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さざなみ (2015)

45 YEARS

監督
アンドリュー・ヘイ
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3.46 / 評価:363件

解説

ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞を筆頭に、各国の映画祭や映画賞で高い評価を得たヒューマンドラマ。結婚45周年を迎えようとする夫婦の絆と愛情が、ある手紙が届いたのを機に揺らいでいくさまを追い掛ける。メガホンを取るのは、テレビやショートフィルムで活躍してきたアンドリュー・ヘイ。『スイミング・プール』などのシャーロット・ランプリング、『ドレッサー』などのトム・コートネイが夫婦にふんする。ベテランである彼らが見せる妙演に加え、恋愛と結婚の違いを深く見つめた物語にも引き込まれる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

結婚45周年を記念したパーティーを土曜に予定しているジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランプリング)の夫婦。だが、月曜に届いた手紙がきっかけとなって、山岳事故で命を落としたジェフの昔の恋人の存在が二人の間に浮き上がってくる。かつての恋人との記憶をよみがえらせてはそれに浸るジェフと、すでにこの世にはいない彼女に嫉妬を募らせていくケイト。次第に彼女はジェフに対する不信感を抱くようになり、長い夫婦生活で育んできた愛情や絆も揺るぎ始める。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014
(C)The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014

「さざなみ」45年の夫婦の営みが6日で覆される、人生の無常

  恐ろしい人材が登場した、と本気で思う。まるで往年のベルイマンを彷彿させるような冷徹な眼差し、無駄を削ぎ落としたセリフと緻密な描写の積み重ねがもたらす、登場人物たちの奥深い内面描写、一見ドキュメンタリー的な自然で控えめな映像のなかに、計算され尽くされたドラマが構築されている。これが長編三作目となるアンドリュー?ヘイ監督の、この人間を見つめる視線の厳しさはどこから来るものだろうか。

 結婚45周年を6日後に控えたジェフとケイト。田園の一軒家で穏やかに暮らす彼らは、誰が見てもおしどり夫婦だった。だが、一通の知らせが異変を起こす。雪山で遭難したジェフのかつての恋人の遺体が、氷のなかから発見されたという。呆然とする夫の様子から事態の大きさを理解したケイトの心に、さざなみが起こる。やがてその波紋はどんどん広がり、消し去ることのできない不協和音を奏でていく。

 「彼女が生きていたら結婚していた?」と思わず尋ねるケイトに、「そのつもりだった」と、夫は躊躇なく答える。

 観客のなかにはケイトの苦悶に共感できず 、こう思う方がいるかもしれない。もう存在しない昔の恋人になど、何をそこまで嫉妬する必要があるのか、と。だが、違うのだ。彼女は存在しないからこそ、永遠に昔と同じ強度で夫の心に残り続ける(まさに氷のなかで発見されたかつての姿のように変わりなく)。生身の人間は、亡霊に勝つことはできない。ケイトにとってもっとも辛いのは、45年を経た今、ふたりで積み重ねた年月がすべて覆され、甘い思い出は苦い欺瞞の礎に変わり、これまで生きてきた存在理由が、がらがらと音をたてて崩れてゆくことだ。そして彼女には新たな人生を生き直す時間も気力も、もう残されていない。まるで生きてきた証を失うような、やみくもに自分の人生が全否定されたかのごとき負の波が、静かに、だが確実に彼女を浸食していく。

 フランソワ?オゾンの「まぼろし」で、失踪した夫への思いに取り憑かれるヒロインを演じたシャーロット?ランプリングが、ここでもまた言葉に頼らない名演を見せてくれる。理性と感情の狭間でその表情は揺らぎ、切れ長の瞳が絶望と嫌悪を交互に宿す。

 結婚45周年のパーティで、それでも夫とチークダンスを踊るケイトの表情が観客に最後に差し出す、問いかけ。それに愕然とさせられるか、これもまた人生なりと咀嚼するかは、観る側の度量に拠るかもしれない。(佐藤久理子)

映画.com(外部リンク)

2016年3月31日 更新

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