精神分析の映画を分析しよう、という映画?
- 百兵映 さん
- 2016年8月17日 16時04分
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2本のストーリーラインで構成されている。1本は精神病院のトップ人事に関する生臭い話。もう1本は、記憶喪失患者と担当女医の関わり。話の大半は後者、患者と女医の関係で流される。観客は、女医の目線で、記憶喪失者の記憶回復治療の腕前に魅入らせられる。
精神分析、夢の分析、幼少期のトラウマ分析という領域で、科学的アプローチが古典的に展開される。同じような場面設定は他にも何本かの映画で見ることができる。いずれの場合にも、本作と同じように患者vs医師の関係が必ずしも科学的でなくなるところが共通している。
スリラー映画としての本筋、犯人探しは、ヒッチコックお得意の意外な方向にどんでん返しされる。よく慣れていない私などは一度見終ったあと直ぐに頭からリプレイする。それで初めて事件の真相(カラクリor詳細)に納得が行く始末だ。最初から結末の伏線が散らばしてあった。
2回目を見ていて、こちらも錯覚を起こす場面があった。ピストルが火を噴く場面で、白黒映画なのに赤い色が見えたのだ。確かに赤く光った、と思ってその箇所を何回か往復してみた。(デジタルディスクだからそういうことができる。)やっと捕まえた。画面の全体が「赤」だった。なんだ、こういうトリックが仕込まれていたのだ。
有名な邦画『天国と地獄』も、画面のカラートリックといい犯罪者の異常心理といい、人事絡みの犯行(と思わせる)など、これにヒントを得ているんじゃないかな。もっとも、映画も小説も、真似事は珍しいことではないけど。いよいよの時はオマージュと言えばいい。
今では「犯罪心理学」という領域が確立されていて、犯罪の分析・検証には大いに参考にされているようだ。それはそれで結構なことだが、だからといって、生噛りの素人が「夢」や「幼少期」を安易に「分析」することには恐ろしいものを感じる。では専門家だったらいいかというと、それはそれで厭らしいものを感じる。医師も患者との恋に落ちるといった非科学的な可能性、あるいは科学の危うさの可能性を残して(認めて)おいた方が良くないかなと思うが、如何。
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