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映画 「聲の形」 (2016)

The shape of voice/A SILENT VOICE

監督
山田尚子
  • みたいムービー 1,857
  • みたログ 1.6万

4.12 / 評価:14,161件

心から溢れたから、口を動かすんだ。

  • son***** さん
  • 2016年10月14日 22時21分
  • 閲覧数 15983
  • 役立ち度 160
    • 総合評価
    • ★★★★★

原作既読。硝子よりは随分程度は低いですが、聴覚障害を持つ弟がいます。
だから、この映画を観るのは迷っていました。あの頃の意地悪な私に向き合うのが怖かった。

将也を始めとする、小学生の頃の硝子へのいじめ。補聴器で遊ぶ、よくやって怒られたなあ。笑
本当は補聴器が生命線だって分かってる。ひどいことをしているって分かっている。でも何を言っても曖昧な顔で立ちすくむ弟に、私の気持ちなんて伝わっていないようで。伝わっていないから、みんな必要以上に意識してしまう。この辺りの微妙な心の揺れ動きは非常にクリアに描かれていました。

そして高校生になり、友情が新たに育まれたように見えます。ですが観覧車での「あんたが周りを不幸にするんだよ!」植野のセリフ、ごめんなさい。私も同じような言葉を弟にぶつけてしまったことがあります。植野を責められない。時が経っても、築き上げてきたものを全て共有出来ない苛立ち。痛いほど伝わってきました。
そして硝子の「私といたら、不幸になる」という言葉。分かっている、そういう言葉を言わせたいんじゃない。だけど、正しい言葉が、見つからない。言葉で表現出来るのかも分からない。高校生の彼らには難しすぎます。
川井さんを責めるレビューが多いようですが、この映画を観ている大多数は川井さんの立場でしょう。他の登場人物と違って、自分の内側に気持ちを留めたまま。関わらないことが善であるかのような態度。やり過ごして、自分を正当化することが当たり前になってしまう。いじめだけじゃない、今この瞬間も傍観者になっているはずです。川井さんの描かれ方は、原作より映画の方が好きでした。
※真柴は映画版では傍観者側のように見えますが、原作ではキーパーソンになっています。彼が実は一番硝子側に近いので、読んでいない方は是非。

硝子自身も、大切な人に「好き」の二文字すら自分の声で伝えられない。大切な人の声を全て拾うことか出来ない。ずっとずっと、もどかしさに苦しみ続けている。そして、自分のせいで誰かを苦しめていることも分かっている。積もり積もった苦しみが彼女が死へと向かわせてしまう。この辺りは映画だと伝わりづらいですかね…
しかし「自分を大切に出来ないこと」によって、彼女は将也を始め周囲の人々を苦しめてしまう。ここで初めて彼女は「自分」を守るためではなく、「他者」を守るために動き始めます。小学生の頃将也の机を拭いていた姿と重なり、涙が止まりませんでした。

将也、硝子を含め登場人物はベストな選択をしてきたとは思えません。もし、硝子をいじめてなかったら?硝子に再会しなかったら?植野に会いに猫カフェに行かなかったら?夏祭りの帰りに一緒に帰っていたら?もっとすんなりと人生は上手くいっていたでしょう。でも、その時その時で正しいと思う判断をすれば良い。正しくない判断をしたと思えば、謝ればいい。「生きる」とはそういうことなのだと気づけたのは、あなたに出会えたから。
ラストにかけて、そんなメッセージが伝わってきました。原作とは異なりますが、非常に爽やかでした。
私自身、今までの自分と重ね合わせて肩の荷が下りたように思います。弟がいなかったら、恐らく相手のことを理解する難しさも喜びも分からなかった。そう強く思いました。

最後に。硝子は後半につれて自らの力で言葉を発するようになります。(あの特有の発音も、よく表現されていました。「ごえんああい」や泣き声は本当にリアルでした)
弟も小さい頃は寡黙でしたが、徐々に話すようになりました。今ではおしゃべりです。以前その理由を聞いたところ「うなづいたり、黙っているだけでやり過ごすことは出来る。けれど、誰かに伝えたい気持ちが強くなって、そうしたら口が動くようになった」と言っていました。不思議なことに、一生懸命話そうとすると伝わるんですよね。聴覚の程度にもよるのでしょうが、弟は今平常者と変わりなく話せるようになり大学生になりました。
硝子がまた告白する時は、きっと「好き」になりますように。きっと「愛している」になりますように。

詳細評価

物語
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