『九月の恋と出会うまで』高橋一生&川口春奈 単独インタビュー
2019年2月28日 更新

突然届いた“未来からの声”によって命を救われた志織。だが、隣人で小説家志望の平野から、タイムパラドックスによって志織が消えてしまうことを告げられる。2人は彼女の運命を元通りにするために未来からの声の主を探し始めるも、そこにはいくつもの障壁があって……。2人の心の揺れを真っすぐに描いた松尾由美の同名小説を映画化した本作で、ラブストーリー初主演の高橋一生と川口春奈が初共演。時空を超えた一途な奇跡の恋に挑んだ。
■待望の初共演

Q
お二人は今回が初共演ですね。お互いにどんな印象をお持ちでしたか?
- 川口春奈(以下、川口)
- わたしは以前から、いつか高橋さんとご一緒したいと思っていました。
- 高橋一生(以下、高橋)
- 本当にありがたいことです。
- 川口
- でも、それはわたしだけじゃないと思いますよ。高橋さんとご一緒にお仕事したいと思っている人は、役者さんはもちろん、スタッフさんにもたくさんいらっしゃると思います。
- 高橋
- 嬉しいです。こんなおじさんをつかまえて、そこまで言ってくださるなんて。
- 川口
- おじさんじゃないですよ(笑)。今回、実際にお仕事させていただいて、とにかく優しくて、すごく頼りになる方だったので、素敵な時間を過ごさせていただきました。
- 高橋
- 川口さんこそ、とても人間力が高い方なんだと思いましたよ。とても可愛くてチャーミングなのはもちろんですし、それに加えてきちんとコミュニケーションを取ってくださいます。とても気を遣ってくださっているんだなと伝わってきて、心地よく撮影できたと思います。
- 川口
- ほらあ! 本当に優しい(笑)。
- 高橋
- コミカルなところも可愛らしいんですよ(笑)。
■お芝居は相手がいてこそ成り立つもの

Q
お芝居をご一緒されて、どんな俳優さんだと感じられました?
- 川口
- 高橋さんが演じられた“平野さん”は、小説家志望でだいぶ風変わりな人なんですけど、撮影中の高橋さんは平野さんにしか見えなかったです。変な人だけど、単に自分がやりたいことや貫きたいことがこう、というだけではなくて、愛する相手を真剣に思う気持ちが垣間見えるところが多かったんですね。わたしが演じた志織も、それに影響された部分は大きいです。高橋さんが平野さんをブレずにまっとうしてくださったからこそ、引っ張っていただけた。わたしの引き出しも増えたと思います。
- 高橋
- 川口さんは、僕のその場その場でのお芝居に、よくぞ合わせてくださったなと思います。
- 川口
- 合わせるなんておこがましいです。お芝居は相手がいてこそ成り立つものですし、相手の言葉で嬉しいとか悲しいとかいう感情が起きるんですけど、そういう部分をすごく引き出してくださいました。
- 高橋
- 僕はふだんから、演じる前にプランを立てることはありません。現場で柔軟に、自分から出てくるもので演じているので、川口さんがしっかり受けてくださったからこそ、自由に動けたと思っています。
- 川口
- わたしはてっきり、高橋さんの中に「平野はこういう感じ」とか「志織とのシーンはこう」などのプランがしっかりあったんだと思っていました。
- 高橋
- いえ、まったく(笑)。
- 川口
- 状況や環境と向き合って、その場で作っていらしたんですね。意外でした。確かに、思い返すと「そうだったのか」というところもありますけど(笑)。
■恋愛に年の差は関係ない

Q
高橋さんは、これがラブストーリーとしては初主演作になるそうですね。
- 川口
- 意外ですよね。
- 高橋
- こうしてお話をいただくこと自体がありがたいことだなと思いました。
Q
ラブストーリーをまっとうできましたか?
- 高橋
- しっかりまっとうさせていただいたと思います。平野自身は「とにかく志織を助けなきゃ」と必死でしたから、恋や愛どころじゃなかったと思いますが(笑)。ただ、それがみなさんの目に触れたときに「ラブストーリー」になっていて、それぞれの心が豊かになったらいいなと思っています。
Q
川口さんは、志織の恋を体験されての感想は?
- 川口
- 志織はすごくロマンチックな恋を体験しましたよね。運命の人だって言い切れる人と出会えて、どんどん惹かれ合って。相手のために動けるというのは、とても素敵だなと思いました。そこでは、出会ってからの時間や年齢は関係ないんです。恋はいいですね。恋したくなりました。
■恋をしていると自分が見えてくる

Q
この映画を体験したことで、学んだことや、心に残っていることを教えてください。
- 高橋
- 疑似体験ができることがお芝居の醍醐味だと思いました。誰かのために必死で走るとか、実生活ではなかなかやらないことですから。お芝居を通して、真っすぐになれる瞬間を感じられるのはとても面白いことだと、噛みしめながら演じていました。
- 川口
- 演じていていろいろな気持ちになりましたし、思い知らされるような部分も、自分と向き合う部分もありました。恋って、まず相手のことよりも、自分自身を見つめなおすきっかけになるんだなと感じましたね。
- 高橋
- 恋をしていると、自分が見えてきますから。ひるがえって自分が映る鏡になるので、恋って大事だなと思います。
- 川口
- 見えてきますよね、自分。いいことも悪いこともあるけれど、いくつになっても恋する気持ちを持っていたいなと思いました。
- 高橋
- いまの時代、恥ずかしげもなく人を好きになって、その気持ちに正直に動くことは、どの年代もあまりできなくなっているんじゃないかと思います。窮屈な時代かもしれません。けれど、人ってそういうことじゃないんだよ、もっと自由に気持ちを解放していいんだよと感じてもらえる映画になっているのではないかなと思います。

取材・文:早川あゆみ 写真:高野広美