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悪人 (2010)

監督
李相日
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3.77 / 評価:2,696件

解説

朝日新聞夕刊に連載され、毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した吉田修一の話題作を映画化した犯罪ドラマ。九州のとある峠で起きた殺人事件をきっかけに、偶然に出会う男女が繰り広げる逃避行と愛を息苦しくなるほどリアルに描く。監督は、『フラガール』の李相日。罪を犯してしまう肉体労働者と彼と行動をともにする女性を、『ブタがいた教室』や大河ドラマ「天地人」の妻夫木聡と『女の子ものがたり』の深津絵里が演じる。原作で巧みにあぶり出される登場人物の心理がどう描かれるのか、実力派俳優たちの共演に期待が高まる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2010「悪人」製作委員会
(C)2010「悪人」製作委員会

「悪人」地方の閉そく感や人間関係が希薄になった現代社会を鋭く反映した秀作

 人間にはいろいろな側面があって、殺人犯だから悪人だと単純には決めつけられない。誰もがちょっとしたことで加害者や被害者になりえるのだ。土木作業員の祐一(妻夫木聡)と紳士服量販店で働く光代(深津絵里)の絶望的な逃避行は、祐一が保険外交員の佳乃(満島ひかり)をなぜ殺したのか、その原因と答えを探し続ける旅でもある。

 吉田修一の原作は、事件に関係した人たちのモノローグで構成し、多角的な視点で祐一の人間像に迫っていく。だが吉田と李相日監督の共同脚本を映画化した本作は、登場人物を絞り込むことで、祐一の祖母・房枝(樹木希林)と佳乃の父親・佳男(柄本明)の比重が大きくなっている。祐一を母親代わりになって育てた房枝は、マスコミに追われて途方に暮れる。佳乃は殺されても仕方がないような自分勝手な女性だが、愛する娘を失った佳男は事件のきっかけを作った大学生の増尾(岡田将生)に怒りを向ける。房枝と佳男は正反対の立場でありながら、家族を奪われた失意と悲しみの深さは共通している。

 祐一が光代や佳乃と知り合うのは出会い系サイトで、それしか若い女性と接する機会がないのだろう。地方の閉そく感や人と人のつながりが希薄になった現代社会を鋭く反映した秀作で見応えがある。個々の人間を凝視する李監督の演出は、チラッと出てくる人物にまで目が行き届いている。たとえば房枝に声をかけるバスの運転者や、ごう慢な増尾に疑問を抱く同級生が、かすかな希望を持たせる存在として印象に残った。(垣井道弘)

映画.com(外部リンク)

2010年9月2日 更新

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