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『殺さない彼と死なない彼女』桜井日奈子 単独インタビュー

2019年11月11日 更新

『殺さない彼と死なない彼女』桜井日奈子 単独インタビュー

2019年の幕開けとともに、映画『任侠学園』やドラマ「ヤヌスの鏡」など、これまでのキラキラしたヒロインイメージを打ち破る新境地に挑んでいる女優・桜井日奈子。SNSを中心に支持される世紀末の四コマ漫画を実写化した映画『殺さない彼と死なない彼女』では、リストカット常習者で風変わりだが、心優しい女子高校生・鹿野ななを絶妙なアプローチで演じている。そんな進境著しい桜井が本作に込めた思いとともに、デビュー当時の苦悩とジレンマ、将来に向けた「目標ノート」の存在について語った。

■四コマ漫画をどうやって映像化するんだろう?

■四コマ漫画をどうやって映像化するんだろう?

Q 原作を読んだ感想を教えてください。

お話をもらってから原作を読ませていただいたのですが、もう一気読みでした。号泣するほど心を動かされました。

Q これまでの桜井さんのイメージとは違う役どころです。

主人公の一人を演じさせていただけることは光栄だったのですが、その反面、コミカルで可愛いやり取りなど、四コマ漫画で展開する物語を映像にして、そのなかで自分が動いてみたときに、その面白さって伝わるのかな? と最初は不安でした。

Q 脚本を読んだ印象はどうでしたか?

原作では、私が演じる鹿野と間宮(祥太朗)さんが演じる小坂れい、ほかにも個性豊かなたくさんのキャラクターが出てきて、各々のストーリーが描かれていたので「どうやって映画にするんだろう?」って思っていたんですが、脚本を読むと、それぞれのエピソードが一つの物語にまとめ上げられていて、しかも鹿野と小坂の出会いに、ちゃんと意味があったことがわかるようになっている。脚本を手掛けた小林(啓一)監督って、すごい方だなって思いました。

■暴力的な言葉の奥に、愛と優しさがある

■暴力的な言葉の奥に、愛と優しさがある

Q 「死にたい」が口癖の鹿野をどう捉えて、演じたのでしょうか?

泣きたいときは泣いて、笑いたいときは思いっきり笑う。鹿野には本能的というか、動物的なところがあって、そこがキュートだなと思いました。ただ、観ている方に「ちょっと引くなぁ……」と思われずに、「鹿野らしい」と思っていただける“絶妙なライン”を見つけるために、小林監督と常にディスカッションしながら探っていました。

Q 共感するポイントはありましたか?

かなりユニークなキャラクターなので難しいところもありましたが、ちゃんと寄り添える部分がありました。例えば、鹿野はいつも「死にたい」と口にしながらも、実際には決してそうではない。リストカットもしちゃうけれど、ほかの誰かが死んだり傷ついたりすると、心から悲しむ優しさがある。実はすごく寂しがり屋で、その“寂しい”という気持ちをストレートに表現できないのが鹿野なのかな、と。そこは私にも通じるところなので、すごく共感しました。

Q 「殺す」「死ね」が口癖の冷めた小坂との関係性も面白かったです。

仲良くなるきっかけが蜂を埋葬すること、という時点で面白いですよね(笑)。鹿野が(死んだ)蜂のお墓を作るために必死に穴を掘っている姿を見たら、普通は「変なやつ」と感じると思うんですが、小坂は逆に「面白そうなやつだな」と興味を抱いてくれる。どんな鹿野でも受け入れてくれる許容力があるから、あの関係性が築けるし、ほかの誰かが入り込む余地がない。二人だけの世界というのがあって、シーンを重ねていくうちに、自然と距離が縮まっていく感じがありました。

Q 距離が縮まるにつれて、「殺す」が「好きだよ」に聞こえてくるから不思議です。

まさにそうなんですよね。小坂の言葉は暴力的だけれど、その奥に愛があるし、優しさがある。ここが映画のポイントだと思っていたので、観ていただく方に伝わってくれたら嬉しいです。

■どのキャラクターも魅力的で刺激になった

■どのキャラクターも魅力的で刺激になった

Q ジミな地味子(恒松祐里)、愛されたいきゃぴ子(堀田真由)、告白が日課の撫子(箭内夢菜)など、同世代の女優さんが個性的なキャラクターを生き生きと演じていました。

シーンとしては、間宮さんとの絡みが多かったので、完成した作品を観たときに、初めてみんながどんなふうに演じているのかを知りました。どのキャラクターもすごく魅力的で面白かったので、大いに刺激になりました。

Q 特に気になったキャラクターは?

みんな気になりますが、撫子が地味子の弟・八千代(ゆうたろう)に告白するシーンがあって、いろんなパターンの「好き」を並べていくシーンがあるのですが、あれを観た人はみんな彼女のことを大好きになると思います。「ずるい!」って思うくらい可愛かったです(笑)。きゃぴ子も愛されたがりのキャラで、とても難しかったと思うのですが、「彼女の気持ちがわかる!」というところまで着地させているところがすごい。私だったら、こうは演じられなかったと思います。

Q 撮影現場で、みなさんとお会いする機会はありましたか?

実はなかったんです。だから公開初日を迎えるまでに、顔を合わせる機会が増えると思いますので、みなさんにいろいろお話が聞けたらいいなと思っています。

■やりたいことを「目標ノート」に書いています

■やりたいことを「目標ノート」に書いています

Q 悲しみを乗り越えて、それでも生きていく、といった深いテーマがベースにあると思います。桜井さん自身、何かの「壁」を乗り越えた経験はありますか?

高校2年生のときに女優として事務所に所属して、ありがたいことに、自分でもあれよ、あれよという間にいいお話をいただいて。芸能界のことも演技のことも何もわからないまま、デビューさせていただいたような気持ちなのですが……。ただ反面、自分のことをよくわからないまま表舞台に出ちゃったことは、本当に無謀なところもあったのかな、と。当時は勢いだけでいけたけれど、今の自分だったら怖さが先に立ってしまったと思います。だからこそ、改めて思うのが、信頼できるスタッフの存在のありがたさ。迷っているときはきちんとアドバイスしていただき、ときには厳しい意見も言っていただけるので、なんとかここまでがんばって来られたのかなと思っています。

Q 現在、桜井さんは大学生で、学業との両立も大変かと思います。

そうなんです。女優業との両立がなかなかうまくいかなくて四苦八苦していますが、これも「壁」なのかもしれませんが、なんとか乗り越えていきたいと思っています。

Q これまでは青春映画やCMなどで、キラキラした桜井さんが印象的でしたが、今年に入って『任侠学園』「ヤヌスの鏡」など、かなり挑戦的な役に変わってきたような印象があります。何か心境の変化はありますか?

一つの作品をやり終えると、必ず「もっとこういう役に挑戦してみたい」「こういう作品に出てみたい」という欲が出てきて、それがいくつも溜まっている状態で、ノートに書き溜めているんです。ちょっと内容は恥ずかしくて言えないですが……(笑)。

Q そのノートはなんと呼んでいるんですか?

うーん……しいて言えば「目標ノート」でしょうか。以前は紙に書いて壁に貼っていたのですが、友達が来ると恥ずかしくて、バーッと取っちゃうので、ノートに変えました(笑)。

Q 何を書いたか、一つだけ教えてください。

えー! 困ったなぁ(笑)。でも、アクション映画をいつかやってみたいですね。私の憧れでもあったので。まったく経験値がないのですが、バスケットボールを13年やってきた体力には自信があるので、ぜひ挑戦したいと思っています。

Q アクション映画とは意外でした。

あとは、今の私じゃないとできない役もあれば、もっと先でないとできないものもある。特に数年先、歳を経てから演じられる役が楽しみですね。もっとディープで人間くさい役にも挑戦したいです。

取材・文:坂田正樹 写真:高野広美

映画『殺さない彼と死なない彼女』は11月15日より全国公開

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