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『半世界』稲垣吾郎 単独インタビュー

2019年2月7日 更新

『半世界』稲垣吾郎 単独インタビュー

阪本順治監督がオリジナル脚本も手がけた映画『半世界』で主演を務めた稲垣吾郎。彼が演じたのは山村に暮らしながら炭焼き職人として生計を立てる男・紘。製炭業を取り巻く厳しい現状、家族との絆、残りの人生をどう生きよう? 心揺れる彼の元に元自衛官の旧友が帰郷する……。どこか都会的な稲垣が年齢相応な男をナチュラルに演じる姿が新鮮! 俳優としての新たな一歩を刻んだいまの心境を語った。

■ロケ地への幽閉が役づくり?

■ロケ地への幽閉が役づくり?

Q 『半世界』は「新しい地図」立ち上げ後、俳優として個人では一作目となる映画ですね?

昨年4月に公開された『クソ野郎と美しき世界』と撮影は同時進行でした。僕個人としては一作目。この映画の他に僕が演じるのをイメージしやすい大人のラブストーリーの企画も阪本監督の中にあったらしいんです。初めて監督とお会いしたときにいろいろなことを話したのですが「この映画でイケる!」と思っていただいたようで。僕にとってこの企画はとても新鮮で喜んで引き受けさせていただきました。いまとなっては無難な方を選択しなくてよかったなとも思います。

Q 普通の人を演じてみたい思いが?

普通の人って意外と演じる機会がないんですよ。いまの時代、特殊な環境や特殊な能力を持つ人間、特殊な人間ドラマのある作品でないと、エンターテインメントとしてなかなか成立しづらいのかなと。でもこの映画のように小さな町に生きる人々の普通の生活にスポットを当てた話というのが面白いと思ったし、映画ならではの題材に思えたんです。

Q 役への距離感はどのように縮めたのでしょう?

ロケ地に一か月ほど幽閉されたので自然と(笑)。三重県の南伊勢町は日本の原風景のようでもある。生活したことのない環境だったので、まるでファンタジーの世界でした。環境というのは大きいです。音だったり光だったり視覚的なものだったりと五感で感じさせてくれ、役柄が自分の中に浸透していく。環境が自分を役に引っ張ってくれます。

■阪本監督についての話は香取慎吾から

■阪本監督についての話は香取慎吾から

Q 阪本監督に関してこの作品以前はどのような印象が?

お会いしたことはあったのですが、それよりも香取(慎吾)君が『座頭市 THE LAST』『人類資金』でご一緒していて話を聞いていたんです。香取君って意外と人に深入りしないタイプというか、社交的で誰に対してもニコニコしているのですが、シャイなところがあるんです。なのに阪本監督は特別みたいでプライベートなことを話したり2人で食事に行ったりしていると聞き、香取君がそこまで心を許すってどういう人だろう? と思っていました。

Q 実際にお会いした印象は?

とにかく優しくて、表現の仕方が男っぽくて不器用にも思える。それでいてお父さんみたいでもあります。たくさんしゃべる方ではありませんが関西人らしいユーモアもあり、世の中のことを冷静に見つめているんです。映画監督って外の世界を遮断して自分の作品に没頭するイメージがあったのですが、プロデューサーにもなれるのでは? と思うくらい。芸術家らしさだけでなく、バランスが取れている方だと思いました。

Q 長回しのシーンで何十回とテイクを重ねたことが役をつかむきっかけになったとか?

長谷川博己さん演じる幼なじみの瑛介と紘が再会するシーンで、15テイクくらいしました。歩いたりしゃべったりいろいろな行動を伴うのですが、そこで役をかなりつかめた気がします。紘は僕より低い声でしゃべるんです。最初のシーンってやっぱり重要ですね。映画は舞台のように稽古を重ねないまま撮影に入ることが多く、改めて役をつかむことが役者の仕事だなと。

■もともと“都会キャラ”ではありません

■もともと“都会キャラ”ではありません

Q 稲垣さんのイメージを変える役に思えました。それは阪本監督に導かれた部分が大きいのでしょうか?

映画の中の役者の印象は監督次第だと思うんです。もちろんそれだけではないでしょうが、ほぼほぼ監督に引き出され、監督が上手く撮ってくださる。それを編集して色付けしていくのですから、監督の力は大きいと思います。

Q 阪本監督は稲垣さんを起用することにプレッシャーがあったのでは?

どうだったんでしょう? 世間の人たちが僕に抱くイメージとは異なる役なので、きっと面白い映画になるし、話題にもなると思われたかもしれません。監督はそうしたことも冷静に考えられる方です。それでいて瞬間的に僕ならこの役ができる! と感じてくださったわけです。土の香りがするような役ですが、そもそも僕は“都会キャラ”ではないですし。

Q 都会キャラでは「ない」ですか?

土の香りがするようなことが好きです。自然が好きだし、花が好きだし、ゴルフも好きだし。機械が苦手なアナログ人間で、都会的で無機質な空間で仕事をすることだけが好きなわけではないです。両方好きなんです。ワイン好きというのも、生産地を感じたり、自然を感じるところに惹かれるのだと思います。

■自分にとって新しい旅だった

■自分にとって新しい旅だった

Q 最近ではブログで素の部分を明かされています。役者の中には「役柄を狭めるから」とSNSをやらない方もいます。その辺りのバランスをどうお考えですか?

全然いいと思うんです、求められるなら。知りたいと思う人がいるなら出すべきだし、それで「役のイメージが……」というのは怖がりにも思えます。そんなことを言ったら、グループで活動しながら役者をやることはどうなっちゃうんだろう? 常にグループのイメージが先行するわけですから。なにかをすることで役者としての役柄を狭めるとか、その役として観てもらえなくなるのでは? という恐怖心はありません。ベールに包まれていようとするのはいまの時代にあまり適したやり方とは思えないですけど、諸先輩方はそうしてやってきたのかもしれないし……どうなんだろう? もちろん僕らの仕事にファンタジーの部分は必要です。僕もブログはやっていますが、すべてを赤裸々に、生活感あふれる内容にはしていないつもりです。そこは守りながらも素を出す。そうバランスを取ってやっていくことが、グループとしてやってきたことでもありました。

Q 次回作は手塚治虫作品の実写映画『ばるぼら』で二階堂ふみさんと共演されます。役者として面白い展開だなと思いました。

本当に! 今回の映画とはまた全然違います。いままでにない作品としてみなさんの目に映るはずです。映画って本当に面白いです。映画を観るのが好きだけど、出るのがいちばん好き。出るのが好きだから観るのが好きなのかもしれない。役者としての自分は始まったばかりです。ずっとやり続けたい職業で「いまはまだ序章に過ぎない」というと大げさですけど、今作は自分にとって確実に新しい旅だったので、役者として新たな自分を見せることができていたらいいなと思っています。

取材・文:浅見祥子 撮影:高野広美

映画『半世界』は2月15日より全国公開

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