
ヒットドラマ「リーガルハイ」の脚本家・古沢良太と石川淳一監督が再びタッグを組んだ映画『ミックス。』。卓球界のスター選手である元カレを見返すため、亡き母の遺した卓球クラブを立て直して全日本選手権の男女混合(=ミックス)ダブルスに挑むヒロイン・多満子を演じたのは新垣結衣。多満子とミックスを組む萩原に瑛太がふんした。スポ根な人間ドラマにしてキュートなロマンティックコメディーであるこの映画について、二人が語った。
■コメディー×スポ根×ラブストーリー

Q
最初に、映画『ミックス。』の企画を聞いたとき、どう思いましたか?
- 新垣結衣(以下、新垣)
- 最初、卓球とラブストーリーという組み合わせはとても新鮮だなって思いました。
- 瑛太
- 僕は、ガッキーと卓球のミックスが出来るってことで、やりたい! と自分の中で即決でしたね。絶対に面白くなるだろうなと思いました。脚本を読むとまずコメディー要素があって、映画としてあまりわかりやすくしすぎない表現があって、スポ根もので、ラブストーリーでもある。そういったたくさんの要素で、映画を観てくださるお客さんにいろいろなことを与えられる作品になるな、絶対やろう! と思いました。
- 新垣
- 私は脚本を読ませていただいて、キレイなお話だなと思ったんです。古沢(良太)さんの脚本は王道のラブストーリーというよりちょっとクセのある、それでいてすべてがこう……ちょうどいいんですよね。瑛太さんがおっしゃっていて確かにそうだなって気づいたのですが、「リーガルハイ」のときは、脚本に書いてあることをそのまま読むだけで映像がイメージできたんです。もちろんそこから石川(淳一)監督が、私たちの想像もできないような演出をどんどんつけていくのですが。それが今回は、現場でいくらでもふくらませていける脚本でした。(隣の瑛太に)余白がある、とおっしゃっていましたよね? 撮影現場では瑛太さんが本番のたびに、「こういうふうに演じよう」とか「アドリブはこうしよう」などと考えていらっしゃって。テイクを重ねるたびにより深いシーンになったり、より楽しいシーンになったり、どんどん変化していきました。それが楽しかったですね。古沢さんとまたご一緒して、すごく新鮮でした。
- 瑛太
- 「リーガルハイ」は観ていたのですが、セリフを覚えるのが大変そうだなって(笑)。それで今回の脚本は、やりようによってそのシーンのニュアンスがいろいろ変わってくるなというのと、どこかでプラスアルファ、自分の表現としてなにかを付け加えることによって、お客さんに対して、僕が演じた萩原と多満子の距離感みたいなものが、色濃く表現出来るんじゃないかな? などと考えていました。
Q
瑛太さんはアドリブが多かったですか?
- 新垣
- アドリブと言っていいのかも、ちょっとわからなくなっていました(笑)。私たちは本番でカットがかかるまでお芝居を続けますが、脚本のト書きにない部分、そのときに相手に触れるのか触れないのか? なにか言葉を発するのか発しないのか? テイクを重ねると、そうした変化が常にありました。それって感覚でやっているのか、一つ一つ考えているのか、どっちなのだろう? と思い、いつだか聞いたら「常に考えている」とおっしゃっていて。スゴイな! と思いました。
Q
常に考えていたのですか?
- 瑛太
- 考えてないです(きっぱり)。
- 新垣
- うそぉ~!(笑)
■初対面で「これイケる!」と確信

Q
初めて会ったときの、お互いの第一印象を覚えていますか?
- 新垣
- 卓球の練習で初めてお会いしたんですけど、練習を始めてないのだから当然まだ全然出来なかったんです。でも二人で並んで、ミックスとしてちょっと打ち合ってみようということになって。やってみたらやっぱりダメダメなんですけど(笑)、でも瑛太さんが「すごく楽しい!」と言ってくださって。それで私もスイッチが入ったというか、気合いを入れてもらいました。一緒に楽しみたいなと思えたんですよね。
- 瑛太
- ミックスを組むということは、どこかでお互いを尊重し合う必要があるし、嫌いな人とは組めないと思うんです。初めて会う人って、その瞬間に、ぱんっ! と感じるものが絶対にあるじゃないですか。呼吸とか波長が合うかどうかとか。新垣さんと初めてお会いしたとき、勝手に自分で「合う!」と思ったんです。勝手にというか、お会いする前からそう思い込んでいたのではなくて、本当に合うと思ったんですよ。それで「これイケる!」って声に出していたんですね、かなり大きく(笑)。
- 新垣
- 大きい声が出たんです。「おはようございます」はすごくちっちゃい声だったのに。
- 瑛太
- そう、テンションが上がっちゃって。
- 新垣
- (笑)。
■瑛太のサーブは誰にも返せない!?

Q
撮影前から卓球の練習をされたそうですね?
- 瑛太
- 練習というか、僕は単純に遊んでました(笑)。たまに卓球場に行って遊んだりしたこともあったし、練習は全然苦じゃなかったですね。卓球って、誰でも出来るスポーツだし。左右両打ちを練習して、実際に左手でも打てるようになりました。
Q
出演者の中で一番強かったのは誰ですか?
- 瑛太
- 一応僕みたいです、さっきガッキーに聞いたら。
- 新垣
- 勝負に勝った回数で言うと、どうやら瑛太さんが一番だったような……。
Q
あれ、それほど強くなかったのですか!?
- 瑛太
- 僕はサーブです。先生に「(ライバルを演じた)瀬戸(康史)君を倒すためのサーブを教えてください」と裏で教えてもらって、ず~っと練習していたんです。だから絶対僕のサーブは返せないんですよ。だから僕が勝つんです(笑)。
Q
なぜそれほど勝ちにこだわるのです?
- 瑛太
- 基本は負けず嫌いなので。
- 新垣
- (笑)。私は実際にはあまり、球を打たないようにしていました。多満子は小さいころから母親に鍛えられていたという設定でしたから、やっぱり誰より上手でありたいなと思ったんです。それで演じているときにフォームをほめていただけるようになったので、勘違いしたままでやりきりたい! と思って(笑)。実際に球を打って上手くいかなかったら、心が折れてしまいそうだったので。
■ガッキーってスゴイ!

Q
出来た映画を観た感想は?
- 新垣
- 個人的には、とても好きな映画だなと。自分が出演させていただいた作品としてこれからも残っていくのがうれしい、素直にそう思える作品になりました。
- 瑛太
- 僕は、ガッキーってスゴイな! って思いました(笑)。ガッキー映画でしたよね。もう、すべてがスゴイ。もちろんお芝居もそうですけど、多満子というキャラクターを演じているけれども、やっぱり新垣結衣っていう人が素敵なんだなということが伝わってくるんですよね。それは仕事への取り組み方というか、姿勢だと思うんです。この映画の座長としていつでも誠実に作品と向き合い、作品をいかによくするか? という意識を持ち続けて撮影に臨んでいたことが映像に映っていたと思います。
- 新垣
- でもそれを精神的にも芝居の面でも引っ張ってくれていたのは瑛太さんで、多満子にとっても、瑛太さんの演じる萩原が支えになっていたと思います。それは最初にあの卓球場で顔を合わせた瞬間「これイケる!」と言われたときからそうでした。本当にそうなんです。

取材・文:浅見祥子 写真:高野広美