
テレビドラマ「リーガルハイ」シリーズの監督・石川淳一と脚本家・古沢良太が、戸田恵梨香、松坂桃李ほか豪華キャストを迎えて作り上げた『エイプリルフールズ』。4月1日の大都会を舞台に、総勢27名のユニークな登場人物たちが「うそ」で大騒動を繰り広げる群像劇だ。本作で対人恐怖症の妊婦・あゆみを演じた戸田と、セックス依存症の天才外科医・亘を演じた松坂が撮影時のエピソードを語り合った。
■コメディーかと思ったらラブストーリーだった!

Q
「笑えるうそ」や「泣けるうそ」が満載の、ハートフルな作品ですね。
- 戸田恵梨香(以下、戸田)
- 演じているときは、コメディー色が強い作品だと思っていたんです。その中に、ちょっとしたラブストーリーもあるという印象だったんですけど、完成版を観たら、これはラブストーリーなのだとあらためて思いました。どのパートも「うそ」がテーマなんだけど、人それぞれの個性や日本人らしい優しさなどが、自然な形で描かれている作品だと思いました。
- 松坂桃李(以下、松坂)
- 気持ち良く観られる映画ですよね。余計なことは何も考えずに、世界に入り込むことができる。クスッと笑えるところも、隙をつかれてスッと感情を揺さぶられてしまうところもあって、見終わったあとにすがすがしい気分になれます。
Q
戸田さんが演じたあゆみは、一夜限りの関係だった亘の子を宿し、彼に結婚を迫る対人恐怖症の妊婦。演じてみていかがでしたか?
- 戸田
- 対人面で問題のある役って、なぜか楽しくやれてしまうんです。わたし自身にも問題があるのかな……(笑)。でも、実際は表現が難しかったりもするんですよ。どもってしまうところがあるんだけど、そこをやりすぎると何を言っているのかわからなくなってしまう。ある程度、観る方にわかりやすくしながらも、その中で不器用さを表現していくお芝居が求められるので、すごくやりがいがありました。
Q
松坂さんは、いろんな女性とベッドインしてしまうチャラ男・亘という、今までにない役柄でしたね。
- 松坂
- いやー、あんなにゲスい役は初めてだったので、すごく楽しかったです。女性が待っているベッドに僕が飛び込んでいくシーンがあって、石川監督からは「アニメ『シティーハンター』の冴羽リョウみたいにやってほしい」と言われたんですけど、僕は「ルパン三世が不二子ちゃんに飛び掛かるイメージ」で、ピョーンと行かせてもらいました。
- 戸田
- あれってルパンだったんだ! 確かに、そんなイメージだったかも(笑)。わたし、ルパンって大好き!
■戸田の笑い声でユースケの芝居が台無しに!?

Q
キャビンアテンダント(菜々緒)とレストランでデート中の亘のもとにあゆみが現れ、修羅場に展開していく一連のシーンが見どころですが、役者さんからアドリブやアイデアを出すこともあったのでしょうか?
- 戸田
- わたしはなかったけど、接客係のユースケ(・サンタマリア)さんや、シェフ役の小澤(征悦)さんは、ご自身でアイデアを出されていたみたいですね。
- 松坂
- ユースケさんが紙ナプキンを使って、戸田さんが構えている銃を取り上げるシーンがあったんですけど、ト書きには「接客係が紙ナプキンで銃を取り上げる」とだけ書かれていたんです。それをユースケさんが、「ゼヤッ!」と気合の一言を入れてアレンジしていました。
- 戸田
- そこ、笑ってしまってダメでした。何度もNGを出してしまいました。
- 松坂
- ユースケさんのワンショットを撮っているとき、戸田さんはカメラには入らずに、その横で銃を握って立っていたんです。ユースケさんは顔のアップを撮るので、気合を入れて「ゼヤッ!」と言うんですが、言うたびに戸田さんの「キャハハ」って笑い声が入るんです。その笑い声のせいで、ユースケさんが掛け声を言ったあとの表情がヘニャってなっちゃうんです。「もう、勘弁してよ!」って嘆いていました(笑)。
■二人のエイプリルフールにまつわるうそ体験とは?

Q
エイプリルフールの個人的な思い出があったら教えてください。
- 戸田
- 地元の友達から、「わたしも芸能人になったの」ってメールが来たことがありますね。で、「そうなんだ! 芸人になったの?」って返したら、「違う、女優だよ!」って返事が来たので、「はいはい」って流してしまいました(笑)。そのあと、彼女から「ウソだよー」とメールがあって、「わかってるよー」と返事をしました。
- 松坂
- そのお友達は、毎年エイプリルフールに仕掛けてくる人なの?
- 戸田
- それが、そのとき以来こなくなっちゃって……。わたしって、うそに乗ることができないのかも。仕掛ける相手からすると、面白味のないタイプかもしれません。
- 松坂
- 僕も、うその返しは苦手です。すぐ顔に出ちゃう。でも、強がりのうそはあります。学生のときにドッジボールをやっていて、思い切り顔面にボールが当たって、鼻血が出ちゃったんです。みんなに「おい、大丈夫か!?」って心配されたんだけど、「ああ、全然平気! 続きやろう!」と言ってしまいました。本当はめちゃくちゃ痛かったんですけど(笑)。
Q
男らしいうそですね!
- 松坂
- いや、ちっちゃいですよ。むしろ弱いというか(笑)。
- 戸田
- 松坂さんは、すごく優しいんですよ。
■古沢良太の台本は、読み物として面白い

Q
では、本作の亘のように、何かに依存しそうになったことはありますか?
- 松坂
- ……僕はゲームです。バラエティー番組の収録前日に、なんだか緊張して眠れなかったんです。それでゲームを始めたら、朝までやってしまいました(笑)。某家庭用ゲーム機のアクションゲームで、キャラクターの吹き替えをしている声優さんの声がすごく良くて……。
- 戸田
- いい! その答え、すごくいいと思う!
- 松坂
- ……何がいいのか、まったくわからないけど(苦笑)。
- 戸田
- ちゃんと素直に話してくれるところがいいんですよ(笑)。
- 松坂
- あ、でも、それはたまたま眠れなかったからですよ。仕事で次の日が早いときは、そんなにやったりしませんからね!
Q
うそつきや依存症など、人の弱い部分に光を当てつつ、先の読めない展開に仕上げた本作。脚本を手掛けた古沢さんとは打ち合せをされましたか?
- 松坂
- それが、特になかったんです。一度現場に来てくださったんですけど、ごあいさつをしたくらいで……。古沢さんの脚本は、演じていて本当に楽しいんですよ。できれば、またご一緒したいです。
- 戸田
- 台本が、読み物として面白いんです。映画をご覧になる方と同じように、何が本当で何がうそなのかわからなくて、すっかりだまされてしまう。後半は「こういうことだったのね!」という種明かしの面白さがあって、本当に楽しませてもらいました。

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美