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アパッチ砦
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アパッチ砦

FORT APACHE

127

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5.0

ネタバレ生き続ける伝説

アパッチ砦。最高の映画の一つです。やっぱり映画って、素晴らしい……。 ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダと偉大な名優でがっちりと固め(意外にもスターが共存している希有な映画)、さまざまな名脇役を散りばめた、エンターテイメントの傑作です。 ジョン・フォード監督らしい詩情あふれる、古き良き英米文学の薫りのする、貴重な映画。ストーリー自体は好みが分かれるかもしれないが、私は大好き。 あの「リトルビッグホーンの戦い」をモデルにしており、サーズデイ中佐はカスター中佐の役割のようです。 今の私たちから見ると、サーズデイ中佐(カスター中佐)の行おうとしたことは、まことに馬鹿馬鹿しいものに思えます。ですがこういったことは、さまざまな背景を念頭に考えなければならないということを、多くの場合忘れているのです。 サーズデイ中佐は、アパッチ砦の指揮官でした。そして彼はどんな理由かはわかりませんが左遷されてきました。彼はアパッチ砦に対して軽蔑を隠そうとしませんし、強烈な階級主義者です。独裁者のようにも感じます。ですが彼はアパッチ族との話し合いの時、実際間違った判断はしていなかったと思います。これは彼の独断の戦闘というより、アメリカ政府の構想だったからです。アメリカ政府自体が、そのとき大きく揺れていたのです。和解か、支配か……。 アメリカ政府の性質自体が、侵略国家ですから、穏健派が力をつけてもそれは一瞬のことに過ぎないと思います。必ず過激派が席を多数占め、インディアンの支配を促すに相違ありません。ですからこの場合、ヨーク大尉は、ちょっと都合のいい役柄になっています。もちろんこの映画が作られた頃のアメリカでは、サーズデイ中佐は議論の的となり、理想モデルとしてヨーク大尉が選ばれます。それは必ずしも「作品の背景」が明らかになっていないからです。 サーズデイ中佐がアパッチ族に、「おまえたちは私を相手にしているのではない、合衆国政府を相手にしているのだ」と言ったとき、私はなるほどと思いました。強権を振るう独裁者という側面を持つ一方、サーズデイ中佐はこのような面も持っているのです。 ここで現実のカスター中佐に触れますと、彼はこのとき合衆国の寵児だったそうです。アメリカ国民が好む風貌(ぴかぴかの服、豊かな金髪)を持ち、ファッションが独創的でイケてた上、メディア戦略に長けていた。結構派手な人だったみたいです。彼がどういう性格だったか、今では分かりませんが、彼はとにかくリトルビッグホーンの戦いで大勢を死なせてしまいました。しかしそれをさらに、彼の妻がメディアを使って宣伝したので、一気に反インディアン派が勢力を強め、結果的にインディアンは藪をつついて蛇を出してしまった形になったのです。 この映画のラストでジョン・ウェイン(ヨーク大尉)が、サーズデイ中佐のことを美しく語っています。なんだい、あんな馬鹿な指揮官を祭り上げたりしてさ、なんて思っちゃいけませんよ。当時はカスター中佐はいまだ人気を誇っていただけでなく、リトルビッグホーンの戦いは美談として扱われていたからです。 しかしそれが本当の大切なことではありません。サーズデイ中佐は誇り高く合衆国軍の使命を守ったからです。彼は作戦が失敗したときも絶望せずにすぐに自分の使命を全うしました。ヨーク大尉はここで視聴者の味方になってしまって、視聴者と同化してしまいます。サーズデイ中佐の戦いだけが、舞台で表現されるのです。 ここでサーズデイ中佐と合衆国の使命をもう一度思い出さなくてはなりません。肝心なのはうまく戦うこともそうですが、合衆国の戦いを継続すること(たとえ亡くなっても)です。そこに犠牲になった男たちの悲しさが浮かんでくるのです。それを美談として語らなかったら、ヨーク大尉は軽蔑されてしかるべきです。 しかし伝説は生き続けます。本当にうまく戦えるヨーク大尉が指揮官についたわけですから。しかし案外こういう能力の高い人は、カスター中佐のような目立ちたがり屋の陰に入ってしまって、日の出を見なかったりするものですよね。 図々しいやつが美味しいところをかっさらっていくのは世の中の真理です。でもだからこそ私はやっぱりヨーク大尉の方が好きなのですが(結局そうなんかい!)。

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