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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (2007)

THERE WILL BE BLOOD

監督
ポール・トーマス・アンダーソン
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3.83 / 評価:662件

解説

『マグノリア』『パンチドランク・ラブ』のポール・トーマス・アンダーソン監督の最高傑作との呼び声も高い、石油採掘によってアメリカン・ドリームをかなえた男の利権争いと血塗られた歴史を描いた社会派ドラマ。原作は1927年に発表された、社会派作家アプトン・シンクレアの「石油!」。『マイ・レフトフット』のオスカー俳優ダニエル・デイ=ルイスが、冷徹な石油王が破滅していくまでを熱演。人間の計り知れない欲望や恐怖を、改めて思い知らされる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

石油ブームに沸く20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山労働者のプレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、石油が沸く源泉があるという情報を耳にする。息子(ディロン・フリーシャー)とともに石油採掘事業に乗り出したプレインビューは、異様なまでの欲望で富と権力を手にしていく。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2007 by PARAMOUNT VANTAGE, a Division of PARAMOUNT PICTURES and MIRAMAX FILM CORP. All Rights Reserved.
(C)2007 by PARAMOUNT VANTAGE, a Division of PARAMOUNT PICTURES and MIRAMAX FILM CORP. All Rights Reserved.

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「歩く嵐」の抱えた巨大なダムと映画史の富に思わず眼をみはる

 ダニエル・プレインビューの声を聴いた瞬間、私はノア・クロスの声を思い出した。クロスとは、「チャイナタウン」でジョン・ヒューストンが演じた魔人だ。ただ、プレインビューに扮したダニエル・デイ=ルイスは、他の影も役柄に取り込むことを忘れていない。たとえば、「グリード」のエリッヒ・フォン・シュトロハイム。あるいは、「市民ケーン」のオーソン・ウェルズ。

 ああ、映画史の富だ。こう思う一方で私は、デイ=ルイスの体現する魔人が「映画の肌」を突き破ってうごめく気配に、ぞくぞくするような昂奮を覚える。図々しくいいかえれば、私はプレインビューに一方ならぬ親近感を覚える。

 プレインビューは「歩く嵐」だ。彼の肉体と無意識には、深くて巨大な「感情のダム」が堰き止められている。桁外れの生命力と唾棄すべき腐れ根性を体内に共存させ、荒野と神に喧嘩を売りつづけている男。強欲で冷酷で破壊的で、なおかつ作り物ではない感情をどっと放水しつづけている男。

 養子の少年や、天敵にして分身の福音伝道師イーライに鏡の役割を負わせると、プレインビューの抱えるダムの水量はさらに際立つ。燃えさかる焔も、噴出する原油も、やがて流される血も、この不吉な男が呼び出したにちがいない。ポール・トーマス・アンダーソンは、「歩く嵐」を「20世紀アメリカという嵐」のなかに放った。スペクタクルとリアリズムが激突すると、見よ、そこには映画というもうひとつの強烈な嵐が発生する。(芝山幹郎)

映画.com(外部リンク)

2008年4月24日 更新

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