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『あのこは貴族』水原希子 単独インタビュー

2021年2月25日 更新

『あのこは貴族』水原希子 単独インタビュー

山内マリコの同名小説を映画化した『あのこは貴族』で、主演の門脇麦と共演を果たした水原希子。都会育ちの箱入り娘で良き伴侶探しにいそしむ華子役の門脇に対し、水原は地方出身で自力で都会を生き抜く美紀という役どころを演じている。全く異なる環境にいる2人の女性が、生きづらさや不安を感じながらも自分らしい人生を切り開こうとする姿を同世代である水原はどう感じたか。彼女ならではの言葉で語った。

■肩の力を抜いて、素直に演じた

■肩の力を抜いて、素直に演じた

Q 『あのこは貴族』の脚本を読んだ感想は?

ちょうどこの映画のお仕事をいただいた頃、私も会社を立ち上げたんです。そんなこともあって、地方出身者で都会で頑張って生き抜こうとする女性というところに、すごく共感できると感じたんです。だから、役づくりうんぬんというよりもありのままの自分で入っていけると感じました。

Q そんなに、美紀という役柄にシンパシーを感じたんですか?

そうですね。私も仕事のために16歳ぐらいで上京したので、大学進学で上京した美紀が東京に対して憧れを持つ感覚や、東京育ちの人間とはどこか仲間外れにされてしまう感覚など、あー、わかる、わかるという感じがしました。また、美紀が実家に帰ったときの雰囲気などもピタッと来るものがあったんです。本当に美紀の行動や思考でわからないというところがありませんでした。いつもだったら、演じるときはとても緊張して、気が抜けないという思いがあるんです。でも、今回は肩の力を抜いて素直に演じることができました。私にとって、ちょうどいいタイミングで回ってきた役じゃないかと思います。

Q 新鋭の岨手由貴子監督との、撮影現場でのやり取りはどうでしたか?

岨手監督は自分が撮りたいヴィジョンがはっきりしている方で安心できて、自分がやりたいことを全部委ねても大丈夫、ぐらいな安心感がありました。見た目はとっても可愛らしい方なんですよ(笑)。もっというと、言葉にするのは難しいけれど、目指している方向が一緒で、何か動物的なつながりを感じた(笑)。だから、対等というか、どこか友達みたいな感覚で、互いに話し合いながらフレキシブルに作っていくこともできたし、実験的にこうしてみようか、ああしてみようかと話したりもしました。それに、たぶん女性同士だから分かり合えるところもあって、繊細な描写を作りこむこともできたと思います。本当に大好きな監督です。

■挫折を乗り越えたからこそ人の痛みがわかる

■挫折を乗り越えたからこそ人の痛みがわかる

Q 美紀は都会で数々の挫折を経験しながら、成長していきます。演じながら、美紀の挫折をどう感じましたか?

挫折みたいなものは、私も結構ガッツリ経験してます(笑)。でも、美紀は頼る人がいないんですよ、両親がいても、全くあてにできない。そこは本当につらいですよね。だから、都会に出てきて夢はあって、そこに向かっているけれど、余裕がないことになる。美紀はそんな中で挫折を乗り越えていくから、人一倍強くなるし、さばけている。それに、人の心の痛みもわかる人間になったのではないかと思います。美紀のパートでは、自分で自分を成長させていくところが見ものだと思います。

Q 門脇麦さん演じる華子の生き方についてはどう思いましたか?

お嬢様育ちであれだけ親にレールを敷かれてしまうと、逆に大変ですよね。実際、自分でいろんなことを決めて生きてきていないから、いざ社会に出るときにどうしたらいいかわからない。あんな環境に生きることは、私だったらとても無理です(笑)。ただ、華子ってすごいですよね。やがて自分の今の生き方はおかしいと感じて、自立しなければと思う。でも、彼女の場合、家族や周りの人など多くの人に頼って生きてきた人生だから、華子が自立を考えた瞬間にいろんな人が傷つくことになる。そこはとてもいたたまれない気持ちになりましたが、それでも自立しようという気持ちを貫く華子はカッコいいなと思いました。

■刺激的な共演者たち

■刺激的な共演者たち

Q 門脇麦さんと本格的に共演するのは初めてですよね。いかがでしたか?

華子ってものすごく難しい役だと思うんですけど、些細な仕草や声のトーンなどで表現して、本物のお嬢様だなと感じさせる。門脇さんはさすがだなと思いました。今回、一緒に演じるシーンは少なかったんです。でも、2人が出会うところは本当に難しくて。ネタバレになるので、ちょっと明かせませんが、セリフのちょっとした言い方で全然ニュアンスが変わってしまうし、成立しなくなってしまうんですよ。そこをどうすればいいか、門脇さんと悩んで話し合って作り上げました。とても刺激的で楽しかったですね。

Q 幸一郎役の高良健吾さんや親友の平田を演じた山下リオさんとは顔なじみとか。

はい。高良くんとはそれこそ『ノルウェイの森』(2010)以来、久しぶりという感じでした。リオちゃんとは前にも共演したことがあって親しいんです。とても天真爛漫な女性で、役でも素のリオちゃんのそのままな感じがよく出ていて、美紀との友情も自然に感じられたのではないかと思います。

■友人が家族のような存在に

■友人が家族のような存在に

Q その山下さん演じる平田と美紀との友情が、美紀のこれからの生き方に大きな意味を持ちますが、彼女たちの友情をどんなものだと思いますか?

家族って近いようでいて、実は距離があったりするじゃないですか。とくに、若い時は友達のほうが心を開くことができたり、より家族みたいな存在になったりすると思うんです。美紀と平田のように多感な高校時代を一緒に経験して、社会に出てから互いに目指すもので共感することができれば、友人というよりも家族のような存在になれる。なかでも終盤、平田との友情の深さを感じられる、とてもいいシーンがあります。私も今、会社をやっていて、誰かとつながっていることや仲間ができることの喜びを感じています。女性の人生を選択していくことの大切さを描いた作品ですが、そこには仲間や友人の存在の大切さもあると感じていただけたらと思います。
自分のこれまで歩んできた人生を振り返りつつ、撮影現場についてざっくばらんに答える。はじけるような笑顔を見せながらも、『ノルウェイの森』で女優デビューした彼女も、もう30代の大人の女性。そんな水原希子の等身大の姿が、本作には刻まれている。

取材・文:前田かおり 写真:尾藤能暢

映画『あのこは貴族』は2月26日より全国公開

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