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『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』綾野剛&北川景子 単独インタビュー

2020年11月12日 更新

『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』綾野剛&北川景子 単独インタビュー

「さよならドビュッシー」などで知られる“どんでん返しの帝王”中山七里の小説を綾野剛&北川景子共演で映画化。型破りな直感型の刑事・犬養隼人(綾野)と、犬養と長年コンビを組んでいる冷静沈着な女性刑事・高千穂明日香(北川)が、“安楽死” を手口にする猟奇的な連続殺人犯“ドクター・デス”に立ち向かう。禁断の題材に触れる緊張感をかみしめながら、「最高のバディ映画にしたかった」と口を揃える綾野と北川が、本作に懸ける思いを語った。

■だからこそ、やる意味がある

■だからこそ、やる意味がある

Q “安楽死”という難しい題材をはらんだ作品ですが、まず脚本を読んでどんなことを感じましたか?

綾野剛(以下、綾野)
脚本を読んだ段階では、なかなか覚悟が決まらない自分がどこかに存在し、このまま撮影に入るのは危険だと思いました。なぜなら、“安楽死”というものに対して確固たる定義がなく、日本では法律上犯罪になるという中で、警察としての正義、人間としての大義が、映画を通してどう描くべきなのかが見えませんでした。言ってみれば、この犯罪は被害者なき殺人であり、人によってはまばゆいほどの光だったりする。そこに“闇”があると思い込むのもまた闇。僕としては、とうとう禁断の題材に触れてしまったという思いでいっぱいでした。でも、だからこそ、やる意味があると思いました。
北川景子(以下、北川)
明らかにわかりやすい悪者がいて、それを警察が捕まえて「めでたし、めでたし」という話ではないので、これは難しい作品になるなと思いました。安楽死は日本では犯罪とされているので、当然、犯人を捕まえなければならないという義務感はあるのですが、被害者が「あの悪者を捕まえてください!」と言っているわけではなく、逆に犯人に感謝さえしている。そういった状況の中で、わたしが演じる高千穂は、何かモヤモヤしたものを抱えながら捜査を続けていくわけですが、「自分の仕事って何なんだろう?」というジレンマに悩む姿をどう表現すればいいのか。描き方を失敗するとその思いが伝わらないので、そこはプレッシャーに感じましたね。

■被害者なき殺人という難題に挑む覚悟

■被害者なき殺人という難題に挑む覚悟

Q 最終的にこの作品に挑戦してみようと思った決め手は何だったのでしょう。

綾野
プロデューサーの伊藤響さんとは、以前、「フランケンシュタインの恋」というドラマでご一緒し、そのあとも親交があったのですが、ひとえに伊藤プロデューサーの熱意ですね。難題をテーマにしたこの作品に対する思いが強く、(製作総指揮の)鈴木光さん、深川栄洋監督たちとともに、諦めることなく走り続ける姿が、白黒だった企画をどんどん色付けしていき、脚本に命を吹き込んでくれました。あとは、僕たち俳優部が「映画にする」ことだけに集中し、現場で生き抜くだけだと。
北川
わたしも、綾野さんをはじめ、キャスト、スタッフともにすごく信頼できる座組だったので、挑戦してみようと思いました。脚本から映像にしていくなかで、きっと深いものになっていくという期待感がありましたね。あとは、作品との向き合い方が見えてきたこと。やはり一番大切なのは、綾野さん演じる犬養と高千穂のバディ感なんですよね。凸凹だけれど、二人が合わさった時にものすごい力を発揮して難題に挑む姿が痛快だし、クライムサスペンスとしての面白さもあるので、そういったところを重視したいなと。「安楽死をテーマにした作品」というふうにくくってしまうのではなく、もし違った事件だとしても、二人の活躍が存分に楽しめるエンターテインメント作品になればいいなと思いました。

■死生観を考えさせる“ドクター・デス”の存在

■死生観を考えさせる“ドクター・デス”の存在

Q 重病の娘を持つ熱血刑事・犬養と、それを見守りながら捜査をサポートする冷静沈着な女性刑事・高千穂。それぞれの役づくりについて聞かせてください。

綾野
犬養は、重い腎臓病を患う一人娘を育てながら現場で戦う刑事で、相棒の高千穂のサポートを受けて、何とか父と娘の関係性を保っています。死と隣り合わせの娘、そしてそこに忍び寄る安楽死の事件……犬養は、それまで真正面から受け止められなかった命との関係をドクター・デスという存在を通して直視させられる。そこで“死生観”というものをすごく考えさせられるんですね。だからこそ、捜査に異常なくらい執念を燃やすわけですが、その一方で、私情が絡むことで判断が遅れたり、熱くなりすぎて勢いが違う方向に行ってしまったりする危険性をはらんでいる。できることなら「自分の臓器を娘に提供したい」と思っている犬養は、つねに死を意識しながら無力であると自覚し、生きている人間ですが、そんな彼が、死の采配を下す人間と向き合わなければならない、というところもすごく興味深かったです。
北川
高千穂の場合、犬養とは違って家族関係が脚本にほとんど描かれてはいないので、私情や自分のバックグラウンドをあまり事件に持ち込まない冷静さを持っている人、というふうに捉えています。本作では、重病の娘さんを持ち、つねに命や死と向き合っている犬養に安楽死の事件が降りかかり、いつもより過敏だったり、冷静さを欠いたりするので、そこをどのようになだめ、逆に導けばいいのか、犬養をよく観察し、考えながら行動する頭脳派のバディとして演じました。刑事としての犬養の中に、父親としての犬養が入ってきてしまう瞬間が何度もあるので、それをパッと止められる状況判断の良さや肉体的な強さもポイントですね。犬養が殴りかかってくるシーンもあったので、結構アクションも大変でした(笑)。

Q 犬養刑事が高千穂刑事のみぞおちを殴るシーンは衝撃が走りました。

北川
わたしは全然大丈夫でしたよ(笑)。
綾野
本当に殴ってはいないですよ(笑)。でも、景子ちゃん、受けがめちゃくちゃ自然なので、実際に当たっている感じがするんですよね。

■「もう一度観たい」と言われるバディになりたい

■「もう一度観たい」と言われるバディになりたい

Q 『パンク侍、斬られて候』以来、2度目の共演となりましたが、バディを演じてみて、お互いの印象はいかがでしたか?

綾野
やっぱり安心感があります。今回の撮影も何の不安もなかったです。地に足がついている方だし、どの作品に対しても思いが強く、今日までずっと女優として確立された状態で立ち続けてきたことに敬意があるんです。でも、普段は「ワァー!」と言って手を振ってくれたり、笑顔を向けてくれたり、自然体で接してくれるので、本当にチャーミングで素敵な人です。
北川
綾野さんって、思い付きでいろんなことをお芝居に取り入れたりするんですよね。まるで好奇心旺盛な子供のような一面があるなって、今回初めて気が付きました。そんな綾野さんを後輩ながら微笑ましく見守ってきた去年の夏がちょっと懐かしいです。すごく暑かったですけどね(笑)。

Q お二人のバディ感も息が合っていて最高でしたね。

北川
もしも続編ができて、全く違う事件があっても、「このコンビを観たい!」と思ってもらえるバディにまずなれるかどうか。そこはすごく重要だなと思って演じていたので、そう言っていただけるとうれしいです。お客様にもわたしたちの凸凹コンビぶりをぜひ楽しんでいただきたいですね。
綾野
同感です。景子ちゃんが演じる高千穂とバディであることでエンジンがかかるというか、二人でこの映画を引っ張っていくんだという思いが、より一層強くなりました。エンターテインメント作品として存分に楽しんでいただけるものに仕上がったので、ハラハラドキドキしながらたくさんの人に観ていただきたいです。
物語を動かす綾野と北川の、時にぶつかり合い、時に共鳴し合うコンビネーションが実に面白く、作品を極上のエンターテインメントへと昇華させている。熱すぎて方向を見失う犬養刑事と、酔うと人が変わる高千穂刑事の、何とも人間味あふれるキャラクターは、新たなシリーズ化も期待させる。二人の阿吽(あうん)の呼吸こそ、本作のストロングポイントだ。

取材・文:坂田正樹 写真:尾鷲陽介

映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』は11月13日より全国公開

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