
山崎賢人(「崎」は「たつさき」)が、麻生羽呂の人気漫画を実写化したNetflixのオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」(全8話)で、土屋太鳳とともにダブル主演を務める。廃墟と化した渋谷を舞台に、山崎演じる落ちこぼれの有栖(アリス)、土屋演じる驚異の身体能力を誇るクライマー・宇佐木(ウサギ)らが命を懸けた壮絶な“げぇむ”に挑むサバイバルアクションだ。メガホンを取るのは、続編製作も決定した映画『キングダム』で山崎と苦楽をともにした佐藤信介監督。強力タッグで配信ドラマに風穴を開ける。
■世界同時配信というスケールにワクワク!

Q
麻生羽呂さんの人気コミックを実写化するにあたり、期待や不安、プレッシャーなどありましたか?
- “生”と“死”をテーマにした漫画は、これまでにもたくさん実写化されてきましたが、ここまでシンプルに“生きる”ということを考えさせられる、あるいは訴えかけてくる作品はなかったので、とても衝撃的でした。そして、『キングダム』でお世話になった佐藤信介監督と、4年ぶり(撮影当時)の共演となる太鳳ちゃんと一緒に、全8話、5か月という長期間をかけてこの作品の撮影に挑めるということがすごくうれしかったです。なので、不安より期待の方が大きかったです。
Q
世界同時配信ということでも気合いが入ったのでは?
- Netflixは普段からすごくよく観ていて、僕にとっても身近なコンテンツだったので、単純に「オリジナルシリーズに出演できる!」ということにワクワクしました。やはり、日本で映画やドラマを作っても、全世界に同時配信するなんてことはなかなかないので、どの国の方も一斉に観ることができるって、すごいことだなと思いました。あとは、惜しむことなく予算をかけて、絶対に妥協しない、という制作に対する姿勢もすばらしいなと思いました。
Q
撮影現場に入って、やはりスケールの大きさを感じましたか?
- セットもロケも、全てにおいてスケールが大きかったですね。例えば、もぬけの殻となった渋谷の街のセットだったり、巨大な水槽のセットだったり、結構、現実離れしたセットが多かったのですが、現場に行くと「本当にこういう“げぇむ”が行われているんだ!」と妙に納得してしまうくらい説得力のあるセットだったので、気持ちも高揚しました。そこは演じるうえですごく助かりました。
Q
本当に命懸けの“げぇむ”に参加している気持ちを味わったような感覚でしょうか?
- そうですね。確かにそういう瞬間もありましたが、アリスとして「あと何分で死ぬかもしれない!」という本気で切羽詰まった感情を作っていくのは、結構大変だったので、そこは佐藤監督と話し合いながら進めていきました。第1話は特に、漫画にはないオリジナルの“げぇむ”だったので、一緒に楽しみながら作り込んでいけたような気がします。
■『キングダム』佐藤監督と世界に挑む喜び

Q
『キングダム』の続編も決まりましたが、佐藤監督との新たなフィールドでのタッグはいかがでしたか?
- 『キングダム』は自分にとっても思い入れのある作品ですし、過酷な撮影を一緒に乗り越えてきた佐藤監督と、今度は世界に向けた作品でご一緒できるということで、すごく運命を感じています。今回もそうですが、佐藤監督って、ハードなサバイバルアクションのイメージがあると思いますが、ご本人はすごく優しい人柄なので、現場は意外と柔らかい雰囲気に包まれているんです。いい意味で役者に任せてくれている部分があるというか、ここは重要なシーンだからといって怒鳴り散らしたりはしないんですね(笑)。特に本作は、ドラマの中とはいえ、常に生死について考える役なので、息抜きができる環境も考えてくださる佐藤監督のスタンスは、本当にありがたかったです。
Q
落ちこぼれだったアリスが、サバイバルを経験しながら、どんどん成長して行きますが、山崎さんはこの役とどう向き合って演じたのでしょう。
- 自分がアリスと同じ状況に陥ったら、“死”に対しての恐怖とか、“生”に対しての欲望がどんな感じで出てくるのか、ということをすごく考えました。今まで支えてくれた友達を裏切りたくない、でも生きたい、という葛藤がすごくリアルで、人間っぽくて……。そして、ある衝撃的な出来事をきっかけに初めて「自分は生かされていたんだ」と気づきどん底まで落ちますが、ウサギ(土屋)が自分にもう1度、生きる活力を与えてくれる。「もう2度と同じ過ちを繰り返さない」と心に誓うとともに、「“げぇむ”を作った人間を倒す」という明確な目標がそこで生まれるんですよね。「やれるところまでやる」という決意がアリスの成長につながる部分かもしれません。
■アクションで最も難しい“受け”の演技を学習

Q
アクションの撮影で印象に残っているシーンはありますか?
- “げぇむ”に参加しているアグニ(青柳翔)というキャラクターがいるんですが、彼に殴られ続けるところ、ですかね。ずっと受けて、受けて、また受けて、という感じのシーンを何日間もかけて撮っていたので、そこがすごく印象に残っています。アクションの中でも“受け”というところが一番難しいと言われていますが、今回はそこが僕にとっては新しい経験になりました。
Q
土屋さんのアクションもキレキレでしたね。
- 太鳳ちゃんは動けるし、アクションが得意だっていうことはもともと知っていたので、ウサギ役に彼女が決まったと聞いた時は「ピッタリだな」と思いました。第1話で、毅然とした表情で街を見下ろしている立ち姿だけ観てもカッコ良かったですし、マンションでの「おにごっこ」やトンネルを激走するシーンでは、太鳳ちゃんの身体能力の高さがすごく出ていますよね。
■もっともっと力をつけて世界の舞台へ!

Q
世界配信のドラマに出演したことで、俳優として新たな意欲みたいなものは生まれましたか?
- エンターテインメントに国の境界線は関係ないと思うので、単純にこれだけ楽しい作品を世界中の方々に観ていただけることはすごくうれしいし、ワクワクします。僕自身も、普段、Netflixのドラマや映画はたくさん観ていますが、ぜひチャンスがあれば、もっともっとパワーをつけて、この世界に飛び込んでいけたらと思いますが……まだまだこれからですね。
Q
最近、ハマった作品はありますか?
- いろいろありますが、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」は間違いないです! あ、でもこれに関しては出たいというより、観たい派です。この先どうなっていくのか、すごく気になるので(笑)。
Q
コロナ禍で、Netflixのような動画配信は、ある意味、人々の心の支えにもなっていると思います。本作は特に“命”がテーマになっており、山崎さんも届けたいメッセージがあるでしょうか?
- こういう時代だからこそ、映画やドラマなど、エンターテインメントって大事だなと、改めて気づかされましたね。特にこの作品は、登場するキャラクターそれぞれに人生があって、「生きること」「命の尊さ」について考えさせられるところはあります。ですがその一方で、謎解きの部分もありますので、そこは、時間を忘れて、ハラハラ、ドキドキ、楽しんでいただければと思います。

取材・文:坂田正樹 写真:日吉永遠