ここから本文です

『サイレント・トーキョー』佐藤浩市&石田ゆり子&西島秀俊 単独インタビュー

2020年12月3日 更新

『サイレント・トーキョー』佐藤浩市&石田ゆり子&西島秀俊 単独インタビュー

ジョン・レノン&オノ・ヨーコの名曲「Happy Xmas(War is Over)」にインスパイアされた秦建日子の小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫)を、『SP』シリーズの波多野貴文監督が映画化。クリスマスイブの東京を襲った連続テロ爆破事件を描く本作で、物語の行方を握る登場人物を演じた佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊が、本作の見どころや予期せぬ出来事に見舞われた2020年について語り合った。

■どんな映画になるのか想像できなかった

■どんな映画になるのか想像できなかった

Q 原作は『アンフェア』シリーズで知られる作家、秦建日子さんの小説です。脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?

佐藤浩市(以下、佐藤)
この原作は、作者である秦さん自らの脚本と演出によって舞台化もされていて。僕はその戯曲を読んでいたので、映画版の脚本では、フォーカスのし方がだいぶ変わったなぁと。やっぱり映画ならではのスピード感を重視したんだなと思いましたね。
石田ゆり子(以下、石田)
正直なところ、脚本を読んだときは、本当に映像化できるのかな? と思ってしまいました(笑)。渋谷のシーンもそうですがとにかくスケールが壮大ですし、登場人物たちの視点で物語が展開されるということもあって、映像化するのが難しそうだなと思いました。
西島秀俊(以下、西島)
僕も本当に映像化するのがすごく難しい作品だなと思いました。一体どういう撮影現場になるのか想像がつかなかったので、撮影に入るのが楽しみでした。

Q ネタバレ厳禁の作品ですが、ストーリーについての感想は?

佐藤
テロの脅威を描いてはいるんだけど、結局、登場人物が起こすアクションというのは、テロリズムじゃなくて“情念”なんだよなと思いました。
石田
わたしはそういう部分については、今まで考えたことがないなと思ったんですよね。クライムサスペンスなのですが、テロの脅威について考えさせられる部分と紐づいて心理サスペンスのような要素があって。伏線がたくさんあってネタバレにつながりそうなので、うまく言葉にするのが難しいです(笑)。とにかく観客の皆さんには99分間スクリーンから目を離さずに観て頂きたいと思いました。
西島
この映画の中には、爆破テロの予告があったにもかかわらず、渋谷に出かける人たちが出てきますが、僕もまさに彼らと同じように危機感が薄いところがある人間だと思っています。特に撮影当時(2019年10月~2020年1月)は平和な日本にいると、世界で起こっている戦争の怖さがあまり実感できない、と思っていて。それが、映画が公開される今、テロではないですが、コロナ禍によって日本そして世界中が危機的状況になってしまった。撮影していた時よりも、映画の根底にひかれたメッセージを自分事として感じられるなと思いました。

■登場人物それぞれの視点が観客を翻弄する

■登場人物それぞれの視点が観客を翻弄する

Q 佐藤さんが主人公である連続爆破テロ事件の容疑者・朝比奈仁を演じる上で難しかった部分は?

佐藤
群像劇なので、出演シーンのボリューム感として「おいおい、これで、主役でいいのかよ?」っていうのは悩みましたね(笑)。少ない出番の中で、おこがましい言い方だけど、それなりの存在感を形にしなきゃいけないなと思いました。あとは、僕は意外にいろいろ細かいんで(笑)、シーンごとのセリフの言い回し、一つ一つを監督と話し合いながら、撮影現場でもニュアンスを細かく確認、変更し朝比奈仁という人物を作っていきました。

Q 最初の事件現場に居合わせた主婦・山口アイコを演じた石田さんはいかがでしたか?

石田
映画では描かれませんが、この作品の登場人物はそれぞれに事情を抱えているんです。それをどこまで表現したらいいのかなと。「本当に難しいな」と撮影中も思っていましたが、とにかく監督を信じて演じました。

Q 一連の事件を追う刑事・世田志乃夫を演じた西島さんが、役づくりで大切にしたところは?

西島
実際に撮影を行ったのは刑事として捜査しているパートだけだったのですが、実は脚本の準備稿の段階では、世田の過去のエピソードが具体的に書かれていました。映画の中で語られることはないのですが、世田の過去を想像して頂くような場面が所々に入るので、その撮影の時に準備稿に描かれていたエピソードがすごく助けになりました。あとは“観客の皆さんと同じ目線で事件を追っていく”世田の役割を意識して演じました。

■渋谷の爆破テロのシーンは空前の迫力

■渋谷の爆破テロのシーンは空前の迫力

Q 本作ではテロのシーンを撮るため、栃木県足利市に3億円ほどかけて渋谷のスクランブル交差点の巨大オープンセットを建設しました。撮影現場はどんな感じでしたか?

西島
あの渋谷の大混乱のシーンを撮影するために連日多くの方々にエキストラ参加して頂きました。1,200人ものエキストラの方たちが集まる日もあって。長時間のかなり過酷な撮影だったんですけど、キャストもスタッフも、エキストラの皆さんもすごく集中している空気を感じながら演じることができました。現場の一体感も高く、その甲斐あって本当に大事なシーンを完成させることができました。

Q 爆破が起こった瞬間の、群衆一人一人の描写が衝撃的でした。

西島
ハイスピードカメラで撮っていて、出来上がった映像では、皆がスローモーションで動いているのですが、実際の撮影は一瞬。タイミングを合わせるのも難しかったですし、全員がちゃんとプラン通りに演技をしないと、起きたことのすさまじさが伝わる画が撮れない。僕も参加した一員として貴重な体験をしたと思っています。

Q 佐藤さんと石田さんは、完成したシーンをご覧になっていかがでしたか?

佐藤
その足利市のオープンセットを僕らは見ていないのですが、その再現度には本当に驚きましたね。ここが実際の渋谷でないとは誰も思わない。そして、我々からみてもこの場面の演技は大変だと思うんですよ。西島さんがお話されたように、真剣に取り組んでくれたエキストラの皆さんに対する感謝の気持ちでいっぱいです。
石田
あのシーンはこの映画の肝だなと思っています。こんなシーン、観たことない! と身震いしましたし、自分も実際に撮影現場に行きたかったなと思いました。どうやって撮影したのか見てみたかったです。

■コロナ禍の中でエンタメ業界に携わる意味

■コロナ禍の中でエンタメ業界に携わる意味

Q 今年はコロナ禍に見舞われ、映画界もかつてない打撃を受けました。現在の心境について、お聞かせください。

佐藤
僕はもう40年もこの仕事をやっている人間なので、自分のことより、スタッフのこと、ましてフリーでやっている若い連中のことが気がかりです。仕事が全部なくなって、田舎に帰った連中も何人もいるし。それは、やっとこれから……という若い役者も同じですよね。それこそ家賃や食費に関わってくることで。だから、飢餓感と忍耐のバランスをうまく取ってくれ……と口で言うのは簡単だけれど。今後、何とかして、いい形を作っていけないかと思います。
西島
撮影がストップしたときに、スタッフ、キャストのこと、本当に身近な人たちが、どうすれば何とか暮らしていけるだろうかということを考えましたね。今の状況はしばらく続くと思うので、現場が一つ成立するか、しないか、ということが、今まで以上に重いというか。現場に関わっている人たちの生活を、より考えざるをえなくなりました。
石田
日常生活に欠かせない仕事、医療や農業……わたしたちはエッセンシャルワーカーではないけれど、映画やドラマを観て元気になって頂ける人がいるということを信じて、いい作品を作り続けるということがエンタメ業界で働くみんなの想いだと思います。
佐藤
そうですね。エンタメって、人によっては生きていくために必要ないかもしれないけど、勇気を与えることがある。希望を与えてくれることもある。それを信じて、僕らは演じていくしかないからね。
クリスマスイブの日本に突如起きた連続爆破テロ。本作で描かれる、当たり前だと思っていた日常が崩壊するさまは、今や絵空事ではない。予期せぬ出来事が起こったとき、人はどう対処し、何を見出していくのか。今年俳優業40周年を迎えた佐藤浩市をはじめ、石田ゆり子、西島秀俊と、ベテラン3人の渾身の演技が、このジェットコースタームービーに、観る者が思わず現実を重ね合わせてしまう深みと余韻を与えている。
(C) 2020 Silent Tokyo Film Partners

取材・文:石塚圭子 写真:上野裕二

映画『サイレント・トーキョー』は12月4日より全国公開

本文はここま>
でです このページの先頭へ