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『るろうに剣心 最終章 The Beginning』佐藤健 単独インタビュー

2021年6月3日 更新

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』佐藤健 単独インタビュー

和月伸宏の漫画を原作とする佐藤健主演の映画『るろうに剣心』シリーズが、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』でついにフィナーレを迎える。最恐の敵・雪代縁との戦いを描く『The Final』に続き、剣心の頬に刻まれた十字傷の謎が解き明かされる『The Beginning』では、どんなドラマが待っているのか。剣心が自らの手で斬殺した妻・雪代巴と織りなす時間は「まるで夢の中にいるようだった」という佐藤が、本作に込めた並々ならぬ思いとともに、10年にわたり演じ続けた剣心への“愛”を語った。

■剣心が心の中に棲みついている

■剣心が心の中に棲みついている

Q 当初、原作ファンは実写映画化に懐疑的でしたが、プレッシャーをはねのけ、剣心役を自分のものにされました。10年間、演じきった今の心境は?

とにかく、運がよかったと思いますね。このチームじゃなかったら、ここまで成功していなかったと思います。大友(啓史)監督、アクションチームをはじめ、このシリーズに関わった全てのスタッフ、そして共演者の皆さんとの出会いに心から感謝しています。

Q もしも『るろうに剣心』と出会わなかったら、佐藤さんの俳優人生は変わっていたと思いますか?

あまりそういう風に考えたことはありませんが、仮にもし、『るろうに剣心』がなかったら、ぜんぜん違うキャリアになっていたと思います。間違いなく今の僕はいない。実際、パート1が大ヒットしてから、オファーも増え、大きい役がくるようになりましたし。主演のお話をたくさんいただけるようになったのは、やはりこの作品で主演をしっかり務められたこと、そして、興行的にも成功できたことが大きいと思いますね。

Q 最初は再現性にこだわっていたと思いますが、演じていくうちに、佐藤さんの中に剣心が棲みついてしまったのではないでしょうか。最終章はそれくらいリアルで、実在の人物かと思いました。

おっしゃる通り、剣心というキャラクターが自分の中に強く根付いていますね。だから、「こんな時、剣心だったらどう動くだろう」とか、「剣心ならどんな言葉を放つだろう」とか、自分の中からどんどん湧き出てきましたね。

Q もはや、佐藤健=緋村剣心ですね。

自分の身体を使って演じている以上、100%その役になり切ることは絶対にありえなくて、どこまでいっても自分という人間と役との融合にしかならないと思うんですが、そういった意味を踏まえても、『るろうに剣心』の撮影期間中は、“佐藤健は剣心”であり、“剣心は佐藤健”という状態ではありましたね。だから、剣心として言っているのか、佐藤健として言っているのか、もはやボーダーラインがありませんでした。

■雪代巴と出会い、幽霊から人間になった剣心

■雪代巴と出会い、幽霊から人間になった剣心

Q 『The Beginning』を観て「心から満たされた」とおっしゃっていましたが、それは、佐藤さんなりにイメージしていた世界観と合致していたのでしょうか?

合致どころか、自分がイメージしていた以上にクオリティーが高くて驚きました。例えば、剣心が常宿にしていた小萩屋のセットだったり、当時の衣装だったり、スタッフさんが作り込んでくださった世界観が素晴らしくて。演出についても、「このシーンは絶対に雪が降ってほしい」と思っていたら、その通りに描かれていたし、雪のディテールにもこだわりがあって、とにかく一つ一つに思いが込められていて素晴らしかった。新しいセットへ移動するたびに感激していました。

Q 素晴らしいシーンがたくさんありましたが、佐藤さんの中で一番印象に残っているシーンはどこですか?

常宿の小萩屋で、剣心が質素に粛々(しゅくしゅく)と生活しているシーンが特に好きです。今までの作品とまったく違うテイストになっている理由とも言えるとてもリアルな描写ですよね。でも、だからといって、剣心には生活感がまったくなく、どこか浮世離れしている。まるで亡霊というか、そこに棲みついた幽霊のような存在。それがまた、いいんですよね。

Q 運命の女性・雪代巴とともに山小屋に移り住み、平和な暮らしを営む姿も印象的でした。特に野菜を収穫している時のあの笑顔……。

山小屋での暮らしは、とても大切なシーンですね。“幸せ”というものを知らず、幽霊のように生きてきた剣心が、やっと“人間”になれたというか。巴と出会って初めて自分の中にある人としての“感情”を見つけたんだと思うんです。

■雪代巴と過ごした時間は夢のようだった

■雪代巴と過ごした時間は夢のようだった

Q 佐藤さんは、有村架純さんの雪代巴を観て「懐かしさを感じた」とおっしゃっていましたが、それはなぜですか?

すごく不思議な体験だったんですよね。今回の雪代巴との宿命をたどる「追憶編」のエピソードというのは、パート1からずっと心に抱えながら演じてきた特別なもの。剣心にとっても、僕にとっても、すごく大事なものだったんです。そんな思い入れたっぷりのエピソードを実際に自分で体現していくことがなんとも不思議で……。言語化するのがなかなか難しく、ちょっと安っぽい表現になりますが、まるで“夢の中”にいるようなフワフワした感じがずっとしていましたね。今思い返しても、撮影期間は僕の人生の中でも体験したことのない不思議な時間でした。確かに巴をめぐる壮絶なシーンもあったのですが、そこはあまり記憶になくて、巴と過ごしたおだやかな時の感覚が、今も体の中に残っているんです。

Q 撮影現場で、佐藤さんと有村さんは、共演者さんとあまりコミュニケーションをとらなかったそうですね。

確かにそうですね。ずっと地方で撮影していて、まったく家に帰っていなかったので、現場が終わったあとはずっと部屋にこもっていましたね。準備に忙しかったというのもあったんですが、僕も有村さんも(役づくりのために)食事制限をしていたので、皆さんと飲みに行ったりできなかったんだと思います。でも、そんな撮影環境が、剣心と巴の質素な生活を演じるうえで、かなり役立ったと思いますね。

■剣心を超えていかないといけない

■剣心を超えていかないといけない

Q ついに剣心とのお別れの時が来ました。『The Final』が公開され、『The Beginning』ももうすぐ観客の皆さんのもとに届きます。今、どんな心境ですか?

撮影が終わった時が一番寂しかったですね。そのあと、完成した作品を観た時は、正直、ホッとしました。一区切りというか、少なくとも僕の中で、ある一定の満足感というか、達成感を得られた感じだったんですね。これまで、「ようやく剣心が終わる」といろんなところで言ってきたんですが、最近、その思いが少し変わってきて、『The Beginning』が公開されることで、やっと「剣心がはじまったんだ」という風に思えてきたんですね。この美しくも壮絶な過去を内包しながら、僕は剣心をずっと演じてきたので、本作を皆さんに観てもらうことで、シリーズの全作品が本当の意味ではじまったんだなと。

Q 10年にわたり剣心を演じてきましたが、次の10年は俳優・佐藤健としてどんなヴィジョンを描いていますか?

これからの10年は、剣心を超えるキャラクターや、『るろうに剣心』を超える作品を探していきたいですね。僕自身は、この作品があったからこそ世に出られたと思っているので感謝しているのですが、一般的に圧倒的な代表作があるということは、善し悪しもあると思うんです。例えば、僕を観ている先に剣心を観ていたり、剣心そのものとして観ている人がいたり……俳優としては非常にありがたいと思いながらも、やっぱりそこを超えていかないといけない。なかなか難しいことだとは思いますが、『るろうに剣心』以上に人生を懸けて挑めるような作品をやってみたいですね。
『るろうに剣心』シリーズは、佐藤にとって最も思い入れの強い作品であるだけに、インタビューの受け答えも、さぞテンションが上がるかと思いきや、いつも通りおだやかで冷静沈着だった。ところが、言葉を文字に起こしていくと、作品に対する愛の深さ、熱の高さ、そして別れの寂しさがそこここにあふれ出している。「剣心が終わり、剣心がはじまる」……この言葉にその思いが集約されている。

取材・文:坂田正樹

映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日より全国公開

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