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ジャンヌ・ダーク

ジャンヌ・ダーク

JOAN OF ARC

100

山浦国見

3.0

気負い過ぎのイングリッド

33歳で高校生の年齢を演じるのは、ちと無理がありますが、イングリッドが切望し、舞台ロレーヌのジャンヌの劇場版リメイクと言う成り立ちを考えれば、まぁ仕方がないかな。ただ、4億6500万ドルの制作費をかけた割には、安っぽい衣装やセットが気になる。これがアカデミー賞史上初の衣装デザイン賞? また、スタジオ撮影が殆どだし、どこにそんな金が消えたのでしょうか? 既に貸した大金はどうしたのです。 と言う台詞が作中にありますが、正にこの作品の制作陣に問い詰めたいですね。 イングリッドの演技も力み過ぎというか、固いですね。カクカクコッチコチ。 カサブランカの時の自然な演技はどうしたのでしょう? ただ、イングリッドはよほどジャンヌ・ダルクが好きなのか、54年にも火刑台上のジャンヌでもジャンヌを演じています。 戦闘シーンはスタジオ撮影すべきではありませんね。一気に迫力が軽くなります。スタジオ撮影するなら、もっと工夫しないと。カメラワークとか、カット割とか、演出とか。美術さんや大小道具さんはいい仕事してます。 シナリオを舞台版の脚本家マクスウェル・アンダーソンに依頼したのですが、バーグマンが思うジャンヌとはかけ離れたキャラクターとして描かれており、満足のいくものではなかったようです。 イングリッドは人工セットの中で繰り広げられるテクニカラー作品ではなく、実際にジャンヌが生きた土地で撮影し、裁判記録に残っている実際のジャンヌが残した言葉からジャンヌという一人の少女の真の実像を伝えたいと思っていたそうですが、当時は難しかったのでしょう。 意外ですが、現在に於いても、ジャンヌ・ダルクは異端のまま。異端にして聖女なのです。 ルーアンでの異端審問を受け、1456年に復権裁判で無罪となり、1920年にようやく聖人になりました。ですが、そのあとも、ローマ教皇庁は異端性を取り消していません。カトリックはジャンヌ・ダルクの思想信条を異端としたままなのです。 考えられる理由としては、ジャンヌ・ダルクはある時期まで一部の地域のみで知られた人物であり、それをナポレオンが、フランスの救世主として大々的に紹介したために、一挙に有名になったのです。 ナポレオンは、フランスの救世主、皇帝としての正当性を持たせる為、何らかの事跡が必要でした。そこで見つけてきたのがジャンヌ・ダルクだったと言う訳。ジャンヌ・ダルクは謂わば創られたヒロインの部分が大きく、フィクションとして楽しむのが正しいのかも知れません。 ただ、それにしてもこの作品は、構成のバランスが良くありません。145分の尺の内、裁判と牢獄のシーンが100分くらい続きます。法廷サスペンスならそれで良いのですが、ジャンヌ・ダルクですよね?確かに魔女裁判にかけられ、理不尽な火刑に処されるのですが、例えば忠臣蔵を二時間で収めるのに松の廊下のシーンになるまでに90分かけるとか、討ち入りシーンが15分くらいしかない、といえばイメージしやすいかと。 ヴィクター監督、イングリッド共に認める失敗作です。

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