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千年の愉楽 (2012)

監督
若松孝二
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3.14 / 評価:118件

解説

昭和の作家・中上健次が故郷・和歌山を舞台に書いた小説を、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『キャタピラー』の若松孝二監督が映画化した人間ドラマ。若い男たちの奔放ながらも悲しい生と性(さが)を、この地で見つめ続けた老女の視点で描き出す。出演者は、『キャタピラー』の寺島しのぶのほか、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太など実力派俳優たちが顔をそろえる。常に衝撃的な作品を発表する若松監督だけに、ストーリーはもちろん俳優たちの見せる新たな一面にも期待が持てる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

年老いたオリュウノオバ(寺島しのぶ)の脳裏に、この紀州の路地で生まれ、女たちに愉楽を与え、散っていった男たちの思い出が駆け巡る。自らの美ぼうをのろうように生きた中本半蔵、生きることを強く望んだ田口三好、北の地でもがいた中本達男。彼らの誕生から死までを、助産師をしていたオリュウノオバは見つめ続けていたのだった。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)若松プロダクション
(C)若松プロダクション

「千年の愉楽」中上健次による<路地>の世界を、ラフな奔放さで描いた若松孝二の遺作

 昨年、不慮の交通事故で急逝した若松孝二の遺作が、中上健次原作の「千年の愉楽」であることは、当初、意外な気がした。しかし、プロローグで霧に包まれた岩窟が写し出され、山の斜面に張りつくような集落風景のインサート、その<路地>で生き死にする荒ぶる男たちを見ていると、中上が紀州の<路地>にこめて描出した血族の呪縛、神話的世界と若松の<性と暴力>にまみれたスキャンダラスな作品群とは深く通底しあっていたと納得されるのだ。

 ただし、日本文学の古層に深く分け入るかのような叙事的な語り口の原作とは異なり、若松孝二は通常通り、低予算、早撮りというルーティンを遵守し、息せき切ったようなラフな奔放さで強引に押し切ってしまった感もある。

 産婆として荒くれ者たちの誕生と死に立ち会ってきたオリュウノオバ(寺島しのぶ)が、死の床で、夢うつつのままに遺影の夫・礼如(佐野史郎)とユーモラスな対話を交わす中で、回想が重層化されていく。オリュウノオバは、かつての「犯された白衣」で暴行魔を慰撫する少女、「聖母観音大菩薩」で絶望した男たちを全身で抱きとめた八百丘比尼など、若松孝二が繰り返し描いてきた<聖なる母性>のイメージの集大成といえる。

 寺島しのぶが時おりみせる慈愛に満ちた表情が印象的だが、セックスシーンが、従来の若松作品と較べて烈しさ、暴力性が希薄なことも特筆されよう。古い日本家屋の中で繰り広げられる情交はどこか隠微で、饐(す)えた死の匂いを発散し、静謐ささえ湛えているのだ。

 これはやはり若松孝二の遺作にふさわしい。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2013年3月14日 更新

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