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『WALKING MAN』野村周平 単独インタビュー

2019年10月10日 更新

『WALKING MAN』野村周平 単独インタビュー

ラッパーのANARCHYが実体験を盛り込み、初めてメガホンをとった映画『WALKING MAN』で、主演の野村周平が男気をみせた。主演俳優が決まらないという話を聞き、もともと友人だった野村は監督に「僕でよければやりましょうか?」と声を掛けたという。そこからトントン拍子に映画化が実現し、野村は人前で話すことが苦手な青年、アトムを演じた。かねてから好きだったというラップへの思い入れや、本作で挑んだラップバトルの裏側などを明かした。

■友人だった監督に自ら主演を申し出る

■友人だった監督に自ら主演を申し出る

Q 友人である監督のために、野村さんご自身が主演に名乗りを上げられたそうですね。男気ありますね!

そうですか(笑)。ANARCHYさんが映画を作られるということは聞いていて、主演俳優を探していることも知っていたので、本当に何気なく「僕でよければやりましょうか?」と言っただけなんですけどね。

Q その時点では、台本も読んでいなかった!?

ですね。だけど「台本を読まないことには本当にやれるかわからない。だからまず読ませて欲しい」とは伝えました。実際、一気に読んでしまうくらい面白くて。もちろんANARCHYさんの作品だから、ラッパーが成長していく物語だとは思っていたけれど、そうではなくて。人とうまく話せず、人生のどん底にいた青年が、ラップと出会って変わっていく過程がしっかり作られていて。

Q そもそもANARCHY監督とは、どのように知り合ったのでしょう?

友人を介してです。僕もヒップホップが好きだったので、もちろんANARCHYさんのことは知っていましたし。その後、いつの間にか一緒に飲むような仲になっていました。

Q 監督は、野村さんが撮影現場を盛り上げてくれたとおっしゃっていましたが、現場を引っ張る気持ちはいつも以上に強かったのでしょうか。

いえいえ。僕は一俳優なので、監督のために何かするなんて、おこがましいです。もちろん、監督が大変なときには支えたいと思っていました。基本的に楽しい方なので、あくまで楽しくお話をしながら、楽しんで撮影をしたという感じです。

■即興感が肝だったラップバトル

■即興感が肝だったラップバトル

Q アトムは人付き合いが苦手ですが、とても家族思いですよね。

父親がいなくて、貧しくてご飯も満足に食べられないような家庭で育ってきて、挙句の果てに母親が事故に遭って動けなくなってしまう。アトムは妹を学校に行かせるため、一生懸命に働くけれどそれでは足りなくて……。そう考えると、本当に優しい子ですよね。

Q しゃべるのが苦手な姿をとても繊細に演じていらっしゃいました。どのようにアプローチをされましたか?

自分なりに研究しましたが、アトムという役において最も参考になったのは、以前やらせていただいたドラマ「結婚相手は抽選で」(2018・東海テレビ/フジテレビ)です。ドラマでは「内気でモテない潔癖症」というキャラクターで、人とちゃんと話せないということを重視しました。僕の場合、自分とかけ離れた役の方がやりやすいです。

Q そんなアトムがラップを始めてからの変化、特にラップバトルの舞台に上がるシーンは肝ですよね。

フリースタイルのバトルは、本来はその場で、即興で考えるもの。映画では、監督が書いたリリックが存在しているので、その上でどう即興感を出していくのかが肝でした。あのシーンは多くのラッパーに参加していただき、ほとんど一日中、空気の悪いクラブでの撮影だったので苦しかったです。

Q アトムは不用品回収のアルバイトで訪れた、事故で亡くなったラッパー・三角(十影)の部屋で、憧れのスニーカーやラップのカセットテープ、リリックをつづったノートなどを見つけ、故人にシンクロしていく流れも印象的でした。

エアジョーダン1を見つけたアトムは、それを自分のモノにして、初めて悪いことをするのですが、同時に数少ない喜びを表すシーンでもあるんです。その喜びを表現しようとピョンピョン飛び跳ねてみました。アトムにとってあの部屋は、初めて知る楽しさや息抜きが詰まった、まさに“楽園”なんだと思います。

Q アトムが殻を破るまでの過程において、最も思い出深いシーンは?

一番好きなのはラストシーン。クランクアップ日の撮影で、それまでの撮影や物語の蓄積があったので、やっていてすごく気持ちが良かったです。ぜひ注目してください!

■小学校高学年からラップにハマる

■小学校高学年からラップにハマる

Q アトムにとってラップとの出会いは、人生最大と言えるほど大きいですよね。

もちろん。というのもアトムは、誰かと出会ってもそもそもうまくしゃべれないので、人との出会いによって変われる可能性はあまり高くない。でも音楽は本当に自由。何を歌ってもいいし、どんな音を奏でてもいいわけで。本当に大切な出会いって、いつ訪れるかわからないものですよね。

Q 出演に際して、例えばエミネム主演の『8 Mile』(2002)などラップにかかわりのある映画を参考にすることはありましたか。

あの映画は本場すぎだし、カッコよすぎるので、逆に参考にならないです(笑)。僕が小学生のころから観ている“キング・オブ・ヒップホップ映画”ですから! と言いつつ好きすぎて、終盤でアトムがラッパーとして活躍しているシーンだけは、カッコよくいきたいと思っていたので、無意識のうちに参考にしていた気がします。

Q 野村さんご自身がヒップホップにハマったきっかけは?

5歳からスノーボードを始め、そのうちストリートでもスケボーやBMXなどを兄貴と一緒にやっていました。そういうスポーツをやっていると、ごく自然な流れでヒップホップを聴くようになるんです。僕の場合は小学校高学年からヒップホップやソウル、R&Bを聴いていました。音だけ聴いても楽しいし、うまいラップをしている人がいると真似したくなるし、真似するのも楽しい。みんなで盛り上がれるのが、またいいんです。

Q もともとヒップホップ好きな野村さんだからこそ、表現できた部分もあったのでしょうね。

プロの俳優なら、知らなくても勉強すれば出来るとは思いますが、確かに自分がヒップホップ好きで良かったな、と現場で思った瞬間もありました。中には細かい動きなど、勉強しても学べないものもあるので。またANARCHYさんも僕だからこそ言いたいことを言えたんじゃないかな、とも思います。

Q ANARCHY監督だからこそ、撮り得た作品でもあると感じたりもしますか?

リリックはもちろん、亡くなったラッパーの三角が持っていた歌詞を書き込んだ小道具のノートも、監督が全て手書きで書いたものなんです。三角の部屋の中の小物をはじめ、監督がすごくこだわって作り込んでいました。ラップと出会って変わっていく青年の心情自体、知らないと描き得ないと思うので、その意味では今までにない映画になったと思います。

■ニューヨークに留学中の現在

■ニューヨークに留学中の現在

Q ところで現在、ニューヨークに留学中ですね。

毎日、超個性的な人たちに会うので、それはもう刺激的です。違う国で、違う文化に触れることで自分の感覚も変わってくると感じています。何でもハッキリ発言する、嫌なことは嫌と明確に意思表示できる自由は最高です!

Q 違う文化、違う感覚をもつ人々に、打ち解ける有効な方法はありますか?

スケボーをやっているとスケボー仲間が自然と集まって来るので、趣味があるというのは有効ですね。趣味つながりで人間関係も広がっていく感じがあります。英語はまだ中学生レベルですが、ボディランゲージがあるので生活には全く不自由していません。

Q 仕事のスタンスに対しても変化を感じていますか?

元から仕事に対してはかなり真面目だと思いますが、これまで以上にプロ意識を持って、仕事をちゃんとしようと思うようになっています。これだけ長いお休みをいただいたので、自然と「帰ったらちゃんと仕事します!」という気持ちになりますよね。

取材・文:折田千鶴子 写真:尾鷲陽介

映画『WALKING MAN』は10月11日より全国公開

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