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『町田くんの世界』岩田剛典&石井裕也監督 単独インタビュー

2019年6月6日 更新

『町田くんの世界』岩田剛典&石井裕也監督 単独インタビュー

人を愛する才能だけはズバ抜けているマジメ一直線の高校生・町田一(細田佳央太)。孤独な同級生・猪原奈々(関水渚)と出会ったことから、予測不可能な物語が走り出す安藤ゆきの人気コミックを『舟を編む』の石井裕也監督が実写化した本作は、新人2人を主演に抜てきし、脇を豪華キャストで固めた新時代への人間賛歌。なかでもピュアな町田くんとは対照的なスカしたイケメン男子・氷室雄にふんした岩田剛典の存在感には、目を見張る。2度目のタッグとなる石井監督と俳優・岩田。2人はどんな関係性で結ばれているのだろうか。

■ 町田くんは“奇跡の人”

■ 町田くんは“奇跡の人”

Q 監督は映画化発表の際に「例外的なことをやりまくっています」とコメントされていました。具体的にはどんなチャレンジをされたのでしょう?

石井裕也監督(以下、監督)
一番大きいチャレンジは、町田くんという“神様”のように聖なる存在を、いかにして現実の世界に存在させるか、ということ。これが最も難しい試みでした。やはり漫画と違って生身の人間がやることなので、絵空事にはできない。ここが実写映画の難しいところでした。いかに町田くんを“人間化”するかというのが勝負どころでした。演出してみて、彼は“奇跡の人”だなと改めて思いましたね。

Q 万人に分け隔てなく優しい町田くんは、確かに聖なる存在ですね。ところが同級生の猪原奈々に恋をして、初めて味わう「わからない感情」に翻弄されて、未知の世界に走り出します。

監督
人が人を好きになるってなんだろう? と考えたのですが、これも“奇跡”としか言いようがない。だから映画のなかで恋を描くために、誰もがあっと驚くような、壮大な奇跡を見せたくなった。「好きな人に会うためなら空も飛べる」という気持ちは、実際に無理だとわかっていても誰もが感じたことがあるんじゃないでしょうか。こんなことは普段だったら恥ずかしくて言えませんが、原作のおかげでリミッターが外れてしまったような、本音をちゃんと言えたなっていう手応えはありますね。

■ 大人になると感度がどんどん悪くなる

■ 大人になると感度がどんどん悪くなる

Q プロットを読んだとき、どういう仕上がりになるか想像がつかなかったとおっしゃっていた岩田さん。完成作品を観ていかがでしたか?

岩田剛典(以下、岩田)
いやあ、楽しかったですよ(笑)。初号の試写で観させていただいて、もう笑っちゃいましたね。芝居に見入ってしまうところもあって、すごく贅沢な映画でした。最後、空を飛ぶなんて誰も考えないわけで……そういった部分でも度肝を抜かれましたね。

Q 作品からはどんなメッセージを受け取りました?

岩田
やはり町田くんという存在が心に残りましたね。社会に出て揉まれているうちに、不純物がいっぱい付いてきて、大人になれば感度もどんどん悪くなっていく。ところが町田くんは、感度がビンビンなんです(笑)。そういう存在って、現実にはなかなかいないのかもしれないけれど、希望の光にはなりますよね。人に優しくなれるというか、とても温かい気持ちになれました。

■ 撮影初日はどんな作品になるのか不安だった

■ 撮影初日はどんな作品になるのか不安だった

Q オーディションで1,000人ものなかから選ばれた新人2人を主役に抜てきされたわけですが、期待どおりにいきましたか?

監督
彼らは人生で1度しかできない、本当の剥き出しの姿を鮮やかに見せてくれた。新人にしかできない演技というか、まさに生きざまそのものでしたね。人生初のフルパワーだからこそ、テクニックや実績のある俳優がどう逆立ちしても敵わない。

Q 岩田さんが新人から触発された部分はありましたか?

岩田
初日から細田くんは、瞳孔が開いているんじゃないかというくらい目を見開いていて……(笑)。なるほど町田くんってこういうふうに演じるんだと、彼の姿を目の当たりにしたときは、さすがに驚きましたね。走り方も普通じゃないし、表情もすごい。僕としては「どういう作品になるんだろう?」と、とにかく不安と期待でいっぱいでした。

Q 岩田さんが演じているイケメン男子の氷室と町田くんとの掛け合いも見応えがありました。

岩田
物語のなかで大事になってくるので、自分の演技がよくなれば相手の反応もよくなるだろうし、緊張感がありました。でも後半にかけて、細田くんのブレない演技には、芯の強さを感じましたね。思いっきり胸ぐらを掴む場面でも動揺することなく、演技に迫力すら感じました。

■ 自ら苦悩の道を行く岩田剛典の存在感

■ 自ら苦悩の道を行く岩田剛典の存在感

Q オムニバス映画『ウタモノガタリ-CINEMA FIGHTERS project-』のうちの石井監督がメガホンを取った「ファンキー」に続いて、2人は2度目のタッグとなります。石井監督から見た“俳優・岩田剛典”にはどんな魅力があるのでしょうか?

監督
僕は岩田くんを同じ男として尊敬しているんです。なぜかというと、こんなに爽やかな好青年であるにもかかわらず、苦悩の道を行く宿命を自ら進んで背負っている気がするからなんです。EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE のメンバーとして格好いい姿でファンを魅了しながら、一方で俳優としてさまざまな役に挑むという。なかなかできないことだと思うんですよね。自分でコントロールしながら、どちらも手を抜かず、苦悩しながら挑戦し続けている人として、単純にすごいと思うし、“俳優・岩田剛典”というその存在をユニークなものにしています。だから好きなんです。
岩田
いきなり告白されてしまいました(笑)。ありがたい言葉です。石井さんは決して取り繕ったりしない方なので、そういうところが僕も好きですね。社交辞令や自分が思っていないことは絶対に口にしないし、言葉の一つ一つを豪速球で投げてくる感じがあるので、こちらも自分に正直でいないと反応できない。だからこそ嘘がないし、心から信頼できるんですよね。

Q 「ファンキー」の兄貴役、そして今回のスカした氷室役での演技を見て、岩田さんの新たな魅力が石井監督によって引き出されたように感じました。

監督
岩田くんから何か違うものを引き出すというような、大それたことをしようとは思っていません。人によって魅力の定義というのは、違うと思うんですよね。他の監督さんは、岩田くんの違う側面を魅力的だと思っているでしょうし、僕は僕なりに魅力的だなと思うポイントがある。だから今回は「男から見ても惚れる男」としての魅力を、僕が考える素直な表現で見せたいという思いだけはありました。

Q 「ファンキー」に出演した際に「次は長編で」と石井監督から言われたそうですね。

岩田
前回は短編ということもあって撮影があっという間で、せっかくのチャンスをいただいたけれど、それほどコミュニケーションを取る時間もなく終わっていた、という感じでした。だから今回、石井監督から直接オファーをいただいたときは、本当に嬉しくて。しかもこれほど短いスパンで実現するなんて、夢のようでした。ただ主演の若手2人だけじゃなく、僕も本当にいっぱいいっぱいで、悩みまくって現場で何とか調整しながら演じていました。余裕なんて全くなかったですね。

Q 氷室役は難しかったですか? イタいところもある人間味のあるイケメン役でした。

岩田
挫折してもプライドだけ無駄に高く、つい虚勢を張ってしまう。そんなリアルなキャラクターだったので難しかったですね。石井監督からは「とにかく肩甲骨を動かして、氷室は肩甲骨だから!」と何度も言われたのですが、「ちょっと待ってください」と(笑)。最初は監督の感覚的な言葉に戸惑いましたが、不思議と演技のなかでだんだんわかるようになってきて、新しい発見に気づいたときは、なんだか嬉しかったですね。俳優としても新たな可能性が拓けたように感じます。

取材・文:坂田正樹 写真:高野広美

映画『町田くんの世界』は6月7日より全国公開

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