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サファリ (2016)

SAFARI

監督
ウルリヒ・ザイドル
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3.56 / 評価:9件

解説

第29回東京国際映画祭などに出品された衝撃のドキュメンタリー。動物の毛皮や頭部を獲るためだけの狩猟に興じるハンターたち、彼らのガイドを務める者たち、それを許可しているアフリカ各国の実情などを追う。監督は『インポート、エクスポート』や『パラダイス』3部作などで知られるウルリヒ・ザイドル。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

2015年、SNSに投稿された1枚の写真に非難が殺到する。それは、誇らしげな顔をした歯科医が殺したばかりのライオンと一緒に写っているものだった。彼がレジャーとして満喫した狩猟はトロフィーハンティングと呼ばれ、アフリカ諸国の大きな観光資源になっている。ウルリヒ・ザイドル監督とクルーは、その実態を探ろうとナミビアで狩りに興じるオーストリア人とドイツ人のハンター、ハンティングロッジを営むオーナー、ガイドを務める現地の住民らの姿を捉える。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)Wien 2016 Ulrich Seidl Film Produktion ARTE G.E.I.E. Danish Documentary WDR
(C)Wien 2016 Ulrich Seidl Film Produktion ARTE G.E.I.E. Danish Documentary WDR

「サファリ」野生動物を殺すという娯楽に熱中する人々を捉えた戦慄の狩猟ドキュメンタリー

 「パラダイス」3部作などで知られるウルリッヒ・ザイドル監督が、現代のアフリカにおける野生動物の狩猟をめぐるドキュメンタリーを撮った。国際映画祭での高い評価においても、観る者を極度に居心地悪くさせる独特の作風においても、あのミヒャエル・ハネケと双璧を成すオーストリアの鬼才の作品だけに、当然ながらよくあるネイチャー・ドキュメントの類いではない。ヨーロッパから現地に乗り込んだ白人ハンターたちが、動物の皮や角を目的にレジャーとしての狩りを行う“トロフィー・ハンティング”の実態を描いている。

 ハンティングに参加した人々はツアーの拠点となる牧場をジープで出発し、現地ガイドとともに乾いた大地を歩き回って獲物のヌー、シマウマ、ライオンなどを探し始める。その模様を背後から追いかけるカメラは、自らがライフルで仕留めた動物と記念写真を撮影するハンターと、その死体を牧場に運んで黙々と解体作業にいそしむ黒人たちの姿を対比的に捉えていく。その合間には「ライオンなら大歓迎だ」「ヒョウは美しいから撃ちたくない」などと気ままに持論を語るハンターのインタビュー映像が挿入される。とりわけゾッとさせられるのは、撃たれどころが悪かったキリンがすぐには死なず、地面に崩れ落ちて苦しげにのたうち、見たこともない奇怪なポーズで息絶えていく様がまざまざと映し出されるショットだ。あらゆる観客がどん引きし、動物への憐れみを超えた不快感や戦慄を誘われる光景である。その内蔵と鮮血が画面いっぱいにあふれ出す場面は言わずもがなだ。

 このような狩猟はアフリカ諸国の管理のもとで合法的に行われ、各国の貴重な観光資源となり、環境や動物保護活動の資金にもなっているという。ナレーションを排した本作はそうした複雑な裏事情を一切説明することなく、ひたすら冷徹にハンターの行動を見つめ続ける。すると観ているこちらが困惑せずにいられない、彼らの不可解な生態が浮き彫りになってくる。いっそのこと昔の貴族のように傲慢で特権意識の高い白人ハンターが「ヒャッホー」とはしゃいで動物を殺しまくるのなら、わかりやすく怒りをかき立てられるのだが、“ごく普通の富裕層”らしき彼らは真剣そのものの様子で狩猟に没頭し、ある親子4人のグループは「素晴らしい」「よくやったぞ」などとお互いの成果を褒め称え、家族の絆を確かめ合ったりする。その高揚感と充足感は、いったいどこから沸き起こってくるのか。どうして人間は、動物を殺すことに至上の歓びを感じるのか。その答えは用意されていないが、明らかに何かが狂っている。とても灼熱のアフリカが舞台とは思えない寒気をもよおす異常な現実がここにある。(高橋諭治)

映画.com(外部リンク)

2018年1月25日 更新

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