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『寄生獣 完結編』染谷将太&橋本愛&山崎貴監督 単独インタビュー

2015年4月23日 更新

『寄生獣 完結編』染谷将太&橋本愛&山崎貴監督 単独インタビュー

ハリウッドがもくろんだこともある人気コミックの映画化を実現させた2部作の第2作『寄生獣 完結編』。パラサイトの視点から人間という生物を観察し、人間を食う存在として君臨するのか、それとも共存するのか、その行く末を描いた本作。し烈な争いに巻き込まれる人々にふんした才気あふれる若手、染谷将太&橋本愛、それを演出した『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』のヒットメーカー、山崎貴監督。日本映画をけん引する三人が、2部作にわたる大長編での心境の変化や、大胆なラブシーンを含む撮影の裏側を振り返った。

■2本で一つの作品という大長編

■2本で一つの作品という大長編

Q SFアクション的要素の多い前作と比べ、完結編はドラマ部分のボリューム感が際立っていますね。

山崎貴監督(以下、監督)
ちょっとバランスがおかしいかもしれない(笑)。本当の意味で「正しい」映画であれば、2本ともバランス良く仕上がっていることが理想なんですけれど、今回はどうしても完結編の方にドラマ要素が集中してしまった。前編だけでなく、両方観てほしいという思いが強かったのでしょうがないかなと(笑)。前作では、パラサイトは単純に怖い敵という位置付けだし、主人公の新一も彼らと戦う姿勢を示すところで終わるけれど、実はさらにとんでもない物語を秘めていたということがわかってくるのが今回の完結編ですからね。

Q 2作で一つの作品という、大長編であるからこその登場人物たちの変化も見どころの一つですね。

監督
新一は自ら戦いに行っていますからね。パラサイトであるミギーのことも防御に使ってしまう。いつそんなコになっちゃったのっていう(笑)。
染谷将太(以下、染谷)
新一は確かにすごく変化していて、心情的にもかなり複雑な揺れ方をしているんですけど、その波の一つ一つに説得力がある。人の感情としてもしっくりくるものがあったので、戸惑うことはなかったです。揺れの部分のさじ加減は難しかったですけれど。
橋本愛(以下、橋本)
そうですね。わたしの場合も新一と里美の距離感の変化に少しだけ悩みました。単に新一から離れる、近づくというだけでは表現できない複雑な感情。その両方が混在しているような感覚がありました。

■みそ汁を作る新一&ミギーはまるで夫婦!

■みそ汁を作る新一&ミギーはまるで夫婦!

Q 本作では前作以上に新一にとっての里美という存在が、より強く感じられましたね。

橋本
里美自身も自分の弱さと戦っていたと思うんです。「新一をパラサイトという恐ろしい存在から引き離さなければ」という思いを持ちつつも、それを言葉にしてしまうと全ての出来事を現実だと認めなければならない怖さと。
染谷
一番近い存在が見えなくなっていたんですよね、新一は。だけど、新一がパラサイトと対峙(たいじ)する状況に置かれたからこそ、こんな近いところにこんなにも深い愛があったんだということに気付いたんだろうなと。
橋本
善悪の境界もなくなり、人間にも物事にも多面性があり、何一つ断定できるものがなくなった状況の中でも一人の人間を信じること、愛し抜くことの美しさというものを、里美の存在を通して感じることができたように思います。

Q 新一とミギーの関係もより濃密になりましたね。特に、みそ汁を作るシーン。

監督
まさかあんなにいいシーンになるとは! 超かわいい(笑)。
染谷
かわいいですよね(笑)。
監督
二人の連携プレー。会話では衝突しているのに、みそ汁を作る作業ではまるで夫婦。
橋本
あのシーンの撮影は大変だったんですか?
染谷
みそ汁を作るだけでその日は終わりました。
監督
ネギを切る方法も決まっていなくて、当日いきなり1コマずつ撮影してみたら思いのほかうまくいっちゃって(笑)。
染谷
午前中はそれにかかり切りでしたけど(笑)。
橋本
すごい……!
監督
ちょっと目まいがしましたね。

■新一と里美のラブシーンの肝は「ぬくもり」

■新一と里美のラブシーンの肝は「ぬくもり」

Q そういう日常のシーンがあってこそ、それぞれの関係が表現される気がします。

監督
そういう意味では何げない日常の積み重ねってとても大事なんですよね。今回、新一と里美のラブシーンがあるんですけれど、それも前作からの二人の日常の積み重ねがあってこそ際立つ。新一自身がすごい混乱の中に巻き込まれている中で、里美の存在が輝いて見えるという。
橋本
あのシーンでは、里美が「希望の象徴」として彼に生きるパワーを吹き込むということをイメージしていたと思います。肌と肌が触れ合ったときのぬくもりを敏感に感じ取れれば、映像にも何か映るものがあるのではないかと信じて演じました。
染谷
かなり追い詰められた状況でのラブシーンだった上に、右手もないということでそのことも含めて自分にとってすごく生々しいシーンだったんです。なので、監督の言葉一つ一つを大切に受け止め、意識しながら演じました。
監督
物語に、人間の生物としての姿という次元に至る深さがあるので、ラブシーンも生物の記録として「生っぽい」ものにしたいと思っていたんです。

Q 確かに、単なる恋愛ドラマとは違う、人間というものの存在を感じさせるシーンでしたね。

監督
そういう意味では、正しいSFストーリーなんですよ。「人間の原罪」とか言われても何のこっちゃって思うじゃないですか。でもパラサイトという存在を通して、人間は罪を背負って生きていく生物なんだよって言われると、「ああ、なるほど」って思えるわけですよ。原罪ってこういうことなのね、と心に染みるように作られている。SFでしか表現できないことで人間を描いているんです。

■2作にわたって人間の業を見つめた心境

■2作にわたって人間の業を見つめた心境

Q 2作にわたる大長編で、新一や里美の行く末を見届けた心境は?

染谷
素直に思ったのは、美しいなということ。汚い部分もダメなこともいいことも含めて、人間が生きていく、生き物が生きていくっていうのは美しいことだなって思いましたね。
橋本
映画を観ながら、人間に対する思いというのが物語の流れに合わせてすごく変わっていったんです。人間は地球に群がる虫みたいな存在というイメージが湧いたりしながらも、最終的にはそれでも生きていく人間賛歌に落ち着く。人が人を思うことの素晴らしさは何事にも代え難いなと納得させられました。
監督
この話は、タイトルにもなっている「寄生獣」の意味も含めて、実は人間という生物の深淵を描いたもの。原作自体がすごく奥深いものになっているので、そのギャップを面白がってもらって、思いも寄らぬところへ連れて行かれる感覚を味わってもらえたらうれしいですね。

取材・文:永野寿彦 撮影:尾鷲陽介

映画『寄生獣 完結編』は4月25日より全国公開

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