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アンコール!! (2012)

SONG FOR MARION/UNFINISHED SONG

監督
ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
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4.09 / 評価:443件

解説

『コレクター』のテレンス・スタンプ、『ジュリア』のオスカー女優ヴァネッサ・レッドグレーヴと、イギリスが誇る名優が共演したドラマ。病身の妻の代わりに合唱団に参加した気難しい初老の男が、さまざまな出来事を通して人生の新たなスタートを切る姿を映し出す。監督は、テレビシリーズや短編を手掛けてきたほか、俳優業や脚本もこなす新鋭、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ。涙あり笑いありの人情味あふれる物語に加え、劇中で合唱団が歌うシンディ・ローパーやビリー・ジョエルといった有名アーティストのヒット曲も大きな魅力。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

寡黙でとっつきにくい性格が災いし、周囲から筋金入りの頑固おじさんとして扱われ、息子とも溝ができてしまっているアーサー(テレンス・スタンプ)。そんな彼が愛してやまない、性格の明るい妻マリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)のガンが再発してしまう。そんな中、彼女が在籍するロックやポップスの名曲を歌う合唱団「年金ズ」が国際コンクールの選考大会に出場することに。治療などで練習に参加できないマリオンの代理で「年金ズ」のメンバーになるアーサーだが、個性豊かなメンバーや慣れない合唱に面食らってしまう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)Steel Mill (Marion Distribution) Limited 2012 All Rights Reserved.
(C)Steel Mill (Marion Distribution) Limited 2012 All Rights Reserved.

「アンコール!!」老人になった「怒れる若者たち」を描く反骨のドラマ

 テレンス・スタンプ扮する主人公のアーサーは、いつも怒っている。無理もない。72歳の彼は、1950年代に「怒れる若者たち」と呼ばれた世代なのだから。そして実際、アーサーには、怒れる若者たちの名称を生んだオズボーンの戯曲「怒りをこめてふりかえれ」の主人公ジミーと同じ血が流れている。

 ジミーとアーサーの怒りの根源は、妻と自分に関する「変えられない現実」だ。労働者階級出身のジミーは、中産階級出身の妻を幸福にできない自分にいらだっている。一方のアーサーは、愛する妻に近づく死を止められない自分にいらだつ。似た者同士の2人は、社交性に難がある点も共通している。ジミーが教会を嫌い、妻の教会通いに反対したように、アーサーは合唱団のコミュニティに違和感を覚え、妻が練習に通うことを快く思っていない。

 そんなアーサーが、自ら憎むべき合唱団に参加することで人生の悲しみを乗り越えていく姿をこの映画は描く。というと、怒れる老人から哀れな老人に変貌したアーサーが、合唱仲間に支えられて笑顔の老人になる筋書きが想像できるが、それをこの映画は見事に裏切る。

 合唱団に入ってもアーサーの本質は変わらない。その証拠に、彼が最も輝きを放つのは、体制に憤って反旗を翻すときだ。怒れる老人が本領を発揮してヒーローになる。その瞬間にスポットを当てたドラマの仕立てが気持ちいい。

 終幕でアーサーが歌うのは、ビリー・ジョエルの「眠りつく君へ」。妻に贈るラブソングだが、ジョエルのナンバーに「怒れる若者」があることも選曲に関係しているのではないか。その歌詞の「きっと墓に入るときも怒れる老人だろう」という一節を思い出してニヤリとしてしまった。(矢崎由紀子)

映画.com(外部リンク)

2013年6月27日 更新

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