
原作マンガからNHKでのアニメーション化を経て、初の実写映画化となった国民的人気の「忍たま乱太郎」。エリート忍者を目指す主人公・乱太郎と忍術学園の生徒たちが繰り広げる大騒動を、映画『十三人の刺客』の三池崇史監督が原作のスピリットをくみながら大胆に演出。同作で乱太郎を演じた加藤清史郎と、乱太郎のかあちゃん役の檀れいが、「忍たま乱太郎」ワールドに触れた感想や作品に流れるメッセージに思いをはせた。
■誰が誰だかわからないほどのメイクに驚がく!

Q
長い間愛されている人気原作の初映画化ということで、緊張感も違いましたか?
- 加藤
- 最初にお話をいただいたときはとてもうれしかったのですが、僕は乱太郎になれるのかなという心配がちょっとだけありました。ほんのちょっとだけですけど(笑)。それからやろうと決心してからは、アクションなどをいろいろと練習しました。
- 檀
- 夕方テレビをつけるとNHKで放送されているアニメを時々観てはいましたが、実写で映画化されると伺って、どういうふうになるのかとまず思いました。個性的なキャラクターが多いですしファンも多いので、三池監督はどのようなビジュアルイメージを持たれているのかということと、子どもたちはアニメ版のイメージが強いと思ったので、どうやって楽しく演じていけばいいのかなど、ドキドキ感がありましたね。
Q
完成した映画は原作から飛び出てきたようなキャラクターの大集合で、楽しいですよね!
- 加藤
- はい! すごく面白い映画になっていると思います。皆さん、すごいメイクなんです。松方(弘樹)さんも、平(幹二朗)さんも、鹿賀(丈史)さんも本当にすごくて!
- 檀
- 最初、(稗田八方斎役が)松方さんだとわからなかったんです。名だたる俳優さんたちが演じていらして、本当にすごいなと思いました。わたしが出ているシーン以外はどうなっているのかわからなかったのですが、完成した映画を観たときに、皆さんあそこまでメイクをして演じているんだって驚きました(笑)。「この人誰? もしかしてあの人?」と思いながら映画を観ているのが楽しくて。そういう楽しみ方もありますよね。
- 加藤
- (松方演じる)八方斎がガーンと後ろ向きに頭から地面に倒れるシーンや、鹿賀さんのミュージカル風のシーンなど、いろいろなところで笑えました。また僕は、あきらめちゃダメだということを教えてくれる映画だと思いました。
- 檀
- そうだよね。もうダメだと思ったときに、とうちゃんやかあちゃんの言葉がすっと入ってきて、小さいながらも一生懸命に前に向かって進もうとしている姿がよく映っていましたし、楽しくて個性豊かなキャラクターたちがちりばめられているので(笑)、観るのが忙しいぐらい豪華な映画になっていると思います。
■「忍びとはガッツじゃ!!」を地で行く酷暑での奮闘!

Q
お二人は初めての共演で親子を演じられましたが、撮影現場での思い出はありますか?
- 檀
- 昨年は酷暑といわれたほど厳しい夏で、本当に暑かったんです。わたしがクランクインした初日も暑くて、暑くて(笑)。山の中のオープンセットで、頭にはかつらとずきんをかぶって、顔と手だけが出ている状態で毎日撮影していたので、熱中症にならないでねと思いながら見ていましたが、清史郎くんは一生懸命に乱太郎を演じることに集中していました。暑くて嫌だというそぶりも全然見せないで、監督に言われたことを一生懸命こなしている、その姿がとても印象的でしたね。ああ、いい子に育てたなあと、かあちゃんとして思ったほど(笑)、すごく頑張っていたと思います。
- 加藤
- 僕は檀さんとお会いして、とてもきれいな方だなあと思いました。
- 檀
- いい子だね(笑)。
- 加藤
- 演技もお上手で、檀さんがいたから僕は乱太郎になれました!
- 檀
- そんなことないですよ。
- 加藤
- 檀さんがかあちゃん役だったからこそ、演じきれたのかなと思います。
- 檀
- いい子に大きく成長しました(笑)。
Q
乱太郎に成りきっていたから、夏の暑さも乗り越えられたところもあるのですか?
- 加藤
- 僕はもともと負けず嫌いなのですが、あの暑さには負けそうになってしまいました(笑)。でも、ほかのキャストさんやスタッフさん、監督さんたちにいろいろ助けていただいたので、乗り越えられたと思います。
- 檀
- その一生懸命な姿が、今回の映画にすべて表れているように思いました。本当に「忍びとはガッツじゃ!!」ということを、そのまま映画の中で身をもって表現しているので、よく頑張りましたねと、賞をあげたいぐらいです。
■三池監督は作りたいものがはっきり見えている!

Q
乱太郎や乱太郎のかあちゃんを演じる上で三池監督からどんな演出がありましたか?
- 檀
- わたしの場合、かあちゃんと一言で言っても元くの一なので、厳しくするところでは突き放す、でもやっぱり母なので家を出て忍術を習いに行く息子への不安もあり、その兼ね合いがくっきり出るように演じていました。くの一の部分もよく出したほうがいい感じになると監督からは言われましたね。
- 加藤
- 僕は、元気にやってと言われることが一番多かったと思います。あとは三池監督が口で指示するだけじゃなくて、自分の顔で乱太郎の表情を毎回作ってくれたので、とてもわかりやすかったです。セリフの間なども細かく教えてくれて、とても助かりました。
- 檀
- 今回は子どもたちが主役の映画ですし、大人が相手のときのように言葉でだいたいのニュアンスを伝えるよりも、具体的に見せたほうが子どもたちにはイメージがわきやすいですよね。三池監督はご自身が作りたいものがはっきりと見えていらっしゃる監督なので、それを清史郎くんや周りの子どもたちにしっかりと伝えて示すことができるのだと思います。
■最後まであきらめない心--それが忍たま乱太郎の神髄!

Q
お二人が実写版から受け取ったメッセージは何でしょうか?
- 加藤
- 乱太郎が忍術学園に入ったすぐ後に、学園長先生が「忍びとはガッツじゃ!!」と言うのですが、もしかしたら乱太郎にはあきらめるな、やればできる! というような言葉に聞こえた気がするんです。檀さんが言われたように、乱太郎がくじけそうになったときに、とうちゃんやかあちゃんの言葉が入ってきて、そこであきらめちゃいけないことを学んで、最後まで頑張った。そこが大切なことかなと思いました。
- 檀
- 何か一つ目標を持ったら、それに向かってあきらめずに一生懸命に進むという乱太郎の姿を見ていて、最後まで頑張り抜くことが大切だというメッセージを感じました。忍者の手裏剣や忍術などをちりばめて、個性豊かなキャラクターの面白い映像に驚かされながらも、ラストはあきらめない心がドン! と迫ってくるので、皆さんにも注目してほしいですね。
- 加藤
- 本当にこの映画は、小さい子から大人までが楽しめる映画になったと思うので、ぜひ家族で観に行ってほしいです!

取材・文:鴇田崇 写真:吉岡希鼓斗