『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』綾瀬はるか&松坂桃李 単独インタビュー
2014年5月21日 更新

超人気ミステリー「万能鑑定士Q」シリーズがついに映画化された。「万能」でありながらも高校時代は劣等生だったという天才鑑定家、凜田莉子を演じるのは国民的女優、綾瀬はるか。彼女をサポートする朴訥(ぼくとつ)な雑誌記者、小笠原悠斗にはいまや破竹の勢いの松坂桃李が当たった。予測不可能な天才肌、莉子とリストラ寸前の崖っぷち青年、小笠原。時にボケとツッコミのように支え合う二人を、初共演とは思えぬぴったりの息で演じた綾瀬と松坂だが、実際の相性はいかに?
■本能の赴くままの綾瀬と意外に不器用な松坂

Q
綾瀬さん、松坂さんは今回が初共演ですよね。共演された感想をお聞かせください。
- 松坂桃李(以下、松坂)
- 綾瀬さんは非常にしなやかな方でしたね。その場の空気をしっかり読んでいるのに、それを感じさせない。そこがまたステキなんです。本人は柔らかくて明るい印象ですが、本当に細部まで人をよく見ているし、頭の回転の速い方だと思いました。
- 綾瀬はるか(以下、綾瀬)
- 松坂さんはマイペース! あまり他の人に左右されず、自分のペースでいる感じがしました。
- 松坂
- 綾瀬さんも十分、マイペースじゃないですか(笑)。
- 綾瀬
- 松坂さんは淡々としているんですよね。自分の世界があるというか。今回の現場は、流泉寺美沙役の初音(映莉子)さんもそうでしたけど、マイペースな方が多かったような気がします。
- 松坂
- うんうん。それに、監督も割とマイペースな感じがしましたね。よくもまあ、これだけ集まったなと。マイペース集団でした(笑)。
- 綾瀬
- それから、真面目な方だとも思いました。自分の出番じゃないときでもお芝居しやすいように目線に立っていてくださったり。それから、洋服をきちんと畳んでいるのを見掛けたときは、「きちょうめんだな」と思いました。撮影が終わったらみんな急いで帰るから、借りた服を脱ぎっぱなしの人が多いのに、ちゃんとされてるなと思いました。
Q
大胆なキャスティングだと思ったのですが、松坂さんは小笠原に近そうですね。
- 綾瀬
- 意外にそうですよね?
- 松坂
- 僕あんなドジなところありますかね(笑)? ただ、小笠原の不器用なところには非常に共感するところがあります。自分は多分、器用な方ではないと思うので。
Q
そんな松坂さんの意外な一面を見抜いた綾瀬さんと莉子には共通点が多そうですね。
- 松坂
- 突拍子もないところは同じですね。莉子は独自の鑑定眼を持っているのはもちろん、記憶術も独特。感情豊かで感受性が鋭い。綾瀬さん本人も本能の赴くままと思わせるようなところがある。何か考えていると、ふらふらっと体が先行しているようなところがあるんですよ。
- 綾瀬
- 莉子が感受性を生かした記憶法を駆使していろんなものを鑑定したり、いろんなことを覚えたりしていくところはすごいと思うし、こういう能力があったらいいなと思いました。フランス語を習得してしまうところなんかは特にそうですね。
■フランス語は「r」の発音が難しい!

Q
綾瀬さん自身はフランス語のセリフをどのように習得したのでしょうか。
- 綾瀬
- フランス語のセリフを全部カタカナで書き出して、最初は音で覚えました。そこから発音を練習していったという感じですね。フランス語は初めてだったので、喉を鳴らす「r」の発音がなかなかできなくて。ついそこを飛ばしてしまったりすると、ネイティブの方の耳はごまかせなくて「抜けてる!」と厳しく指導されました。
Q
鑑定家のしぐさなど、こだわったところはありますか。
- 綾瀬
- 莉子は聡明な人ですが、普段は割と抜けているところがあったり、天真爛漫(らんまん)な女性なんですね。なので、しぐさというより、鑑定のスイッチが入ったときの変化にはこだわりました。目線をどうするかとか、早口にするとか。そこは監督と細かく話し合いました。
Q
松坂さんは雑誌記者役で、どんなことを意識しましたか。
- 松坂
- 莉子ちゃんが特殊な存在というか、万能なので、彼女のキャラクターはある意味、ファンタジーでもあります。だから、僕は逆に日常を感じさせる存在でありたいと考えました。そうすることによって、この作品にリアリティーが出るんじゃないかと思ったので。実際、編集部のシーンの撮影は角川書店でやらせていただき、記者の方々の実はアナログな部分や地道な作業を自分の中で大切にしたいと思いましたね。
■パリのロケはまるで観光気分?

Q
邦画史上初のルーヴル美術館でのロケが話題ですが、演技するモチベーションもやはり普段とは違いましたか。
- 綾瀬
- すごくワクワクしていましたね。ルーヴルでは長ゼリフをしゃべることもなく歩いているシーンが多かったので、割と観光みたいな感覚で楽しみながら撮影できました。
- 松坂
- お芝居とはいえ、パリを観光したという印象が強いですね。冒頭でパリのシーンは終わるんですが、日本で撮った街並みも洋館などが多くて、最後までパリの空気が続いているんですよ。監督がパリの世界観を一切壊さないようにしているんですね。おかげで、僕も最後までルーヴルで感じた高尚なイメージを抱いたまま、撮影に臨むことができました。
Q
パリに滞在中、一番印象に残った場所はどこですか?
- 松坂
- 画材屋さんです。街の風景を描いたアーティストの絵などが売られていて、時間をかけて、そういうものをもっと見て回りたいと思いました。
- 綾瀬
- ルーヴル美術館の外観を夜見たのは初めてだったのですが、誰もいない広場にピラミッドが浮かび上がったり、エッフェル塔がピカピカと光っているのが見えたり、本当に幻想的ですてきでした。
■名画「モナ・リザ」の唯一無二の魅力

Q
実際に見て、「モナ・リザ」の魅力はどこにあると思いましたか。
- 綾瀬
- やっぱり目です! とても魅惑的でした。いろんな表情に受け取れるから、ついつい見つめてしまう。それでいて、何回観てもハッとする瞬間があるんです。
- 松坂
- 「モナ・リザ」って、答えが一つじゃない感じがしますよね。調べれば調べるほど、「きっとこうじゃないか?」って新たな憶測や解釈が出やすい作品なんじゃないかと思います。だからこそ、長年にわたっていろんな人を魅了し続けているんでしょうね。この作品からして、登場人物たちが皆「モナ・リザ」に踊らされていますから(笑)。
Q
最後に、莉子さんに鑑定してもらいたい私物がありましたら教えてください。
- 綾瀬
- う~ん、鑑定してほしいほど古いものも高価なものも持っていないので……。
- 松坂
- 鑑定してもらって「はい、300円です」とか言われて、自分が価値があると思っていたものがまったくそうじゃなかったりすると、グサッときそうで怖いですよね(笑)。自分にとっては価値があるものと思っていれば、そのままでいいかな。答えはあえて出さないようにしたいと思います。

取材・文:高山亜紀 写真:本房哲治