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わたしは、ダニエル・ブレイク (2016)

I, DANIEL BLAKE

監督
ケン・ローチ
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4.12 / 評価:521件

ひとには名前がある

  • 山下晴代 さん
  • 2017年3月21日 1時00分
  • 閲覧数 1801
  • 役立ち度 15
    • 総合評価
    • ★★★★★

 ヘレン・ケラーは、「ものには名前がある」ということをサリバン先生から学んだ──。本作は、ひとには、(識別番号でなく)名前があるという、あたりまえでありながら、昨今見過ごされがちなことを訴えている。

 イギリスは階級社会と言われるが、社会制度も整っている。しかしそれを享受するには、それなりの手続き、ルールがある。そのルールからはみ出し、手続きをしないと、あるいは、する資格を失うと、貧者はホームレスへの坂道を転がり落ちる。売れている俳優や監督にとっては、どうでもいいような世界である。もっと派手なテーマを追った方がウケるし、目立つに、かっこもいいかもしれない。しかし、ローチ監督はあえて、こういう作品を撮る。そして、カンヌ映画祭が、グランプリである、「パルムドール」を与える。さすが、おフランスである。映画界も捨てたものではない。こういうスキマからこぼれてしまうような事柄、人々を描いてこその映画である。

 しかし、イギリス、階級社会とはいえ、庶民パワーもすごい。役人たちの、あまりに杓子定規な対応にキレたダニエル・ブレイクが、役所の壁にスプレーで落書きする、「私はダニエル・ブレイク、名前を持った人間だ!」。それに喝采する、通りすがりのオッサン、通りの向こうの、若い労働者たち。このパワーがイギリスなんだなーと思う。しかも、舞台はニューカッスルで、もろニューカッスルなまりで、実は私も英語があまり聞き取れなかった。

 二人の子持ちのシングルマザーは、ロンドンを追い出されて、この地方都市にやってきた。「フードバンク」(なるものがイギリスにはあって、配給券を持っていくと、野菜、缶詰、日用品、飲み物などをくれる)で、あまりに空腹で、フードを袋に入れてもらっている間に、缶詰を開けて口に突っ込んでしまうシングルマザー。この演技があまりにリアルだ。イギリスの俳優は、ほんと、ほんものを連れてきたのではないかという演技をする。『秘密と嘘』の過去に(黒人の)隠し子を持ったことで悩むオバサンもそうだった。イギリスの低所得者の団地のような住宅に、ほんとうに住んでいるオバサンを出したのだろうか?と思ったほどだが、ちゃんとパーティーで、ドレスアップしてきて女優とわかった安心した(笑)。

 このダニエル・ブレイクも、まだ60歳前のオッサンだが、全然かっこよくないところがじんと染みる。シングルマザーの子どもの1人の、おちつきがない男の子も、このオジサンがじっと木彫りを作るのを真似て、15分もじっと工作を作ることを学び、母親を感激させるシーンも、繊細な目配りがなければ撮れないところだ。

詳細評価

物語
配役
演出
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