ここから本文です

『そして、バトンは渡された』永野芽郁&田中圭 単独インタビュー

2021年10月28日 更新

『そして、バトンは渡された』永野芽郁&田中圭 単独インタビュー

本屋大賞を受賞した瀬尾まいこのベストセラー小説を、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の前田哲監督が映画化した『そして、バトンは渡された』。4度も苗字が変わりながらもあっけらかんと明るい優子と父親の森宮さん、シングルマザーの梨花とみぃたんという、それぞれ血のつながらない親子の物語。優子役の永野芽郁と、血のつながらない父親・森宮さん役の田中圭が、共演した感想や愛のバトンについて語った。

■悪者が1人もいない

■悪者が1人もいない

Q 本作との出会いは?

永野芽郁(以下、永野)
母がずっと「映像化されるなら、主人公の女の子を芽郁に演じてほしい」と言っていた小説でした。読書好きの母には、きっと感じるものがあったのだと思います。
田中圭(以下、田中)
僕は、当時一緒にドラマをやっていた石原(さとみ・梨花役)さんから聞きました。「原作とは変わっているところもあるけど、それが映画っぽくてすごくいいし、とにかくめちゃくちゃぴったりの役だよ」って。
永野
悪者が1人もいない、全員が思いあって愛情を持って過ごしている世界で、とても温かいと思いました。
田中
僕はひねくれているので(笑)、最初は「すごくキレイなお話だな」という印象でしたが、優子ちゃんと一緒にこの世界を生きたら、温かい気持ちになりましたし、こういう親子関係はいいなと思いました。

■すてきがいっぱい

■すてきがいっぱい

Q 初共演の感想はいかがでしたか?

永野
撮影中はそんなにたくさんしゃべったわけではないのですが、劇中で描かれる家の中のほっとする空気感が、今も継続しているように感じます。
田中
うれしいですね。僕は「こんないい子のお父さん役だったんだぞ」と優越感のようなものを感じたと同時に、心での呼び方が「芽郁ちゃん」から「芽郁さん」になりました。
永野
なんでですか(笑)!
田中
女優としてのリスペクト度が上がったんです。お芝居のうまい方はいますけど、空気感とか雰囲気とかをかもし出せる方は、なかなかいないんですよ。わかりやすく恵まれた環境ではないのに、どんなときも前向きな優子ちゃんという役に、芽郁ちゃんは一度も負けなかった。これはすごいことです。
永野
ありがとうございます。田中さんは、初めてお会いしたときから、芝居をされてないときの人柄がすごくすてきだなと思っていました。そして、芝居でまた違ったすてきな人を作り上げていらっしゃって、すごいなと思いました。
田中
僕は芽郁ちゃんとのシーンが、あんなにすてきに仕上がっているとは想像もしていなかったです。ほかの方も、「石原がんばっているな」とか、「大森(南朋・水戸役)さんの芝居シビれるな」とか思いましたけど、トータルで見るとやっぱり中心にちゃんと芽郁ちゃんがいて、すごいなと思いました。
永野
田中さんは、すてきにやろうとしてなかったということですよね。そこがすてきです。意識してすてきにするのと、自分ではそう思ってなかったのにすてきだったというのでは、わたしは後者のほうが好きです。
田中
すてきにやろうなんて思ったこともないよ。僕も芽郁ちゃんも、すてきさが自然と漏れちゃって、隠せないタイプってことですね(笑)。

■心がすっきりした掛け合い

■心がすっきりした掛け合い

Q 好きなシーンを教えてください。

永野
森宮さんとの家でのシーンが全部好きです。自分の芝居のテンポ感はわかっていたつもりだったのですが、完成した作品を観たら、照明やカメラアングルとかで想像を上回る心地いい掛け合いになっていて、心がすっきりしました。
田中
僕は2人がはじめてケンカをするシーンです。ケンカもできない間柄という感情の伏線があったので、「ケンカできた!」と。でもケンカの内容は悲しいので、すごく複雑でした。

Q 撮影現場での印象的なエピソードはありますか?

田中
初日が、深夜1時から朝10時までという撮影スケジュールだったので、一筋縄ではいかないな、とんでもない撮影現場に来ちゃったと思いました(笑)。卒業式で芽郁ちゃんがピアノを弾くシーンも、朝から晩まで撮影していたよね。
永野
そうでした。この作品のために3か月前からピアノの練習をしましたけど、弾きながらの芝居は難しいし、アングルを変えて何度も撮影するので、混乱していました(笑)。
田中
僕もずっと見ていましたが役者としての芽郁ちゃんが、がんばっているエネルギーがすご過ぎました。僕には絶対無理です。感動して、撮影が終わってからショートケーキを差し入れしました。
永野
糖分を取ってホッとできたので、ありがたかったです。田中さんがずっと見てくださったから、乗り越えられたところもあったと思います。

Q 永野さんは今もピアノを続けていらっしゃると伺いました。そんなふうに、役のために始めて、今も続けていることはありますか?

永野
役で何かを練習したのは、今回がほぼはじめてです。
田中
僕は20年以上俳優をやらせていただいていますが、続けていることは1つもないです。飽きっぽいんです。深い反省をしています(笑)。ただ、しっかりと練習が必要なものがあまりなかったのも確かです。ドラマ「ウォーターボーイズ」でシンクロ(シンクロナイズドスイミング 現:アーティスティックスイミング)をやったくらいです。
永野
プライベートでシンクロを続けるのは、なかなか難しいですね。
田中
1、2年は、お風呂で足とかパチャパチャやっていましたが(笑)。

■2回目は見え方が違う

■2回目は見え方が違う

Q バトンが渡されていく物語ですが、ご自身が渡したい、あるいは渡されたバトンはありますか?

永野
わたしは、祖母がずっと持っていたリングを、お直ししてネックレスにして大切にしています。
田中
おばあちゃんの愛のバトンだね。僕は二十歳くらいのころ、押し入れでもうとっくにいなかった親父の高そうな時計を見つけて、質屋で売りました。うまくしたら何十万かなと思いましたが、千円でした……って、すみません、バトンを止めた話でした(笑)。

Q 映画を最後まで観終わったとき、また最初から観たくなりました。

田中
2回目は見え方が変わると思うので、ぜひ何度も観てほしいです。
永野
ホントにそうです。それに、その人の状況や感じやすさによって、感情移入する場面も違うと思います。なので、観た方みんなで感想を言い合える場所がほしいですね。「そういう視点もあるのね」って、観るたびに新鮮に感じられる映画になっていると思います。
ストレートに話す永野に、ちょっとひねった言い回しをする田中。劇中のキャラクターとは違うテイストだが、役も素も、どちらも魅力的だ。2人はお互いにツッコミを入れつつ、驚くほどユーモアにあふれた会話を続けていく。作品に流れる温かさは、キャストの根っこから出てきたぬくもりでもあるのだろう。連続ドラマや映画を多数抱える売れっ子の2人は、演技力だけではなく人間力も高いと感じた。

取材・文:早川あゆみ 写真:尾藤能暢

映画『そして、バトンは渡された』は10月29日より全国公開

本文はここま>
でです このページの先頭へ