
マンガ原作からヒット作が生まれることが珍しくない昨今、「マンガ大賞2017」大賞受賞という大きな看板を背負った映画が誕生した。斜陽な文芸界に革命を起こすほどの文才を持った女子高生作家・鮎喰響が、周囲の人間たちに影響を与えながら、ただひたすら純粋に小説と向き合っていく物語だ。平手友梨奈が演じる響はとにかくストレートに生きている。そのキャラクターにひかれて出演を決意したという平手が、響との出会いについて語った。
■魅力をひとつだけあげることは難しい

Q
平手さんのオフィシャルコメントの中に「原作を読んで鮎喰響という女の子にひかれてしまった」とありますが、一番ひかれたのはどんな部分でしょうか?
- 「一番」をあげるのはちょっと難しいです。魅力はひとつだけじゃなくて、響の空気感というか全部が好きだと思ったので。響のキャラクターについては、月川翔監督といろいろ話し合いました。監督は「こう演じて!」って一方的に言い切ることはなくて、一緒に作っていく感じでした。「ここは響だったらどう思う?」という形で質問していただいて、私なりに答えを出すと。セリフのひとつ、動きのひとつについて細かく話し合いました。
Q
響は平手さんのイメージに似ているキャラクターのように見えます。ご自身でもそう感じますか?
- 自分ではあんまりそう思っていないんですよ。ただ、周りからはよく言われます。「すっごい似てるよね」とか「そっくりだよね」って。共感できる部分はたしかに多いです。
■俳優ではなく“役”として過ごした撮影現場

Q
共演シーンが多かった花井ふみ役の北川景子さん、祖父江凛夏役のアヤカ・ウィルソンさんとはどんなお話をされましたか?
- う~ん、何だろうなぁ。特別なことはそんなに話さなかった気がします。ご飯の話とか、本当に他愛もないことをしゃべっていました。ふみともそうだし、凛夏ともやっぱりお弁当の話とかばっかりだったような……。
Q
撮影現場では共演者の方を役名で呼んでいたんですね。「ふみさん」「ふみちゃん」ではなく、響と同じように「ふみ」と?
- 「ふみ」……でした(笑)。お二人以外の共演者の方も、俳優さんとしてというより、役として接していた感覚があります。原作のキャラクターのイメージ通りだなって思いながらご一緒させていただきました。私自身、やっぱり響として現場にいたつもりです。動物園に行くシーンがあって、「あの場面ではすごく柔らかい素の表情をしていたね」って言われることが多いんですけど、ただ響として過ごしていただけなんですよ。響は動物が好きだからなぁという気持ちで演じた結果、自然とそういう表情になったんじゃないかと思います。
■撮影で大変だったのは意外と地味な場面

Q
動物園のほかに、砂浜で砂に埋まりながら本を読んでいるシーンが印象的でした。あれは本当に埋められていたんでしょうか?
- 実際にはドーム型に作られた発泡スチロールに砂を載せた感じだったので、重くはなかったんですけど、ちょっと大変だったかな。あと、意外と大変だったのは、文芸部の部室でのシーンです。凛夏の主観で「面白い本」と「つまらない本」が左右の本棚に分けられていて、凛夏が「面白い」としている一冊を、響が勝手に「つまらない」棚に移動します。それを凛夏がまた戻して……っていうのを何度も繰り返す場面なんですけど、動きの“間”が難しかったですね。
Q
アクションシーンも多い役でしたが、なかなかハードだったのでは?
- それはあまり感じませんでした。自分でも驚いたのは、いろんなアクションをやったわりにはすり傷ひとつなく撮影を終えたことです。どのシーンも印象に残っていますけど、100パーセント納得できたというわけではないかもしれませんね。跳び蹴りをする場面は、「本番よりも、リハーサルのほうが高く跳べたなぁ」って思っています。
■劇中だけではない響の存在の大きさ

Q
主人公は女子高生ですが、幅広い年齢の方が楽しめる作品だと思います。作品をご覧になる方にはどんなところに注目してもらいたいですか?
- 響と周囲の人との出会いですね。彼女の影響で、周りの人たちがどんどん変わっていく様がこの作品の見どころだと思います。よく「この作品を通じて何か得たものはありますか?」って質問をされるんですけど、多分、一番大きな収穫は響との出会いです。その出会いがなければ、そもそもこの作品に出演していなかったでしょうから(笑)。
Q
なるほど。今後、演じてみたい役や出演してみたい作品のジャンルなどがあったら教えてください。
- 全然考えていないんですけど……そうですね、やっぱり響と同じぐらい魅力を感じる役に出会えたらまた演じたいと思うかもしれません。そう思えるぐらい、響は私にとって大きな存在になりました。

取材・文:大小田真 写真:高野広美