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『甘いお酒でうがい』松雪泰子 単独インタビュー

2020年4月6日 更新

『甘いお酒でうがい』松雪泰子 単独インタビュー

お笑い芸人シソンヌ・じろうが、ネタとして長年演じてきたキャラクター“川嶋佳子”。彼女がもし日記を書いたら……と描かれた同名小説を映画化した。何気ない日常をつづっていく517日の物語の中に、小さな喜びを見いだしていく佳子を演じたのは松雪泰子。近年はNHKの朝ドラ「半分、青い。」をはじめ母親役も多いが、本作では40代独身女性の孤独や悲哀をまといながらも、前向きに生きるヒロインに挑んだ。ちょうど世代的にも重なる松雪はどう取り組んだのか。女性にとっての40代という年代についての思いも語った。

■脚本を読んだときの衝撃

■脚本を読んだときの衝撃

Q 率直にキャスティングされたときの気持ちはどうでしたか?

まず、大九(明子)監督からお声を掛けていただいたことが素直にうれしかったです。『勝手にふるえてろ』など素敵な作品ばかりなので。それから、脚本を読ませていただいたときが衝撃的でした。すごく詩的で淡々としているのですが、脚本の世界に知らず知らずのうちに引き込まれていく感覚があって。これが映画になったら、この心地よさが増して、映画はもっと豊かなものになるんだろうなと想像ができたんです。

Q 脚本に強く惹かれたんですね。

そうですね。説明的じゃない作品というのは、演じ手の我々もそうですが、一番は、観ていただいている観客の方たちの想像力をいろんな方向に膨らませて、楽しんでいただくことができる。そういうものが私自身、好きなので。そういう意味では、この脚本に出会ったときにすごく感動して、ぜひやらせていただきたいと思いました。

Q 原作者で脚本も担当したシソンヌ・じろうさんはご存じだったんですか?

ええ。キャラクター(=川嶋佳子)もふんわりと知っている感じで。脚本を読ませていただいてから、じろうさんの原作を読ませていただいたんですけど、じろうさんの紡ぐ言葉がとても素敵で、本当に優しくて。その後YouTubeで、じろうさん扮する川嶋佳子さんを見たら、全然違ってて(笑)。それはそれで、面白かったです。

■“40代女性あるある”に涙

■“40代女性あるある”に涙

Q 佳子というキャラクターに、どうアプローチしていったのでしょう?

佳子さんって、すごく多面性がある女性だと思うんです。独特のユーモアと視点がありつつ、物を大切にする気持ちや優しい気持ちがあったり。しっかり立っているようで立ってなくて、何だかふわふわグラグラして流されたり、それに抗ってみたり。だけど、すごく独自の世界を持っているんです。そこが彼女の強さだったりするのかなと思います。でも、人って日常、誰かと話しているときに、相手にそれを見せないし、相手にはわからない世界というものを絶対に持っている。それってすごくシークレットなものだったりすると思うんです。でも佳子さんの場合はモノローグにして表現しているから、映画を観ていると、彼女のシークレットな部分を覗き見しているような体験ができるんです。そこがこの作品の魅力で面白さだと思います。

Q 佳子に共感する部分は?

ありました。私も結構、物に話しかけるタイプで(笑)。佳子さんが古くなったけど愛着のある物を捨てられなくて泣き出したくなるところとか、とてもかわいらしくて。“40代女性あるある”みたいなところを考えられるシソンヌ・じろうさんって、ますますどんな人なのかしらって思いました(笑)。

Q 大九監督とは、“女性あるある”のような話はされたのでしょうか?

ええ。「子供を産む、産まない」の選択についてなど話しましたね。あるシーンで「もう産めなくなる年齢に差し掛かるときに湧き起こる感情」ということを描いているのですが、そこで監督も私も泣いてしまいました。佳子さんは独り身で、ひょっとしたらもうそういう時間には出会えないのかもという設定。私自身は子供がいますけど、それでもあと何年かしたら50歳になるので、思いを巡らせると、何とも言えない気持ちになります。

■二回り年下の設定にドキドキ

■二回り年下の設定にドキドキ

Q 同僚・若林ちゃん役の黒木華さんとは、過去に舞台で共演されていますが、映画の現場ではいかがでしたか?

本当に天使みたいな若林ちゃんを華ちゃんがやってくれて、若林ちゃんに助けられる佳子さんと同様に私自身、癒やされていました。華ちゃんとは、舞台「るつぼ」で共演して、その後「ハムレット」でも一緒になって。やっぱり舞台だと一緒にお芝居を作った感があって、戦友みたいな感覚にもなるんです。華ちゃんはとても素敵で、とにかく強くて、芝居に対して真摯(しんし)。芝居を愛している華ちゃんのスタンスは、かっこいいし、リスペクトしています。そんな彼女とだから、やっていて楽しかったです。

Q 二回り年下の岡本くん役の清水尋也さんとは、初共演ですよね。

ええ。でも、彼も自分の世界観を持っている役者さんで、一緒にお仕事して楽しかったですね。それこそ、彼と華ちゃんと私の3人のコラボレーションが楽しくて、現場でもいいムードでやれたと思います。

Q そんな清水さん演じる岡本くんと、劇中いい感じになりますね。二回り年下の彼って、実際にはアリですか?

最初に二回りって聞いたときは、大丈夫かなとちょっと思っちゃってドキドキしました。実際だったら、夢のようですね(笑)。

■日課は瞑想

■日課は瞑想

Q 佳子さんは毎日日記をつけていますが、松雪さんは日課のようなものはありますか?

瞑想を必ずやります、もう20代の頃から。始めたのは、呼吸を深くしたいと思ったのがきっかけですね。忙しくしていると、気が上がっていっちゃって、呼吸が浅くなったりしがちなので。瞑想をすることで、できるだけ心を穏やかにして、気を下に落としていく。瞑想したり、内省したりとか。ある意味、佳子さんみたいに私も自分のことを確認しているタイプかもしれません。

Q 松雪さんにとって40代という年代は?

いろんなことを一通り終えて、要らないものを手放せるようになって、今が一番フラットに充実している感覚というか。いろんな物事がよく見えるし、楽しい時間になっているんだなと感じています。

Q この作品のどんなところが好きですか?

日常の中に、いろんな気づきが散りばめられていて、それによって佳子さんはどんどん自分自身を見つめ直して、自分の足元を確かめて、軌道修正していく。その気づきをどれだけキャッチできるかということが、自分の人生に変化をもたらすのかなと思います。佳子さんはあっち行ったりこっち行ったり、ちょっとブレたりしながらも前に進んで行く。その姿に温かな勇気をもらえる気がして、一番好きです。この映画が、ちょっとだけ穏やかな気持ちになれるような時間を作ることにつながれば、とてもうれしいです。

取材・文:前田かおり 写真:高野広美

映画『甘いお酒でうがい』は近日公開

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