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あぶない週末 (1991)

DRIVING ME CRAZY/DUTCH

監督
ピーター・フェイマン
  • みたいムービー 10
  • みたログ 15

3.20 / 評価:5件

未だに大切に鑑賞している擦り切れたVHS

  • ハイジ さん
  • 2011年5月1日 7時05分
  • 閲覧数 429
  • 役立ち度 16
    • 総合評価
    • ★★★★★

『僕の大切な人と、そのクソガキ』というタイトルなら、こっちの映画の方が相応しいような、と思い出してしまったお気に入りの1本。
本作の子役は正にクソガキでした。『さよなら魔法使い』のレビューでも書きましたが、母親を軽蔑して嫌っている男の子です。そんな子供の心が徐々に解れて、映画が終わる頃には、親に素直な笑顔を向けられるほど成長している、という私の大好きな定番ストーリー。

本作のドイルは上流階級育ちで、汗を流さず富を肥やしている父の影響で、労働者階級を馬鹿にしています。母は普通の感覚、良識を備えた女性で、貴族のパーティには馴染めず、愛する息子からも夫と同じ様な目で見下されています。勿論、夫婦関係は終わっています。
そんな母親と付き合い始めたのが、労働者の誇りに満ちた男性ダッチ。彼が本当に素敵なんです。惚れた女の為にここまで出来るか?という中身の格好良さ。感謝祭には寄宿学校の皆が親元へ帰るのに、捻くれドイルは一人で学校に泊まり続けるつもり。そんな頑ななガキ、しかも格闘技の腕まで磨き上げている攻撃的なドイルを、初対面のダッチが学校まで迎えに行き、アトランタから母親の家シカゴまで、酷い目に遭いながらも強引に連れて来る、というロード・ムービーです。

ダッチの偉いところは、ドイルを子供扱いせず、対等に接していること。受けた痛みはきちんと返す。とりわけ、怒りが頂点に達したドイルが腹いせにしてしまったことで、それが大事に至った際、「そこまで考えなかった」と言うドイルに、本気で彼の性格を貶し、人の命に関わる場合は、子供であろうと容赦なく罵る、そこが立派だったと思います。
一番好きなシーンはダッチの一人花火。彼の人柄が全面に滲み出ています。俺が嫌いでも構わない、でも花火は楽しいだろ、と全身で訴え、誘いかけるジェスチャー。男同士で付き合えば、とことん愉快な奴だというのが見て取れ、ドイルも呆れて笑みを零してしまうんです。

そんな二人の短い旅には、人生で学ぶべき事が全て詰まっていました。
社会で生意気な口を利いていると、実際どんな仕打ちが返ってくるのか、という世間の実直な反応。
親切にされて好意を持ち、打ち解け合えたと思っている人に、あっさり騙されること。
世の中には色んな仕事があり、信用して慕っている者を平気で裏切れるプロがいること。
それでも失った代わりに得るものもあったんだと前向きに生きていく人生の機微。
話の合う大好きな女性が「離婚はお互い悪い」とドイルに呟いた助言。そしてドイルが成人の男になる兆し。

お金で何でも出来る、そんな世界を覆されたドイル。
出来なくなって初めて気付くこと、学ぶことが沢山ありました。
凍て付いた道を車ではなく自分の足で一歩一歩踏み締める厳しさ。
食べたいのに一文無しでは叶わない惨めな体験。
空腹を我が身で知ったひもじさが、誰かに小さなパンを半分分け与える優しさを生み出します。
浮浪者の世話を買って出る人、失業者の一家が夢を失わずに頑張っている姿。
中でもあの黒人家族との触れ合いは、ドイルの植え付けられた価値観をゆっくりと変え、彼の本心さえもそっと引き出し、家族や職についての考え方が軌道修正される切っ掛けになりました。そんな底辺の暮らしを目の当たりにした時、今の自分にとっての‘希望’が確かに見えてくる、その想いが輝き始める、人の温もりや愛の力に支えられたそれぞれの道程。

ドイルが「ママを憎んでなどいない」、「そんなこと言ってない」と何度も何度もベソかき顔になりそうな口調で繰り返す様は胸に沁みます。
そんなドイルを鬱陶しそうにあしらうダッチもなかなか駆け引きが巧みでした。クソガキの根性、叩き直してやる!とまでは思っていないんです。子供が自分で変わらなきゃ。
この時のドイルの気持ち、よく解るだけに切ないです。ムカつくから、というこれまでの態度や行動も頷けるし、ドイルはやっぱり心優しい男の子だったんですよね。

ずっと上げ膳据え膳で育ってきて、母に誘われても会いたくない、と断り続けてきたドイル。
ダッチと共に社会を、世間を、現実を垣間見て、自分を待ってくれている母親が心底恋しくなる、更には飛行機でひょいと飛んで来た調子のいい父親にはもう抱き付いたりしない。
ラストの笑顔も最高です。七面鳥に喜ぶ普通の子供に戻れたドイル。あの完璧なテーブル・マナーも忘れて、お料理に齧り付いて欲しいところです。

ただ、終盤の暴力がちょっと・・・なんですよね。殴るのは構わないけど、小細工はフェアじゃない、それだけがどうしても引っ掛かって、☆も一つ減らそうかと迷うくらい、我に返ってしまうダッチの行為。でももう一人のレビュアーさんが5つ☆での投稿なので、私も☆は5つにしておきます。

詳細評価

物語
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