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『あの日のオルガン』戸田恵梨香 単独インタビュー

2019年2月18日 更新

『あの日のオルガン』戸田恵梨香 単独インタビュー

太平洋戦争末期、日本で初めて保育園を疎開させることに挑んだ保母たちの奮闘を描いた『あの日のオルガン』。本作で幼い子どもたちの命を守るために「怒りの乙女」として保母たちの先頭に立ち、困難に立ち向かう板倉楓を演じたのが、戸田恵梨香だ。昨年は連続ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」や映画『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』など、出演作が大きな話題となった戸田が、熱演した本作へのアプローチ方法や、近年の女優としての充実ぶりを振り返った。(※映画の設定に基づき保育士ではなく保母と表記します)

■厳しい状況を描いた実話 担えるのかなという不安も

■厳しい状況を描いた実話 担えるのかなという不安も

Q 戦時中の厳しい状況下に置かれた保母さんの役でしたが、どんなアプローチをしたのでしょうか?

「二十四の瞳」や、この時代を描いた作品を観て、俳優さんたちのお芝居などを参考にしつつ、いまの時代の人たちに伝わりやすくするにはどうしたらいいのかを考えながら役を作っていきました。

Q 戸田さんが演じた楓は、とても辛抱強く踏ん張りながら日々を過ごしていた女性でしたね。

戦争をしていた時代を描く実話ということで、わたし自身の責任も重大で、しっかり担えるのかなという不安もありました。でもそんなわたしの重圧なんてはるかに超えるものを、楓たちは20代で抱えていたんですよね。命を守るためとはいえ、小さい子どもを親から引き離して預かることが正しいかどうか答えが出ないなか、支えとなっていたのは「子どもたちを守る」という信念だったと思うんです。その気持ちがあるからこそ、踏ん張れたんだと思う。わたしもこの役を通じて「強く生きたい」と感じるようになりました。

■阪神・淡路大震災で被災したときに感じた思い

■阪神・淡路大震災で被災したときに感じた思い

Q 「小さな子どもを親から引き離す」という心情を表現するのは難しいことではなかったですか?

クランクイン前に、平松(恵美子)監督とお会いしたときに、阪神・淡路大震災で被災したときに感じた思いが、役に投影できるのでは……と話したんです。町全体が倒壊して、隣近所の方も亡くなりました。いまでもその光景は鮮明に覚えていて、子どもながらに恐怖心や虚無感、不甲斐なさを感じました。また、ドキュメンタリー番組でミャンマーに訪れたとき、HIVに感染し、自分が死ぬ前に子どもを預けたいという両親に会ったんです。そのとき、事情がわからず親と離れ離れになってしまう子どもの不安や、育てることができない母親の苦しみを感じたのですが、そういった感情に触れたことも、この作品の楓を演じるうえで活かせるのかなと思いました。

Q シビアな展開が続く作品ですが、戸田さんにとってもっとも印象に残っているシーンはありますか?

東京に空襲が来て、焼け野原になった状況を見て「もう逃げるのはやめよう」とつぶやくシーンは全キャストの熱が異常なほどで、わたし自身も、怒りや悔しさ、悲しみなどいろいろな気持ちが織り交ざったなかで、どの感情を一番強調したらいいのか、ものすごく考えました。

■「怒りの乙女」板倉楓と戸田恵梨香がリンクした瞬間!

■「怒りの乙女」板倉楓と戸田恵梨香がリンクした瞬間!

Q 若い保母さんたちのリーダー的な役割でしたが、撮影現場ではどんな立ち位置だったのですか?

題材が難しい話であり、しかも平松監督は独自の映画の世界観をお持ちの方だったので、若い役者さんたちは、どういう方向性でお芝居をしたらいいのか、とても悩んでいました。葛藤する姿はわたしにもすごく励みになりました。あるときは「力を抜いて」と言ったり、あるときはお互いに弱音を吐き合ったりしながら、一緒になって現場を過ごしました。すごくいい現場の空気でした。

Q 子どもたちとのシーンも印象的でした。

そうなんです。大勢の子どもたちと一緒のシーンは、若い役者の子たちが「本番だよーちゃんとやるよー」って声をかけるシーンも多かったですね。それを「みんな頑張れ!」って見守っていることも多かったです。わたしはどちらかというと、現場で様子を見ているのが好きなんです(笑)。

Q 昔から俯瞰して現場を見ているのですか?

割と俯瞰して見ていますね。このとき、この人はどういう風なことを考えているんだろう……みたいなことを想像するのが好きなんです。

Q 今回の撮影で印象に残っているエピソードはありますか?

保母さんと子どもたちが一緒に歌うシーンがあったのですが、子どもたちの集中力が切れてしまってうまくまとまらなかったんです。監督や助監督が一生懸命声をかけていたのですが、それでもダメで……。そのとき、わたしが、現場で初めて「いい加減にしなさい! みんなここになにしに来ているの! 集中しなさい」と大きな声で叱ったんです。そうしたら、わたしが怒った姿に子どもたちがびっくりした顔をして……。そのとき「あー知らないうちにわたしは楓先生になっていたんだ」と実感できました。すごく面白い瞬間でした。

■「コード・ブルー」と朝ドラ「スカーレット」“緋”から抜け出せない!?

■「コード・ブルー」と朝ドラ「スカーレット」“緋”から抜け出せない!?

Q 昨年30歳を迎えましたが、近年、とても印象深い作品に出演していますね。

運がいいですよね(笑)。とても素敵な作品に出会えていると思いますが、作品に臨むときに常に意識していることは、しっかり物語の持つテーマを理解し、自分がなにをすべきか考えることです。例えば、続編の作品にも出演させていただくことが多いのですが、そのときもキャラクターがブレないように意識をしています。役を守れるのは自分だけなので。

Q 下半期には、連続テレビ小説「スカーレット」のヒロインという大役も待っています。

「スカーレット」というタイトルは「緋色(ひいろ)」という意味なんです。「コード・ブルー」で演じた緋山美帆子の「緋」と同じだと思いました。緋山は、5人のなかで情熱的なキャラクターだったのですが、また朝ドラでもそういう役なのかなという印象がありました。

Q “緋”に引き寄せられた感じですね。

そうですね。縁を感じました。でも一方で、このイメージからは抜け出せないのかなと思ったり(笑)。まあ、わたし自身がそういう人間なんだろうなと思って、この役も自然の成り行きで巡ってきたんだと理解しました(笑)。しっかりと役割をまっとうしたいですが、長丁場で集中し過ぎると良くないので、肩の力を抜いて、楽しんでやりたいです。

取材・文:磯部正和 撮影:高野広美

映画『あの日のオルガン』は2月22日より全国公開

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