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凶悪 (2013)

監督
白石和彌
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3.68 / 評価:1,783件

解説

『ロストパラダイス・イン・トーキョー』の白石和彌が、ベストセラーノンフィクション「凶悪-ある死刑囚の告発-」を映画化した衝撃作。ある死刑囚の告白を受け、身の毛もよだつ事件のてん末を追うジャーナリストが奔走する姿を描く。主人公を『闇金ウシジマくん』シリーズなどの山田孝之が演じ、受刑者にピエール瀧、冷血な先生をリリー・フランキーが熱演する。それぞれの男たちの思惑が複雑に絡み合う、見応えたっぷりの展開に引き込まれる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2013「凶悪」製作委員会
(C)2013「凶悪」製作委員会

「凶悪」本職の俳優ではない二人の、微妙にして力強い演技

 ある日、雑誌記者の元へ、拘置所の死刑囚から手紙が届く。自分にはまだ誰にも言っていない余罪の殺人事件がある。ついてはこれを告白するので、記事にして、自分の共犯者を告発してほしい……この嘘のような話は実話である。実際に死刑囚である元ヤクザ組長は新潮社の社員に手紙を書き、〈新潮45〉に載ったレポートのおかげで3件の殺人があかるみに出て、不動産ブローカーの男が殺人罪で逮捕された。ヤクザの組長は不動産ブローカーを「先生」と呼び、親しく付き合っていたのだという。

 「凶悪」は現実に起きた事件に基づき、赤裸々で無情な世界のありさまをつきつける。それゆえにこの映画は観客の心をとらえて離さないのだろうか。それはイエスでもありノーでもある。たしかに「凶悪」で描かれている地方の荒廃は、どうしようもなく冷たく恐ろしい現実の露呈だ。加害者も被害者も、みなが資本主義の論理でバラバラにされてしまった世界の住人である。「先生」は金のために次々と殺人をたくらみ、被害者さえもその論理にはあらがえないのである。

 そしてまた「凶悪」の主役である二人の殺人犯を演じるのはピエール瀧とリリー・フランキー、共に本職の俳優ではない。だが、二人がこの映画で見せる演技は「素人ゆえの迫力」などという言葉で語れるレベルではない。ときに静かに語りかけ、ときに凶暴性あらわに暴れる瀧。相手に媚びるように暴力を楽しむリリー。二人の微妙にして力強い演技の前には、若手演技派ナンバーワンと言われる山田孝之も顔色ない。「凶悪」はまず何よりも俳優の映画なのだ。(柳下毅一郎)

映画.com(外部リンク)

2013年9月19日 更新

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