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許されざる者 (2013)

監督
李相日
  • みたいムービー 200
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3.99 / 評価:1,498件

解説

クリント・イーストウッドが監督と主演を務め、アカデミー賞作品賞などに輝いた西部劇をリメイク。江戸幕府最強の刺客として恐れられた男が、やむを得ぬ事情から一度は捨てた刀を手にしたことから壮絶な戦いに身を投じていく姿を描く。メガホンを取るのは、『フラガール』『悪人』の李相日。ハリウッドでも活躍が目覚ましい渡辺謙をはじめ、、柄本明、佐藤浩市らキャストには実力派が結集。彼らの妙演に加え、開拓時代の西部から明治初期の北海道への舞台移行などの改変点にも注目。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

1880年、開拓が進む江戸幕府崩壊後の北海道。人里離れた土地で子どもたちとひっそりと暮らす釜田十兵衛(渡辺謙)だが、その正体は徳川幕府の命を受けて志士たちを惨殺して回った刺客であった。幕末の京都で人斬(き)りとして名をとどろかせるも、幕府崩壊を機に各地を転々と流れ歩くようになり、五稜郭を舞台にした箱館戦争終結を境に新政府の追手をかわして失踪。それから10年あまり、十兵衛に刀を捨てさせる決意をさせた妻には先立たれ、経済的に困窮する日々を送っていた。そこから抜け出そうと、再び刀を手にする彼だが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2013 Warner Entertainment Japan Inc.
(C)2013 Warner Entertainment Japan Inc.

「許されざる者」巧みな翻案で伝説的傑作の再創造に挑んだ骨太な日本映画

 本作の元となる映画は、クリント・イーストウッド監督・主演の米アカデミー作品賞受賞作であり、イーストウッドの最高傑作とも評される一作。当然リメイクするにはかなり敷居が高いが、「フラガール 」「悪人」の李相日監督は、どっしりとした骨組みのオリジナル脚本を巧く翻案して伝説的傑作の再創造に挑んだ。

 とくに、同じ辺境でも、1880年ワイオミングというオリジナル版の舞台をまったく同じ西暦年である明治時代初期の蝦夷地(北海道)に持って来たのは大成功だ。イーストウッド映画に通奏低音として響きわたる「マイノリティへのやさしい眼差し」まで、アイヌというモチーフを通じて投げかけているのだ。脚本がいいと、やはり映画はおもしろく観られる。

 ただ、諸手を挙げて賛辞を送れない理由が2つある。ひとつは、佐藤浩市演じる大石一蔵が小悪党にしか見えないことだ。オリジナル版は“善”と“悪”をはっきりと分けずに、「主人公も保安官も“許されざる者”」として描いていて、リトル・ビル(ジーン・ハックマン)は暴力的な方法で町を牛耳っていた保安官だったが、目的は町の人々の平和を守るためだった。本作では残念ながら大石の「見果てぬ夢」の描写がないので、人間的な深みがなく、彼の暴力性だけが際立ってしまっているのだ。

 もうひとつは、主人公・釜田十兵衛がラストで「神話的存在」になっていないことだ。なるほど、渡辺謙はいつも通り、自分の役に高密度なエモーションを注入しているので、浪花節的なカタルシスはある。しかしエピローグにおいて、彼の旅の「動機づけ」を壊してはいまいか。神話的で崇高なはずのストーリーが、オリジナル版同様に観る者を深い余韻へと誘ってくれないのは、本当に惜しい。

 それでも笠松則通キャメラマンによる撮影は全編を通じて素晴らしく、IMAXバージョンを観てみたいと思わせるほどだ。これほど映像に力がある骨太な日本映画は滅多にあるもんじゃない。(佐藤睦雄)

映画.com(外部リンク)

2013年9月12日 更新

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