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ジョアンナ (1968)

JOANNA

監督
マイケル・サーン
  • みたいムービー 9
  • みたログ 39

3.46 / 評価:13件

スインギング・ロンドンを体現した画期作!

  • 真木森 さん
  • 2011年5月14日 15時12分
  • 閲覧数 745
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

「誰だ、この女性? フェリーニの『サテリコン』に出てくるような感じのメイク、髪型だなあ」「ファッションが原色基調で、画面展開もポップで、ニューシネマ系の映画かなあ」10年以上前、深夜の地上波を何の気なしに眺めていたら、こんな不思議な感触の映画が流れていたのです。気になって新聞を見たら「『ジョアンナ』!!!!!」消えた天才監督マイケル・サーンによる伝説作品。慌てて録画の用意をしようとしたのですが時すでに遅し。その時にはもう“When Joanna loves me ~♪”と叙情的なメインテーマとともに彼女がロンドンの景勝を巡り歩く中盤の山場を過ぎていたのでした。悔恨を胸に、残ったシーンを食い入るように鑑賞しました。
 この突然の地上波放映の後、眼にすることが出来ないまま年月が経ちました。しかし満を持してDVD発売。このGWは隅々までがっちり鑑賞しましたよ。冷静に見れば相当にアラの見える作品です。編集は感覚的につながり、物語の前後の文脈をつかむのが大変難しく、ヘタクソですらあります。何話もある連続ドラマものを端折ってぶった切って2時間内に納めたのと同じ感触が。そもそもジョアンナ役のジュヌヴィエーヴ・ウエイトがあまり可愛くなく、やたらとアニメ声なのも勘に障り私的にはちょっと近づきたくないタイプの女性ですね。妻帯者と不倫して修羅場になっては傷つきバスの中で泣き、そのくせケロリとすぐ別の男とベッドインする。「キャス、男なんて汚いわ」なんて言っているけど「自業自得じゃん、このバカ」っていう感じ。そういう無節操なジョアンナがビルドゥングス・ロマンのように人間的成長を遂げていく物語かと思いきや、ピーターが死んですぐ友人の兄ゴードンとくっつくし、奔放さを捨てて彼への一途な愛に生きるという展開も、即時キャスとの浮気を疑われて怒られる(真っ赤なライティングのジョアンナが「ぶたないで」と語るシーンはそれ以前のシュールな「夢」とも違って摩訶不思議な演出です)。結局は彼の子を身ごもって田舎に引っ込んでいくというどうでもいい結末。要するにサーンが描いたジョアンナという女性像は行き当たりばったり衝動的に生きる「愚かなオンナ」で、どこに彼女のモデルがあったのかは知りませんが、監督が男性である自分自身のスインギング・ロンドン体験を託した都合の良い女性像であるようにしか思えず、彼のキャパの狭い想像力の産物のため重みのかけらもない薄っぺらなキャラクターになったのだと推測してしまうのです。
 でもそれはジョアンナが「魅力的」ではないということを意味してはいないし、本作がダメな作品であるということを意味するものでもありません。やっぱりポップでオシャレな映画ですよ。服や贈り物(コンパスを渡すなんて粋なセンス!)などを盗んで調達したり、既婚未婚身分立場民族を軽々と飛び越えて即メイクラブする屈託のなさ。ジョアンナを取り巻く若者たちは「既成観念」に挑戦し、しかしその一方「責任」を務め上げていく。皆それぞれに鬱屈した背景を持ちながら真摯に「自由に生きる」ことの意味を模索し、実践し、時にはそれに殉じて我が身を削っていく。ジョアンナも何も考えていない風でありながら、自分自身の中の男性に対するオブセッションと闘っている(余りにも突飛で意味不明な彼女の夢のシーンの数々はそのことを暗に示しています)。これぞ怒れる若者、スインギング・ロンドンの生き様。女性教授が語る「古典主義への反抗」としての「歪んだ真珠=バロック」と同質の価値観。サーン監督自身がその価値観の真っ直中に当事者として生き、それを等身大に表現し得たというのが本作の至高の価値なんです(『ナック』や『欲望』はあくまで外からそれを活写したものです)。サーン監督はその後映画界でのキャリアを抹殺されますが、そうでなくても多くの作品を残すことは出来なかったと思います。彼は結局はアマチュアであり、その後職人監督に転じて規格作品を量産出来なかったろうし、しなかったでしょうから。しかしこの時代に稀なる才覚を爆発させて、同時代の若者に忘れ得ぬ共鳴を与えるワン&オンリーの作品を残すことは出来ました。是非軽やかに、そして共感を持って、時には深く感じ取って、この画期作をご鑑賞ください。
〈追伸〉地上波放映の時には最後の駅のホームでの伝説的ラインダンスがぶっつり切られて「まだ終わりじゃないの、戻ってくる」とジョアンナが列車の窓から叫ぶ所で閉幕。「何だったんだろう、この映画」とその時悪印象を持った根源になりました。逆に言えばあのラインダンスに本作の魅力が結実していることの何よりの証左ですね。ただしこのシーン、「ジョアンナの門出を応援するため、彼女に関わった全ての人たちが登場する」という紹介のされ方をしますが、最も彼女に影響を与えたピーターの姿は見えません。

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