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シド・アンド・ナンシー

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4.0

伝説の光と影

シド・ヴィシャス――― パンク好きなら知らぬ者はいない伝説の人物です。その奇抜な行動、発言、生い立ち、そして突然の死。彼の存在がパンクの象徴であり、彼の死こそがパンクの死であるとも言われています。 ベースは実はまったく弾けません。ですが、それをカバーして有り余るほどのカリスマ性がありました。 伝説には憶測やでまかせが飛び交っていますが、一説によると彼は本当は田舎者の善良な青年で、「vicious=残忍」とはかけ離れた性格だったと伝えられています。ですがピストルズであることへのプレッシャーや、その生い立ち故に愛を知らず自虐的なためドラッグに溺れ、身も心もボロボロになり朽ちていきました。 ピストルズこそが自分の居場所だと考え、仲間達と本当に楽しそうに活動している生前のシド・ヴィシャスの映像などを見ると、私は切なくて悲しくて居た堪れません。 もともと彼は麻薬を使用していましたが、ヘロインにまで手を出し中毒となった原因は恋人のナンシー・スパンゲンにある、と言われています。 恋人同士であることがシドとナンシーを破滅に追い込んだなら、彼等は不幸になるため出会ったのでしょうか? それはシド本人にしか分かりません。 彼はこんな言葉を残しています。 「ナンシーが最高なのは彼女と俺が同類だからだ。俺らは皆を憎んでいた」 この映画はそんな彼等の出会いから破滅までを描いていますが、捏造した部分も多々あります。 ですがあのパンク黄金時代の熱気と狂気、時代の流れを的確に表現していることは確かです。 シドを演じるゲイリー・オールドマンは、この映画のためにわざわざシドの母親をたずね熱心に話を聴き、これ以上無理をしたら死ぬというほどの減量をして挑みました。 彼のふとした表情や立ち姿に、「あれ? シド?」と目をこすったことがあります。 ナンシーを演じるクロエ・ウェブの狂乱ぶりも見事です。 ジョニー・ロットンやマルコムを演じている役者さん方も、イメージに合っていますね。 この映画を観て「シャブ中の何が感動するの」「愚かで見ていられない」と思う人もいると思います。セックス・ピストルズを美化しすぎているという批判の声も見られます。 ですが、パンクスターを演じ続けた孤独なシド・ヴィシャスと彼が見つけたたった一人の理解者ナンシースパンゲン。 彼等の破滅していく姿の中に、美しさを見出してもらいたいと思います。孤独を抱えた者同士の傷の舐め合いだとしても、その弱さと儚さを見守って頂きたいです。

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