)が、女性にモテモテのハンサム杏仁(谷原)に変身し、カリスマモデルとして活躍するという、まさに夢のような物語。本作で“笑えるハンサム”を体当たりで演じた谷原が、とっておきの裏話を語ってくれた。
■ハンサム・スーツという奇想天外な挑戦

Q
外見はハンサムな杏仁なのに、中身はブサイクな琢郎。そんな特殊な役だけに、役作りは大変だったのでは?
- 一人二役ではなくて二人一役なので、塚地さんと一緒に主人公の内面を掘り下げていく作業を念入りにしました。琢郎とはどういうキャクターなのか、どういう生い立ちで何が得意なのか、女性に囲まれたらどんなリアクションを取るのかなど、いろいろと話し合いました。
Q
食堂を営む琢郎の日常と、スーツを着てモデルの杏仁に変身する場面が交互に描かれていましたが、同一人物にしか思えませんでした。
- 外見は変わってしまうんですけど同一人物に見えなければいけないので、琢郎のクセや動きのつながりを意識して演じました。それに琢郎が初めてハンサム・スーツを着たときと、2回目、3回目に着るときのリアクションって違うと思うんですね。スーツに徐々に慣れていくわけですから、そういった部分を意識してやりました。
Q
全裸の一人芝居など、大胆な爆笑シーンの連発でしたが、周囲の反応はいかがでしたか?
- これまでもコメディーはやっているので、周りからは意外だったというより、面白かったって言われる方が多かったです。ただ、ロケとかで外に行ったりすると、「谷原さ~ん!」じゃなくて「ハンサム~!」って声をかけられることが多くなりましたね(笑)。
Q
今回の作品で、自己発見や役者としての変化は感じましたか?
- 特に変化は感じていませんが、コメディー路線のお芝居の完成形っていったらその先がないみたいでつまらないですが、一つのひな形が作れたんじゃないかって思います。達成感はすごくありますね。

Q
谷原さん的に注目してほしい、劇中のベストシーンを挙げるとしたら?
- 琢郎と杏仁は、どちらもオカモチを持って店に帰ってくるんですけど、たまたま二人とも同じ場所にオカモチをガンってぶつけているんです。打ち合わせをしていたとか、事前に聞いていたわけではなく、偶然シンクロしたシーンがいくつかあるんですね。なぜ同じところで塚地さんも回ってオレも回るんだろうとか(笑)。よっぽど相性が良かったんでしょうね。
Q
共演された北川景子さんも、記者会見で塚地さんに「コンビの相方も谷原さんに変えた方がいい」とおっしゃっていましたね(笑)
- ええ、ドランクドラゴンに入りたいです(笑)。僕が入ったら、また違うドランクドラゴンが作れるのではないかと思います。鈴木拓さんがほかの仕事で行けないときとか、ピンチヒッター的な感じで僕が相方になれば、いつかそのコンビの方がメインになるかもしれません(笑)。ただ、鈴木さんもすごく面白いし、彼の味は僕には出せないので、難しいと思いますけどね。
Q
もしもハンサム・スーツがあったら、誰になって何をしたいですか?
- 塚地さんになって「裸の大将」の撮影をしたいです。僕、「裸の大将」がすごく好きなんですよ。芦屋雁之助さんの2代目が塚地さんになったとき、ピッタリだと思って。しかも、世界観を壊さず、塚地さんならではの新たな大将を築き上げたと思うんですね。残念ながら、僕には「裸の大将」の依頼はこないので、大将の外見を手に入れて現場に行き、「ぼ、僕はおにぎりが、だ、大好きなんだなぁ~」ではなく、「僕はおにぎりが大好きなんだ」ってやってみたいです。
Q
かなり新しい「裸の大将」ですね(笑)!
- カッコイイ大将です。でも、次に塚地さん本人が撮影現場に行ったら、すごく怒られると思いますけどね(笑)。
■DVDならではの映画の楽しみ方

Q
何度も再生可能なDVDだと、映画とは違った楽しみ方ができそうですね。
- 映画のスタイリストさんが僕の高校の同級生なんですけど、劇中でその人と抱き合っているシーンがあるんです。DVDは何度でも観ることができるので、ぜひ探していただきたいですね。あとは、大の大人がくだらないことを一生懸命やったので、バカバカしいお笑いのところなんかもリピートしてほしいです。
Q
観終わってからリピートしたくなるシーンがいくつもありますよね。公園でHな妄想にふける杏仁の後ろを琢郎に思いを寄せる本江さん(大島美幸)が自転車で横切るシーンとか。
- ああ、かわいいですよね~。大島さん、すごくかわいかったですね。
Q
大島さんのご主人で、脚本を書かれた鈴木さんは、作品でも私生活でも「人は見た目ではない」というメッセージを伝えている気がしますが。
- おさむさんが大島さんとの実生活をモチーフにして書かれた「ブスの瞳に恋してる」も、人の外見をテーマにしているんですね。おさむさんに、もしかして今回の作品は「ブス恋」に対するアンサームービーで、2つがあって完成するんですか? って聞いたら、「それはちょっとありますね」っておっしゃっていました。今回の脚本は、大島さんのために書いたわけではないと思いますが、クランクインする前に、おさむさんが一晩徹夜で大島さんの演技指導をしたそうです(笑)。
■コンプレックスを抱くすべての人へ

Q
お笑いの中に“人間のコンプレックス”という深いテーマが秘められた本作ですが、谷原さん自身もコンプレックスで悩んだことはありますか?
- コンプレックスがない人間の方が少ないと思うんですよね。周りから見たら何にもコンプレックスなんてないだろうって思うかもしれませんけど、僕にも多々ありましたし、それを一つ一つ克服して今に至っていると思っています。
Q
では、琢郎のように女性に告白して不本意な反応をされた経験は?
- あそこまで強烈に拒絶されたことはありませんけど、女性に振られたことはありますよ。それはないだろうっていう皆さんが僕に持っているイメージは、ある意味幻想なんですよね。もう、振られますよ、普通に(笑)。
Q
琢郎の「自分じゃないと感じられない小さな幸せ」というセリフがあって、すごくいいって思ったんですけど、谷原さんはどういったときに小さな幸せを感じますか?
- 寒い朝にはミルクティーを入れて保温容器で持っていくんですけど、それを飲むと「ああ、幸せだなぁ」って思います。自動販売機で買ったミルクティーでは得られない幸せなんですよね。
Q
それでは、これからDVDを観る方にメッセージをお願いします。
- この作品は、とてもたくさん笑えて、時にホロリと泣けて、観終わった後には胸が温かくなって、次の日から前向きに踏み出したくなるようなエネルギーをくれる作品に仕上がっていると思います。ぜひ買ってご覧ください! レンタルでもいいですけど(笑)、ご覧ください!

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美