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『武士の家計簿』堺雅人、仲間由紀恵 単独インタビュー

2010年11月29日 更新

『武士の家計簿』堺雅人、仲間由紀恵 単独インタビュー

異例のベストセラーとなった磯田道史の歴史新書「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」が、映画『家族ゲーム』『阿修羅のごとく』の森田芳光の手で映画化された。幕末から明治にかけた激動の時代を、そろばんで生き抜いた下級武士の親子3代にわたる物語で、加賀藩の御算用者・猪山直之を演じた堺雅人と、直之と共に借金生活を乗り越えた妻・お駒を演じた仲間由紀恵が、とにかく楽しかったという撮影のウラ話をタップリと語ってくれた。

■違和感なく夫婦としていられた!

■違和感なく夫婦としていられた!

Q 実在した武士の家計簿から浮かび上がった家族のドラマに、大きなロマンと感動を覚えました。

僕は撮影の前に新書を読んだのですが、日々の献立から葬式に至るまでの費用が全部書かれていて、数字の持つ力にすごく感動したんです。もちろん完成した作品を観たらほっこりと心が温まるものになっていて、家計簿のデータとは違う作品が出来上がったのだなという新たな感動と、参加できたことの喜びを感じました。
仲間
そんな堺さんには申し訳ないのですが、わたしは新書を読んでおりません(笑)。
本当に面白いんだよ! 読んでほしいなあ(笑)。
仲間
台本を読むので精いっぱいでした(笑)。でも、本当にステキな作品になったと思います。あのテンポ感や空気は、映画でなければ味わえないような気がするんです。ゆるやかだけれど、そこに生きている人たちの時間や、家族の温かさがしっかりと描かれていて、映画っていいなと改めて思いました。

Q 一緒に年を重ねていく夫婦を演じるために、お互いが意識し合ったことや、相談されたことはありますか?

特に相談はしなかったですね。逆に、細かい打ち合わせがなくても違和感なく夫婦としていられたところが良かったんじゃないですかね。今から思えば、僕は仲間さんにずっと見とれていたような気がします(笑)。白無垢(むく)姿は本当にキレイだったし、節目で見せる嫁としての顔や母親の表情が、かわいいなとか、芯が強そうだなとか……ある意味、ずっとポ~ッとしていたんでしょうね(笑)。
仲間
ありがとうございます(笑)。わたしは、だんな様について行く妻を演じたので、長い月日を過ごした夫婦の空気感を醸し出すために、動くスピードやセリフのテンポを堺さんに合わせていくように意識していました。

■新婚初夜でもそろばんを手放さない!?

■新婚初夜でもそろばんを手放さない!?

Q 主人公の直之が、刀ではなくそろばんを握る武士・御算用者というのが新鮮でした。

御算用者は現代の経理係で、江戸時代の官僚部署を支えた仕事でもあったんです。これは原作の受け売りなんですけど、数学の能力というのは、あまり遺伝しないものらしいんですね。だから、御算用者の家では養子を取ることが多くて、当時は町人などの中からそろばんの能力を持っていた人たちが武家に入っていったそうなんです。
仲間
そうなんですか!
明治になって身分制度が崩壊しましたけど、実は江戸時代から、御算用者のような技術者たちが崩していったという側面もあったみたいなんです。そういった歴史としての面白さもありましたね。

Q 堺さんは、直之がどんな気持ちで算術に取り組んでいたと解釈しましたか?

気持ちはあまり関係ないんですよね。自分が何をしたいかではなく、何ができるかという価値観で動いていたと思うんです。だから、自分というものを考えたこともなかった江戸時代の直之と、明治時代になって考えるようになった息子の成之、二人の摩擦が後半の面白いところだと思います。演技としては、直之の仕事に対するプライドや熱意が、ひとごとではない気がしましたね。

Q 新婚初夜でもそろばんを放さない直之の描写も面白かったです。仲間さんが演じたお駒は、彼のどこに惹(ひ)かれたのだと思いますか?

仲間
もちろん、結婚した日の夜に、そろばんをカチャカチャされたら驚きますよね! 「わたしを見ないでそろばん?」みたいな(笑)。でも、直之さんらしいじゃないですか。真っすぐな彼をステキだと思うお駒の気持ちには共感しましたし、映画を観ていただければ、お駒が直之を好きになっていく様子がよくわかると思います。

■父がイカを焼いたせいで、京都撮影所がイカ臭かった!?

■父がイカを焼いたせいで、京都撮影所がイカ臭かった!?

Q 松坂慶子さん、中村雅俊さんが演じた直之の両親や、草苗光子さんが演じたおばばさまもとても魅力的でしたね。

そう、家族が本当に良かったんですよ! 5人で食事をするシーンを撮り終えた後に、みんなが一斉に話し出したんですけど、実は全然かみ合っていなかったんです。でも、なんとなく会話になっていて、「なんか楽しいー! この家族イケル!」って思いましたね(笑)。
仲間
本当に楽しかったです。京都撮影所で撮影したのが冬だったので、大きな缶に炭を入れて暖をとっていました。そうしたら、中村さんがどこからともなく網を持ち出して、いろいろなものを焼いてくださるんですよ(笑)。
餅だのイカだの、いろいろ焼いていたよね(笑)。父が張り切ってイカを焼いたから、撮影所の外がイカ臭い(笑)。
仲間
しかも、たくさん焼いてみんなに「食べろ!」って言って回るんです。もう、「お父さんいいよ!」という感じで(笑)。あと、お父さんが亡くなるシーンがあるんですけど、中村さんは死人メイクが気に入ってしまって、わたしたちが悲しんでいる撮影の合間に、いろいろな方たちと記念写真を撮って楽しんでいらっしゃいました(笑)。

Q そんな中村さんのように、お二人もリアルな老けメイクを楽しんだのでは?

僕も自分の老け顔が面白くて、写真を撮っちゃいました(笑)。仲間さんも写真を撮っていたけど、撮る瞬間にどんよりした目をしたり、芝居が入っていたよね(笑)。
仲間
自分の顔なのにいつもと違うので、何かしたくなってしまうんですよね(笑)。

■本作の影響で、モノを減らす大作戦を決行!

■本作の影響で、モノを減らす大作戦を決行!

Q 借金返済のために倹約生活を送った直之とお駒から、影響を受けたことはありますか?

仲間
わたしは、モノを減らすことを実践しました。家に引っ越しのダンボールが残っていたので、要らないモノは全部処分しよう! と思って(笑)。バッグも靴もほとんど整理したので、すごくシンプルでステキな生活が送れるようになりました。
そういえば、モノを減らす大作戦をするって言っていたよね!
仲間
シンプル生活っていいですよー(笑)。堺さんは、本がたくさんありそうですけど、増えてしまったらどうするんですか?
僕は、図書館に寄贈するんです。捨てるのも使用するのも、図書館の判断に任せますね。でも、本当に本が多くて、いつも考えているんですよ。本棚も買わなきゃ…・・・って、何の話をしているんでしょうね(笑)。仲間さんのようないい話はないです(笑)。

Q では、激動の時代を家族で乗り越えた猪山家の物語から、お二人が改めて感じたこととは?

仲間
家族や大切な人がいることこそが、一番の幸せなのだと感じました。苦しいことがあったとしても、皆と一緒なら分かち合えるし、乗り越えられると思います。そんな掛け替えのない幸せを、皆さんにも感じていただけたらいいですね。
いろんな世代の方が、それぞれの人生経験に照らし合わせて楽しむことができる物語だと思います。若い方だったら、息子の成之の生き方に感情移入できるかもしれませんし、僕らのような30代後半の人なら、仕事や家族への責任というものを感じつつ観るのもいい。もっと年配の方が観ると、現代がなくしつつあるものを思い出すかもしれません。いろんな世代の方のご意見をお聞きしたいですね。
「撮影が本当に楽しかった!」と何度も繰り返し、終わったときは胸にポッカリ穴が空いたような気持ちになったと語る堺と仲間。二人をはじめとするキャストの人柄と、「人間味をしみ出したかった」という森田監督の思いが、現場や作品の温かい雰囲気を作り上げたのだろう。そろばんというお家芸を守り抜き、ひたすら堅実に生きた武士一家の姿を、ユーモアと涙のエッセンスを加えて描いた異色の時代劇は、幅広い世代の人々を魅了するに違いない。

取材・文:斉藤由紀子

『武士の家計簿』は石川先行公開中、12月4日より全国公開

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