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死滅の谷 (1921)

DER MUDE TOD/THE WEARY DEATH/BETWEEN TWO WORLDS/DESTINY

監督
フリッツ・ラング
  • みたいムービー 5
  • みたログ 15

4.00 / 評価:4件

死神の前でいちゃついてはいけない!

  • bakeneko さん
  • 2018年5月29日 11時33分
  • 閲覧数 247
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

フリッツ・ラングの初期の傑作で、原題=“疲れ果てた死神”が示すように、“恋人を甦らせる為に死神とある約束をした娘が体験する3つの運命劇”がスタイリッシュな映像美の中に描かれてゆきます。

陰気な仕事に嫌気が差した死神が引退を決意して、寒村の家を買い住み着く。
ある夜、酒場で偶然死神と居合わせた幸せな若いカップルの周りを気にしない熱愛ぶりにイラついたのか?-死神は“リア充死ね!爆発しろ~”♪とばかり男を黄泉の世界に連れていってしまう。
意を決した彼女は薬草を飲んで半死状態になって死神家の乗り込み“どうかムコさんを返してください!”と宮崎あおい風に泣きながら嘆願する。
根負けした死神は“これから俺が仕事で訪れる3つの恋人達の死の運命のうちで、一つでも救うことが出来たら男を帰してやろう”といって彼女を、古代のバグダット、中世のベネチア、近代の中国の3つの時代の悲劇のヒロインに転生させるが、ついでに自分も処刑人等の死の執行人となって運命を遂行すべく暗躍する…という寓話劇で、

死神の部屋には日本の落語「死神」でも御馴染みの“命の蝋燭”が燃えていて、炎が消える=死を意味するのは、キリスト教文化圏でも同じなことが判ります(ロシアの民話にも命の蝋燭は出てきますから、万国共通の観念なのかもしれませんね!)。
冒頭のナレーションに、“それぞれの時代の衣装(特に中国)は博物館から借りて忠実に再現している”と表される様に凝った衣装とセットで世界観を映し出していて、中間字幕の英語も文体をアラビア風、中世イタリア風、漢字風にディフォルメしているのには驚かされます。
また、冒頭の死神が馬車に乗りこむ場面や暗闇で松明を燃やすシーンなどの映像美も素晴らしく、死神の家の巨大さもこの世のものではない感覚を想起させていますし、後の「テオレマ」や「第七の封印」の元ネタとなったシーンも登場します。

惜しむらくは、後で付けた音楽が画面と全然マッチしていないことで、冒頭の死神登場場面での“やけに爽やかな楽曲”を始めとして、チグハグな選曲が目立ちます(音を消して観賞するのが良いかもしれません)。

死神と恋人達という“エロスとタナトス”の“時空を超えて巡り遭う繰り返し”に人間の営みを俯瞰させて観せてゆく寓話劇で、馬鹿ップルが仕事で疲れたおじさんのささやかな晩酌タイムに乱入するときついお灸を据えられることは万国共通ですよ!

ねたばれ?
1、人間くさい本作の死神さんは「第七の封印」の死神さんのモデルです(眉間に皺を寄せる表情も良く似ていますよね!)
2、ええっ、長さが十分残っていても風が吹いたら命の蝋燭は消えるの!

おまけーレビュー項目にない本作と同じく、ラングの妻であったテア・フォン・ハルボウ脚本の映画の紹介を…
破産寸前にしてはのんびりしているなあ~
「大公の財政:Die Finanzen des Grossherzogs」(1924年ドイツ80分) 監督:F・W・ムルナウ 出演:マックス・シュレック、アルフレート・アーベル、マディ・クリスチャンズ、

スウエーデンの小説家:フランク・ヘラーが生み出した探偵兼泥棒のフィリップ・コリンが活躍する連作の一編:Storhertigens finanser(1915年)のムルナウによる映像化作品で、荘重で緻密な作劇が多いムルナウにしては陽気で闊達な喜活劇となっています。
破産寸前の地中海の島国アバコの大公は財政危機を救う為に、島の硫黄の採掘権を買い取ろうとする実業家を退け、ロシアのオルガ王女との結婚で国を救うことにするが、王女が書いたラブレターが盗まれてしまい、更に実業家が焚き付けたクーデターも勃発して窮地に陥る。泥棒探偵のフィリップ・コリンはカフェで偶然身分を隠したオルガ王女を匿ったことから国家転覆の陰謀から大公を救うべく立ち上がる…というお話ですが、
当の大公が育ちが良過ぎるのか、かなり能天気な性格で冒頭の国家経済危機でも子供達の水遊びを眺めていますし、クライマックスでも窮地に自分から入っていってしまいます。
他にも出てくるキャラクター達が少しずつ変なところが笑いを誘っていて、
心配性の財政大臣
とっても強い料理番の家政婦
泥棒なのに颯爽としている探偵
大公にぞっこんのオリガ王女
朴念仁で単細胞のロシア王子
強欲な実業家
クライマックスでの王女の大金提示に“え~とどっちに着こうかな?”と逡巡するその手下達…などのキャラクターで愉しませてくれます。

主人公の探偵兼泥棒のフィリップ・コリンのことを理解して観ないと途中まで戸惑うお話し展開となっています(スウエーデン製のアルセーヌ・ルパンものと思えばOK!)が、ムルナウにしては珍しい能天気な活劇で、クライマックスのロシア軍上陸場面は「戦艦ポチョムキン」のパロディですよ!

ねたばれ?
本作は、1934年にドイツでミュージカル映画としてGustaf Gründgens監督によってリメイクされています。

詳細評価

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