
幸田もも子の人気少女漫画を、映画『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督で実写映画化した『センセイ君主』。本作で、なによりも数学を愛し、冷静沈着でクールな教師を演じたのが、近年、テレビドラマや映画で大活躍を見せる俳優・竹内涼真だ。「いままでによくある胸キュン、ラブコメ映画とは違う作品にしたかった」と強い視線で語った竹内が、共演者の浜辺美波との撮影や、多忙を極める現状について語った。
■教師と生徒の恋愛、初の教師役で大切にしたこと

Q
少女漫画の実写化作品ですが、どんな思いで挑んだのでしょうか?
- 原作を読み、台本をいただいた段階で、ちゃんと一からキャラクターを作ろうと思ったのがこの映画に臨むうえでのテーマでした。よくある胸キュン映画、ラブコメと思われたくなかったので、役の気持ちがしっかりと見えるように演じたいなと思っていました。
Q
教師役は初挑戦でしたが、どんな部分を意識したのでしょうか?
- 生徒と教師の恋愛ものですが、最後まで先生という立ち位置を崩さないことを意識しました。ラストまで教師に見えることで、(浜辺美波演じる生徒の)あゆはとの距離感を表現できると思ったのです。
Q
あゆははその距離感を崩しにくる役柄でしたね。
- 月川(翔)監督と浜辺さんを交えて、距離感についてはディスカッションをしました。浜辺さんが崩しに来ることによって、より先生でいなければいけないという部分は引き出されたと思います。
Q
その意味では、受けの芝居が多かったですね。
- あゆは発信のシチュエーションが多かったのですが、「俺を落としてみなよ」みたいな、いわゆる決めゼリフのとき、そのセリフにたどり着くために芝居をするのではなく、いかにハプニング的にセリフにアプローチできるか……ということを意識しました。
Q
自然な関係性でセリフにたどり着くことが重要ということでしょうか?
- シーンの最後が決まっていたとしても、二人の気持ちがそこまで持っていけなければ、何度もやり直しをしました。そこには、僕も浜辺さんもかなりこだわりました。でも頑張ったおかげで、とても自然な流れになったと思っています。
Q
台本にないセリフや動作も結構あったのですか?
- ありました。月川監督もライブ感を大事にしてくださったので、僕も浜辺さんも、その瞬間に感じたことをセリフに足したり、行動に入れたりしています。
■ヒロインには良い意味で対抗意識があった!

Q
劇中、浜辺さんはかなり弾けた演技を見せていましたが、共演していかがでしたか?
- 楽しかったです。対峙してすごく面白いなと感じましたし、僕もしっかり彼女の芝居を受けて面白くしなければという、良い意味での対抗意識もありました。僕が一つ仕掛けると、すごく反応よくリアクションしてくれるので、安心してチャレンジすることができました。すごくいいコンビネーションで撮影が進んだと思います。
Q
共演する前まで、浜辺さんにはどんな印象をお持ちでしたか?
- 僕は初めてお会いする人に「こういうタイプなのかな」という先入観を持たないようにしています。最初は僕に対して、やや人見知りした感じでしたが、撮影を重ねていくうちに慣れてきて、いい関係になったと思います。
Q
過去の作品の会見などでも、竹内さんは共演者に壁を作らない印象があります。
- グイグイいくタイプではありませんが、一緒に作品を作るうえで、仲良くなる方が絶対良いと思っていますし、コミュニケーションをとれば信頼関係もできる。そうなると、きっと芝居にも良い効果が生まれると思っています。一番意識しているのは、会話が盛り上がる瞬間やタイミングを逃さないようにすることです。
■僕はハッキリして分かりやすい

Q
ラブコメディーというジャンルで主演を務めることに対してなにか特別な意識はありましたか?
- 僕のなかでは、どんなジャンルの作品かというのは、あまり意識することではありません。主演という立場も、もちろん面白いものを作るために、自分が引っ張っていければという気概は持っていますが、それよりも、楽しい映画になるために、みんなで一生懸命頑張ろうという思いが強いです。
Q
あゆはみたいなパワフルな女性はいかがですか?
- 分かりやすいっていうのはいいですよね(笑)。あれだけストレートに好きということを表現されたら、自分が好きなら、もうカップル成立じゃないですか。スーパー最短距離の恋愛ですよね(笑)。
Q
そういう恋愛がいいですか?
- いいかどうかは分かりませんが、あゆはみたいなまっすぐな性格の子は「どうにかしてあげたい」と応援したくなります。
Q
竹内さんも恋愛に対してはまっすぐですか?
- そうですね、僕はハッキリしていると思います。
■忙しいからこそ、外に出て人と会いたい

Q
今回はややデフォルメされた世界観のラブコメでしたが、撮影現場を経験してみて、俳優としてどんなことを感じましたか。
- リアルに演じたいと改めて感じました。なにか身の回りに起こるんじゃないかということを常に意識した芝居をしたいです。
Q
リアルな芝居をするということで、日常から心掛けていることはありますか?
- ふとしたリアクションや人との会話など、日常の全てが演技に生かせると思います。ドラマをやっていても、なにが正解か見えないときがあり、監督からOKが出ても「これで合っているのかな」と思うことも多々あります。でも、日常の会話や行動のなかで、ふと「あのときのモヤモヤはこういう感じなんだ」と腑に落ちることがある。だから常にアンテナを張っていたいです。
Q
お仕事が多忙で、プライベートまで張り詰めているのは大変なことではありませんか?
- 確かに自分の時間が少ないことはありますが、だからこそ、時間を有効に使いたいんです。もちろん体を休めることは大切ですが、休みの日に昼まで寝ていたりするのは嫌なんです。できる限り外に出て、人に会うようにしています。家に籠もっていると、逆にパンクしてしまう性格なんです。
Q
いまは踏ん張りどころ?
- 体力的にキツイ部分はありますが、いまはとても充実しています。でもこうして作品を続けることにより、キャラクターの感情や行動の流れが自分のなかで落とし込めていないと、セリフ覚えも悪いし、セリフも出てこないということを強く実感するようになりました。すごく初歩的なことなのですが、改めてしっかり役に向き合おうという気持ちが強くなってきました。

取材・文:磯部正和 写真:日吉永遠