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愛すれど心さびしく

愛すれど心さびしく

THE HEART IS A LONELY HUNTER

124

stanleyk2001

4.0

彼の声を聞く人はいなかった

『愛すれど心さびしく』(The Heart Is a Lonely Hunter)1968 原作者はカーソン・マッカラーズ(本名Lula Carson Smith)彼女が23歳で発表した最初の小説「心は孤独な狩人」を映画化。 原作は発表当時の1930から40年代だが映画は当時の現代(1960年代)の設定だ。 下宿屋の娘ミック(マーガレット)は自分自身を重ねたキャラクターだろうか? 主な登場人物は ・聾唖の青年シンガー(アラン・アーキン) ・シンガーの友人アントナパウロス(知的障害を持っている) ・下宿屋の娘ミック ・アフリカ系の医師コープランド ・コープランドの娘ポーシャ ・ポーシャの恋人ウイリー ・流れ者ブラント シンガーの友人アントナパウロスは身体は大人だが3歳児程度の知能しかない。叔父の店で働いていたが面倒を見切れないと遠く離れた精神病院に入院させられる。親友シンガーはアントナパウロスが退院した時のために病院の近くの街ジェファーソンに引っ越す。ミック以下の登場人物は全てジェファーソンでシンガーが出会った人達だ。 彼等は唇が読めるシンガーと筆談の助けも借りて会話をする。その会話は次第にシンガーに対して心の内をさらけ出す様なものになっていく。 シンガーを中心にしたグランドホテル形式の物語とも言える。いくつかの家庭に起きる事件を描いていく。そしてその中には酷い人種差別も。 人々の心の内を聞くシンガー。しかしシンガーの心の内を聞いてくれる人はいない。 そして親友を喪った時、シンガーは、、 「シンガー」はユダヤ系の名前だ。シンガーが聾唖なのはユダヤ人差別の比喩というのは深読みかもしれない。聞こえないから何を言っても良い。居ても居ない様な扱い。口答えしない都合の良い聞き手。 グレアム・グリーンはマッカラーズを「ウィリアム・フォークナーに匹敵する作家だ。D•H・ロレンスよりずっと良い。マッカラーズにはメッセージが無いからだ」と褒めてるのか貶しているのか分からない事を言ってるそうだ。 映画もドラマチックな盛り上がりも無く淡々と挿話が積み重ねられていく。人はそれぞれ分かち合えない孤独を抱えているという様に。 アラン・アーキンの表情豊かな名演が印象的。

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