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劔岳 点の記 (2008)

監督
木村大作
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3.54 / 評価:1,194件

解説

険しい山を舞台に、測量に携わる人たちの情熱と尊厳を描いた新田次郎の同名小説を『八甲田山』『火宅の人』などの名カメラマン、木村大作が初メガホンを取った作品。本物の大自然を撮影することにこだわり、危険を冒しながら圧巻の雪山シーンにも挑んだ。日本地図を完成させるために、未踏峰の劔岳山頂を目指す測量手と山の案内人をそれぞれ浅野忠信と香川照之が演じるほか名だたる俳優たちが集結。根底にはかつての日本人に共通する精神がつづられ、実話だからこその感動が胸に迫る。

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あらすじ

明治40年、日本地図完成のために立山連峰、劔岳への登頂に挑む、陸軍測量手の柴崎芳太郎(浅野忠信)ら7人の測量隊。山の案内人、宇治長次郎(香川照之)や助手の生田信(松田龍平)らと頂への登り口を探すが、生田が足を滑らせけがを負ってしまう。大自然の厳しさを見せつけられた測量隊だったが、柴崎と宇治はある言葉を思い出し……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)「劔岳 点の記」製作委員会
(C)「劔岳 点の記」製作委員会

「劔岳 点の記」映画作りという修羅場で長年命を張ってきた木村大作だからこそ描けた境地

 ビデオ撮りのピントの甘い画面や嘘臭いCG満載のデジタル映像が氾濫するなか、この映画はプロ中のプロが撮ったフィルムの威力をまざまざと見せつける。狂気ともいえる過酷な撮影を経てまさに命がけで捉えたその映像の数々は、デジタルでは絶対に表現できない色味と風合いで神々しく輝き、サウンドトラックに使用されている直球のクラシックの名曲の数々にも負けていない。

 だが、大自然の豪快さ、苦行のような製作や乱暴で荒々しい監督の言動とは裏腹に、映画は優しく、温かく、思いやりがあり、作品全体に安定感がある。それは、木村大作という作家がすべての被写体に対して愛情と尊敬を持ち、絶対的な経験からくる圧倒的な自信を胸に真摯に題材に対峙しているからに他ならない。ただひたすら山を登るこのシンプルな物語が語るのは、たとえ他人にとって無駄な行為に見えようとも、与えられた仕事をきっちりとこなすプロフェッショナルの責任感と仲間への信頼の大切さ。ある意味、偉大なる無駄ともいうべき映画作りという修羅場で50年以上命を張ってきた木村だからこそ描ける境地だろう。映像だけではなく、内容的にも一本芯の通った傑作である。

 何よりこの映画が感動的なのは、作り手の誠意や情熱はもちろん、彼らが努力と苦労の果てに到達した幸福感と充実感が見る者にも伝わることだ。こんな映画は滅多にないし、日本どころか世界でも二度と作れないだろう。木村大作は間違いなく、世界最高峰の映像の力で、黒澤、小津、成瀬といった日本が誇る巨匠たちですら成しえなかったことを確実に成し遂げた。肩書きのないエンドクレジット。名を連ねることのできた者にとってこれは最高の名誉だろう。(江戸木純)

映画.com(外部リンク)

2009年6月18日 更新

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