ここから本文です

『パラレルワールド・ラブストーリー』吉岡里帆 単独インタビュー

2019年5月31日 更新

『パラレルワールド・ラブストーリー』吉岡里帆 単独インタビュー

累計発行部数150万部を超える東野圭吾の傑作ミステリー小説を、映画『ひゃくはち』や『宇宙兄弟』の森義隆監督で実写映画化した『パラレルワールド・ラブストーリー』。本作で、一つの世界では玉森裕太演じる崇史の恋人、もう一つの世界では、染谷将太ふんする崇史の親友・智彦の恋人として存在するミステリアスな女性・麻由子を演じたのが、女優・吉岡里帆だ。近年、目覚ましい活躍を見せる吉岡が「ふがいなさで泣きそうになる日もありました」と語った撮影を振り返った。

■悩み抜いた役へのアプローチ

■悩み抜いた役へのアプローチ

Q パラレルワールドという、やや非現実的な舞台で繰り広げられるラブストーリー。しかも麻由子というキャラクターはバックヤードがあまり描かれていないミステリアスな存在でした。

そもそも映像化することが難しいと言われていた東野圭吾さんの小説。台本も難解で、わたしが演じた麻由子、玉森さんの崇史、染谷さんの智彦の3人の役割もバラバラなんですよね。そのなかで、それぞれが自分たちの役割をまっとうすることで、化学反応が起こる物語。自分がなにを求められているのかは、かなり考えました。

■毎日「監督との勝負だ」という気持ち

■毎日「監督との勝負だ」という気持ち

Q メガホンをとった森監督は今回、かなり俳優陣を追い込んだと話していましたが。

ほかでは味わったことがない現場でした。作品のためなら、表層的な馴れ合いは必要ないというスタンス。森監督もわたしに対してフレンドリーな感じはほとんどなかったです。

Q お互いに勝負する感じですか?

まさにそうですね。毎日「監督との勝負だ」という気持ちで現場に入っていました。お腹が痛くなる日もありましたし、自分のふがいなさで泣き出しそうになる日もありました。でも、こうしたすべての行動が作品への愛だと感じられる現場でもあったので、なんとかしがみついて役に取り組んでいました。

Q 森監督は「映画をやりたい」という思いが強く伝わる女優さんだと話していました。

その思いはものすごく強いです。作品によって見せたいものもメッセージも違うのですが、感動して心が動いたものに対して、制作に関わる人全員が一致団結して向き合えるのが映画。自分は作品の歯車の一つになれることに喜びを感じるタイプなので、この作品はその意味で、すごく印象に残っています。

Q その意味では、この作品は難解な原作を映画というメディアにうまく置き換えた作品だったのではないでしょうか。

小説では登場人物のバックボーンが丁寧に描かれているのですが、映画は100分程度のなかで、なにが正しいかを見極めなければいけない作りになっています。逆に言えば、より翻弄される部分が大きく、そこの部分にフォーカスを合わせて楽しんでいただきたいですね。

■男女の三角関係には苦しさしかない

■男女の三角関係には苦しさしかない

Q 出来上がった作品を観てどんな感想を持ちましたか?

現場ではつかめないことが多かったのですが、完成した作品を観て「ここを目指していたんだな」と腑(ふ)に落ちました。監督についていってよかったなと(笑)。でも改めて振り返っても、私生活が一変するぐらい濃厚な現場でした。

Q 具体的にはどんな部分に感情移入しましたか?

切なさですね。作品の性質上、最初はパラレルワールド上で「なにが本当なのかわからない」というサスペンス的な要素が面白みの一つだと感じるのですが、物語が進むにつれて、三角関係的な部分に切なさを感じるようになってきました。特に智彦に対する懺悔や罪悪感は強く感じました。実際、智彦のシーンを観たときは泣いてしまいました。

Q 三角関係という部分では、玉森さんは親友と同じ人を好きになったら「僕は引く」と話していました。

麻由子を演じて、男女の三角関係って苦しさしかないと強く感じました。もし自分がそういう状況になったら、わたしも引いてしまいますね。この映画は誰に感情移入するかで、作品のイメージが変わってくると思います。どの登場人物も一筋縄ではいかない魅力がありますよね。

■吉岡里帆流インプット法

■吉岡里帆流インプット法

Q 作品が続きノンストップで女優業を駆け抜けている印象があります。アウトプットが続くなか、インプットはどのようにしているのですか?

毎週レギュラーでラジオ(「UR LIFESTYLE COLLEGE」/J-WAVE)をやっているのですが、さまざまなジャンルの人がゲストに来てくださるんです。その一時間は、いまのわたしの人生においてとても大事な時間です。いつもは演じる側なので、こうして取材でお話を聞いていただく立場なのですが、ラジオのときは自分がインタビュアーになって、ゲストの方の良い部分を見つける作業。人を知っていくことは、すごく良いことだなと感じています。やっぱり自分のことばかりだとつまらない。人に興味を持つことは、とても楽しいです。

Q ゲストは吉岡さんが「この人に会ってみたい」という希望を出すのですか?

そのときによります。わたしがお会いしたいと思っている方を提案することもありますし、番組側の提案もあります。ディレクターさんのチョイスがすごく素敵なので、毎回ワクワクしています。

Q 違うジャンルの方の話は、いいインプットに?

本当にそうです。数学博士の方とか、中東料理研究家の方や、ARの開発者の方とか……。ゲストに来ていただいて話を聞くと、これまで全く知らなかったジャンルでも、自然といろいろなことを調べている自分がいます。

Q 『パラレルワールド・ラブストーリー』という映画も、SF的な要素やファンタジックな要素など、探求心がわく作品でもありますね。

公式サイトには作品を観た人限定のシークレットサイトがあって、ミステリー部分の答え合わせもできるんです。すごく難解な題材ではあると思いますが、一粒でなんども楽しめるような味わい深い作品になっていると思います。
過去のインタビューで、自分に満足しない発言を繰り返すなど女優業に対してストイックな印象があった吉岡里帆。その彼女でさえも「お腹が痛くなるような日もあった」という本作の撮影現場。「泣きそうになりながら」も食らいついたのは映画への愛なのだろう。和気あいあいな雰囲気は、連帯感を生み出すことも多いが、監督、スタッフ、キャストそれぞれがシビアな緊張感のなかでも、信じるものに向かって一丸になれるということを経験できた本作は、吉岡にとって大きな財産になったのではないだろうか。

取材・文:磯部正和 写真: 尾藤能暢

映画『パラレルワールド・ラブストーリー』は公開中

本文はここま>
でです このページの先頭へ